疲労回復早く、腸の健康保つ、低カロリー
食べ方も工夫して

 

昔から親しまれてきたハチミツが健康志向の高まりで、ちょっとしたブームになっている。
疲労回復効果や整腸作用などが脚光を浴びているほか、砂糖より低カロリーな点が体形に気を使う女性に人気だ。食べ方の種類も増えている。ハチミツパワーの秘密を探った。

東京都杉並区。ハチミツ専門店のラベイユ荻窪店には、お昼近くになると近所に住む主婦らが多数訪れる。店舗には、アカシア、ひまわりなどの花から取ったミツをはじめ、数多くの製品が並ぶ。原産国もフランスやイタリア、ハンガリーなど、多岐にわたる。その種類は実に90種類。

ラベイユは東京、関西に計6テンポある。2001年に荻窪店を開いて以来、店舗数を増やしてきた。同店の特徴は「量り売り」と扱っている種類の多さ。買う前に「テイスティング」できるのも人気だ。運営する田頭養蜂(ようほう)場の広報担当、矢島朋子さんは「女性客が多い。自然志向や健康志向の高まりで、関心をよんでいるのではないか」と話す。

ハチミツには草木の花のミツと、虫が吸った樹液を集めた甘露ミツがある。花の種類などで味が異なり、同じ花でもミツを取る時期や場所によっても違ってくる。成分は果糖やぶどう糖といった糖分が7−8割を占める。果糖やぶどう糖はエネルギー源になりやすく、疲労の回復も早い。残りの2割は水分だが、ビタミンB群、ビタミンCなどの栄養素も豊富。カルシウム、カリウムなどのミネラルも含まれている。

善玉菌増やす効果

「特に最近、注目を集めているのがグルコン酸」と言うのは、ハチミツに詳しい茨城大学農学部の米倉政実教授。グルコン酸はビフィズス菌など、いわゆる善玉菌を増やす機能をもつ。善玉菌は腸の健康を保つのに有効とされる。米倉さんは「ハチミツには腸内環境を整える働きがあり、日常的に摂取すれば便通などが良くなる」と指摘する。

もう1つの特徴はカロリーが低いこと。同じ甘さを出すのに砂糖の6、7割の量で済み、カロリーも約2、3割低い。砂糖より値が張るものも多いが、カロリーを気にする女性の支持は強い。

こうした効用を十分に引き出すには、食べ方のバリエーションを増やした方がいい。トーストに塗ったり、ヨーグルトにかけて食べたりするのは一般的だが、それ以外にも普段の料理に応用できるという。その調理法を、料理研究家で管理栄養士の村上祥子さんに教えてもらった。

肉を軟らかくする
「ハチミツを入れて料理をつくると、軟らかく出来上がる」(村上さん)ところから、焼き豚や煮物に入れるのが効果的という。

代表的な焼き豚料理の「ハチミツチャーシュー」=レシピ参照は、豚肉を焼きながら表面にハチミツを何度も塗って染みこませるので、肉が非常に柔らかくてジューシーだ。

ハチミツ、レモン汁、しょうゆ、塩、サラダ油、コショウでつくったドレッシングは、どんなサラダにも合う万能調味料。中でも「かぶと万能ネギ、塩昆布のサラダ」=レシピ参照との取り合わせは絶妙だ。

ただ、天然のスイーツだからこそ気をつけることもある。茨城大学の米倉教授は「ボツリヌス菌が含まれている場合もあるので、抵抗力の弱い1歳未満の子どもには食べさせないほうがいい。また、ハチミツのなかに混じった花粉でアレルギーになる人もいる。購入するときに、店の人に相談するのがいいだろう」と話す。

かぶと万能ネギ、塩昆布のサラダ(材料は4人分)
・かぶ200グラム
・万能ネギ50グラム
・無頭エビ8尾
・小麦粉少々
・揚げ油適量
・塩昆布(細切りのもの)大さじ1
〈ハチミツドレッシング〉
・ハチミツ大さじ1
・レモンの絞り汁大さじ1
・しょうゆ小さじ1
・塩小さじ4分の1
・サラダ油大さじ1
・コショウ少々
つくりかた
@エビは、背に切り込みを入れて背ワタを除き、小麦粉をまぶす。油でさっと揚げる
Aカブは、皮つきで幅5ミリの輪切り。重ねて5ミリの細切りにする
B万能ネギは、カブの長さにそろえる
Cハチミツドレッシングを材料のボールに入れ@−Bを和える
ハチミツチャーシュー(材料は4人分)
・豚肩ロース肉のかたまり500グラム
・ハチミツ 大さじ2
・塩 小さじ2
〈調味料〉
・オイスターソース 大さじ1
・しょうゆ 小さじ1
・紹興酒(または酒) 大さじ1
・みそ 大さじ1
・ハチミツ 大さじ2
・五香粉 小さじ2分の1
・レタスやサラダ菜 適量
つくりかた
@豚肉は4つに切り分けハチミツと塩を振りかけてよくすりこむ
A調味料を豚肉にかけてぬりつけ、30分ほどおいて裏返し、計1時間おく
B180度に温めたオーブンの中段にAを入れて40分焼く。途中で3回ほど、調味料をぬる
C焼き豚に竹ぐしを刺してみて、澄んだ肉汁が出れば取り出す
D好みの厚さに切り分けて、レタスを添えて盛りつける
2004.9.11 日本経済新聞