湯ざめなし 疲れも取れる  夏のおふろやシャワーは実に気持ちいい。でも湯上がりは汗がなかなか引かないので、扇風機やエアコンに当たり過ぎて体が冷えてしまう。そんな方にお薦めしたいのが、水とお湯を交互に浴びる「温冷浴(おんれいよく)」。湯上がりに汗でべとつかず、湯ざめしにくいだけでなく、体の疲れも取れる。暑いこの夏、ぜひ一度お試しを。

血行を促進する、リラックスした気分になるなど、おふろにはいろいろな効用がある。暑いふろに入ると、表皮のすぐ下を走る毛細血管が太く広がる。体温上昇を防ごうと、肌の血流量 を増やして体熱を逃がそうとするためだ。逆に、冷たい水ぶろに入ると毛細血管は細くなり、体熱が逃げるのを防ぐ。 水シャワーを交互に  湯と水を交互に浴びる温冷浴は、そのたびに毛細血管が伸縮し、ちょうどポンプのように血液を先に押し出す。その結果 、全身の血行が高まり、疲労回復が早まる。肩凝りや冷え性、むくみにも効果 があるとされる。

Jリーグ清水エスパルスのクラブハウスには2つの浴槽がある。1つはお湯の入った普通 のおふろ、もう1つは水ぶろ。練習やゲームを終えた選手は両方に交互に入って疲れをいやす。

温冷浴を自宅でやる場合、浴槽は1つしかないので、それに湯を張り、水ぶろの代わりにシャワーで水を浴びるとよい。やり方は、1分ごとに温浴と水シャワーを繰り返すのが基本。水からスタートし、水4回、湯3回ほど行って最後は水で終わる。適当なところで中断して髪や体を洗う。

水シャワーで終わるので、浴室から出た直後は体表面の温度が下がり、毛穴が閉じている。汗は出にくく、実にさわやか。一方で、温浴で温まった体熱は逃げにくく、20分もたつと今度は手足がポカポカと温まって、湯ざめしにくい。  ただ、初めての人は、水が冷たすぎると感じることがある。水の温度を少し上げて行うか、手先や足先だけ温冷浴をするといった方法で、徐々に体を慣らしていこう。水道水がとくに冷たい冬季も、温度を上げるか、手先・足先にとどめる工夫をしたい。

血圧高い人は避けて
温冷浴の医学的効果を研究している浜松医科大学の甲田勝康医師は、温冷浴によって誘発されるある種のホルモンが、疲労感を和らげると考えている。

「アドレナリンやコルチゾールといった抗ストレスホルモンが、温度差による刺激で分泌されるのだろう。これらはストレスへの抵抗力を高め、気分を高揚させる働きがある」(甲田医師)。甲田医師らが学生を対象に調べたところ、温冷浴の前後で疲労度が大幅に減少した。

期待できる効果はほかにもある。まず、肌がすべすべして、張りが出てくる。これは肌の血行が改善されるため。毛穴を引き締める効果 も期待できる。コルチゾールにはアトピー性皮膚炎などのアレルギー反応を抑える働きもあるという。  また、水と湯の交互入浴によって自立神経が刺激され、体の日周リズムが強化される。このため、朝の目覚めが良く、夜は逆にぐっすり眠れるという。

注意したいのは、血圧が高い人や内臓の持病がある人。すでに血圧が高めの人は血管への負担が増えるので、温冷浴はやらないほうがいい。心臓や肝臓に持病がある人、熱がある人や薬を飲んでいる人なども、温冷浴の刺激が症状を悪化させる恐れがある。酒を飲んだ時も避けたい。無理は禁物だ。 (『日経ヘルス』編集部)

(2000.8.12日本経済新聞)