カルシウム不足
補うなら「硬水」

ミネラルウォーターを楽しむ人が増えている。輸入品も増加、専門バーも登場し、30代前後の女性を中心に人気だ。ミネラルの含有量には差があり、味や効果が違うという。種類の特徴や飲み方のポイントを紹介しよう。

東京・渋谷の恵比寿ガーデンプレイス。地下一階にあるウォーターバー「R gath(アールギャズ)」の棚やカウンターには、カラフルなボトルが並ぶ。日本をはじめ世界各地のミネラルウオーター約30種類を楽しめる。

「仕事の終わる夕方過ぎには、20−40代の女性のほか、男性もたくさん来られます」と話すのは柳下善弘店長。千葉県など近県からまとめ買いに来る顧客も多い。

一般に日本や米国のミネラルウオーターは、天然のミネラル分が溶け込んだ地下水で特定の源泉から取水後にろ過・沈殿・加熱殺菌した水を指す。農林水産省のガイドラインでは「ナチュラルミネラルウオーター」と呼んでいる。

消化器系疾患にも
欧州では消化器系疾患やリウマチなどに効くとして、古くから様々なブランドが愛飲されてきた。欧州産はすべて、殺菌もろ過もしない天然の状態のまま容器に詰めたもの。源泉の管理や周辺環境の保護が徹底しており原水が病原性微生物や有害な雑菌に汚染されていない。料理とともに楽しむスタイルのバーやレストランも増えている。

国内でもここ数年、需要が10%前後伸びている。スーパーマーケットやデパートなどでも多種取りそろえる。天然志向に加え、しゃれたボトルデザインが、「気軽にできるぜいたく」(柳下店長)として人気を呼んでいる。

これだけ多いと選ぶのが大変だが、柳下店長は商品選びのコツとしてまず@硬度、次にA発泡性かどうか、そしてBボトルのデザイン――に注目するようアドバイスする。
硬度とは、カルシウムやマグネシウムなどミネラル成分の含有量の指標。1リットル当たり178ミリグラム未満の水を軟水、同357ミリグラム以上の水を硬水と呼ぶ。

日本は軟水が多く、日本人にはこちらが飲みやすい。硬水は飲みにくいが、セ氏10-15度程度に冷やすと飲みやすくなる。カルシウムが適度に含まれているとのど越しがよいものの、多すぎると舌に重く感じられるようになる。マグネシウムが多いと苦みを感じるようになる。

炭酸ガスを含む発泡性のものは、硬度が高くても飲みやすい。いずれにしても好みは千差万別。「いろいろ試すのがよい」(柳下店長)

含有ミネラルには様々な効果がある。カルシウムは骨や歯を強くし、気分がイライラするのを解消するのに効くといわれる。マグネシウムはカルシウムの働きを助け、体内の酵素の働きを促進する効果も。カリウムはカルシウムと一緒に摂取すると、血圧を下げる役割を果たすという。

「軟水の日本ではミネラルが不足しがち。カルシウム不足が気になる人は硬水を飲むのがよい」と鹿児島大学の藤井信教授は指摘する。

夏の水分補給には、糖分を摂取しすぎる恐れがあるスポーツドリンクよりよいという。「スポーツドリンクは運動後にミネラルを補うのに向くが、通勤や営業の外回りで汗をかいたときなどはミネラルウオーターがよい」と摂南大学の中室克彦教授は話している。

多種扱う店で相談

好みに合った製品を探すには、品ぞろえが豊富な店で相談するのが一番。約40種類の製品を扱っているのは東京・新宿の「aquaporta(アクアポータ)」。コンビニのエーエム・ピーエム・ジャパン(東京・千代田)が昨年11月に開設した。

大阪市内にある専門店「アックス」は約140種類を扱う。インターネットでも注文を受け付けており、自宅にいながら様々な銘柄を飲み比べられる。名古屋市内でダイエット食品などを扱う「ミニマアーリング」では、フランスで「公益の水」と呼ばれて人気の「コントレックス」など硬度の高い商品をそろえる。

日本ミネラルウオーター協会の花原卓爾専務理事によると、「ミネラルウオーターは生鮮品」。栓を開けたらすぐに飲むか冷蔵庫に保存し、殺菌処理してある製品も同様に扱うことを勧めている。

国内で手に入る主なミネラルウオーターと特徴

名称
原産国 
硬度
特徴
南アルプスの天然水 日本
約30
国産、輸入を含めた日本のトップシェア
ボルヴィック
60
輸入品でトップ。  日本の水に近い
ティナント
122
英国でガラス協会のデザイン大賞受賞
エビアン
291
カルシウムに対しマグネシウムが少ない
ペリエ
381
天然の発砲水。ミネラル分も多い
ウリベート
624
サッカーイタリア代表のオフィシャル
スイスウオーター スイス
1063
カルシウムが多い超硬水。バランスよい

硬度の単位は1リットル当たりミリグラム。
2004.7.10 日本経済新聞