凝りほぐし気分一新

肩こり、腰痛、目の疲れ……。長時間のデスクワークをしているビジネスパーソンで、これらの症状と無縁の人は少ないだろう。仕事中に凝りを軽減するには、どうすればよいのか。

「腕を胸の前で交差させ、息を吐いて」――。東京・銀座の日産自動車。グローバル広報・IR本部でヨガのポーズを見せるのは、デンマーク人社員のミア・ニールセンさん(38)だ。

肩こりなどに悩む同僚からアドバイスを求められ、机の周辺や更衣室でポーズを実践してみせる。社内のヨガ人口はじわじわと増え、プライベートでヨガ教室に通う社員も出てきた。

1年ほど前に日産に転職して驚いたのは、「皆がパソコンに向き合い深夜まで働いていること」。長く勤めた米国企業では、昼休みを利用したジョギングやスポーツジム通いが当たり前だった。運動して気分をリフレッシュした後は仕事に集中する。そんなメリハリが、仕事の能率を上げるカギと信じているという。

とはいっても、日本のオフィスでは簡単な運動が中心。ニールセンさんがイスに座ったままでよくやるのが、腕を曲げて左右に交差させて手のひら同士を組み合わせるポーズ。このポーズを取りながら5回、息を吸って吐く。同部の松浦生枝さん(24)は「少しやっただけで体が温かくなり、気分転換になる」という。

大事なのは、短時間でもいいから気付いた時に体をほぐすこと。「1分間簡単健康法88」の監修を手掛け、ビジネスパーソンへの指導経験もある元インストラクター、木戸泰子さんは「体調が仕事の士気も左右する」と強調する。

デスクワークで疲れやすいのは、主に目、首、肩や腰。首が凝るから肩が凝るし、肩が凝るから首が凝るといった悪循環も。夜まで凝りを放置していたら、ストレスは倍増。凝りを感じる場所をその都度ほぐすのがコツだという。

それでもオフィスではストレッチに気が向かない、という人へのアドバイスがある。コナミスポーツ・法人会員事業部のアシスタントマネージャー、津坂佳代さんは、背中とイスの間にストレッチ用ゴム製ボールや背もたれなどを置くことを勧める。タオルを丸めて挟み込むのでもいい。力まないでも正しい姿勢と保つと、気持ちに張りが出て仕事にも集中しやすくなる。

また、「時間を有効活用したい人には通勤途中のストレッチが理想」。つり革につかまった時、もう一方の手にバッグを持ち、その重みで肩と腕の筋を伸ばす。つり革を持つ手を反対にしバッグも逆の手に持ち替えると、左右両方の体の筋を伸ばすことができる。

手書きで書類を作成していた時代は消しゴムで消すなどして腕を動かすことも多く、自然と体が動いていた。パソコン画面が相手だと、姿勢が変わらず本人も気付かないうちに体が固くなり、「肩凝りや腰痛がひどい人が増えた」。

木戸さんのアイデアをもとにオフィスでできる簡単なストレッチ法を図にまとめてみた。慣れたら、体が自然と動くようになるかもしれない。手軽なストレッチで、仕事の能率が上がることは間違いない。


首から肩の疲れ
@両手を後ろで左右に引っ張りあう
A首を曲げる時は手を頭に回し、重みをつける
目の疲れ
指に力を入れて、まぶたの上やこめがみを押さえる
腰の疲れ
座ったまま上体を後ろにそらしたり、左右にねじったりする
肩の疲れ
右腕を左肩に引き寄せるように伸ばし、ひじの部分を左手で押す。反対も同様に


 

2005.2.19 日本経済新聞