セロトニン働き
肥満解消も促進

あなたのお子さんは、テレビを長時間見たり、テレビゲームに没頭し過ぎたりしていませんか。テレビなどにかける時間が長いほど子供が肥満になりやすく、また、感情をうまくコントロールできないことも起こりやすいという指摘が、専門家の間から出ている。

食べ過ぎや運動不足、ストレスが多い生活を長年続けていると起こるのが、糖尿病。中年以降の大人がかかる病気と思いがちだが、「最近は、子供の糖尿病が目立って増えている」と駿河台日本大学病院小児科の浦上達彦講師は指摘する。

「糖尿病と診断される子供の85%は肥満児」(浦上講師)。つまり、大人と同様に、肥満が子供の糖尿病の大きな原因になっている。

視聴時間と相関
子供の肥満を引き起こす原因の1つとして注目されているのが、「テレビやビデオ、テレビゲームを長時間見たりやったりしていること」(浦上講師)。子供が運動不足になるだけでなく、スナック菓子や甘いジュースを"ながら食い"しがちで、カロリーオーバーになりやすいからだ。

実際、肥満度が高い子供ほど、テレビやテレビゲームにかける時間が長いという調査結果がある。

肥満がより深刻な米国では、子供がテレビやテレビゲームにかける時間を減らすと、肥満化傾向にブレーキがかかるという研究が行われている。米国小児科学会ではこうした研究を受けて2003年に、子供がテレビなどにかける時間を1日2時間以内に制限するように勧める報告書を出している。

子供の肥満対策は、大人より容易だといわれる。身長が伸びるため、体のエネルギー消費量が自然と多くなるので、「極端に太っていない限り、食事を制限する必要なない」(浦上講師)という。

「キレる」対策にも
浦上講師がアドバイスする子供の肥満解消策は、@テレビやテレビゲームにかける時間を減らす。特に、食事中はテレビを消すことを習慣にするAスナック菓子やファストフード、甘いジュースなどの"ながら食い"を減らすB野菜や果物、穀類などで食物繊維を積極的にとるC子供の好きなスポーツやダンス、散歩、家の手伝いなどをさせて体をこまめに動かすようにする。

このうち、子供に積極的に運動させることは、「キレる子供」対策にも有効だとして、注目されている。

東邦大学医学部生理学講座の有田秀穂教授は、「すぐにキレる、姿勢が悪くてすぐにしゃがむ、朝起きられない、ちょっとした痛みで大騒ぎするといった子供が増えているが、これらは脳内でセロトニンの活動が弱っているためと考えている」と話す。

セロトニンには、心を安定させる働きがある。セロトニンがしっかり働くと、朝の目覚めがよく、背筋がしゃんと伸び、感情をうまくコントロールできるという。

ところが、「息を詰めてテレビゲームを長時間する、かまなくて済むから軟らかい食事といった快適な生活が、子供のセロトニンの活動を弱らせている」と有田教授。

呼吸する、食べ物をかむ、歩行するといった動作は、人間が持っている本能的な活動で、こうした規則的な動作が減っているという。

規則的な動作を「リズム運動」と呼んでいるが、「昔の子供がよくやっていた"はないちもんめ"や、"まりつき"などの遊びも、リズム運動。セロトニンはこうしたリズム運動で活性化する」(有田教授)。

太鼓をたたく、水泳、自転車をこぐ、縄跳び、歌を歌うといったことも、リズム運動だという。有田教授はこうしたリズム運動を3カ月ほど続ければ、朝の目覚めがよくなるなど、子供が変わってくる」という。

太陽光でも活性化
また、太陽の光、特に朝の日の光を浴びると、セロトニンの活動がより活発になるという。このため、早起きの習慣も大切だという。

ただし、「運動のし過ぎはかえって逆効果。疲れるとセロトニンの活動が抑制される。運動を終わった後に、楽しかった、またやりたいと感じることが大切」と有田教授は指摘する。

早起きの習慣やリズム運動は、大人の健康維持にも欠かせない。子供と一緒に取り組んでみてはいかがだろう。
(『日経ヘルス』編集部

テレビの見過ぎによる子供への悪影響を防ぐために

@テレビやテレビゲームは1日2時間までに
A食事中はテレビを消す
B水泳、縄跳び、自転車などのリズム運動を積極的に
C早起きの習慣をつける
2004.5.29 日本経済新聞