重要な靴・靴下選び
始業前・夕方に運動


外回りの営業マンや立ちっぱなしの販売員だけでなく、机仕事中心のビジネスパーソンも、足の疲れやむくみに悩んでいるのでは。足が疲れると集中力が欠け、仕事の能率も落ちるといわれる。職場で可能な足の疲れ解消法を会得して、仕事に生かそう。

東京学芸大学教授の山田昌弘さんの研究室の机の下には、水色のフットバス(足浴器)が置いてある。昨年夏に購入以来、週1、2回は使用する。

パラサイト・シングルという言葉の生みの親である山田さんは、大学の講義を除けば、研究室での論文執筆の時間が長い。「腰が痛く足もだるく、全身に倦怠(けんたい)感があった」

しかし、フットバスを使い出してから、そんな症状も軽減した。夜や早朝など、来客のない時間を見計らって、ぬるま湯をフットバスに注ぎ入れ、約15分間、足を浸す。振動でマッサージする機能も活用。「リラックスするし、疲れがとれる」。次の仕事に向かう気力もわいてくるという。

フットバスや電動マッサージ器など、職場でも使える足用健康器具は種類も豊富になってきた。職場の事情が許すなら、机の下に忍ばせるのも1つの手だ。

「足は体の土台。だるい、むくむなどの問題があると、仕事にも悪影響が出る」。渡辺整形外科医院(千葉県船橋市)の院長で、足と靴の関係に詳しい内田俊彦さんはこう話す。「集中力や思考力が低下するし、能率も落ちる」という。

内田さんによると、トラブルの大きな原因の1つが、自分の足のサイズより大きめの靴をはいていることだ。足と靴の一体感が出ないため、足を痛め疲労の原因になる。きつめと感じるくらい、ぴったりした靴がよいという。

ただ、日本人の足幅は以外に細く、サイズが合わない人も多い。ちょうどよいサイズがない場合、内田さんはヒモ靴を薦める。ヒモをきっちり結ぶことで、すき間が解消し、足と靴の一体感が生まれるからだ。

パンプスを履く女性の場合、「足と靴が離れないデザインを選んでほしい」と内田さん。甲の部分にストラップがついているタイプだと一体感が増すという。

クラレがビジネスマン500人を対象にした調査では、会社に着いてから、靴を職場用に履き替える人は4人に1人。足の健康を考えれば、来客のない場合はサンダルへの履き替えも検討したい。職場の事情で難しいなら、こまめに靴を脱いで足指を解放すると、足全体がだいぶ楽になる。

一方、銀座三越(東京)の紳士靴下売り場では、むくみ軽減をうたったハイソックスが人気だ。福助が今年2月に発売した「シェーパーズ・フォー・メン」は2千円代前半と通常より高めだが、ふくらはぎを柔らかくくるぶしをきつく編むことで「血行がよくなり、むくみにくくなる」(福助)。

また、足指を解放できる5本指靴下も、昨年は4種類だったが、今年から品ぞろえを増やし、現在は11種類に。「疲れにくい靴下を探すビジネスマンが選ぶことが多い」とショップマスターの秀馬吉海さん。

足に優しい靴や靴下で「武装」しても、疲れたりむくんだりしたらどうするか。「5分程度でも、仕事の合間に自分でマッサージするだけで、だいぶ疲れはとれる」と話すのは、台湾式足裏マッサージ店を展開するドクターフット(東京)の副院長、与那嶺茂人さん。

与那嶺さんお勧めの5分間マッサージは、ふくらはぎとくるぶし、足裏の3カ所を、手足の指を使ってほぐす方法。ポイントは片足の指を活用すること。「電話や書類書きなで仕事中でも、両手を使う必要がなく周囲にも気付かれない」

机の下でもこっそりと、足指をグーの形に縮め、パーのようにパッと開く運動をするのも血行をよくするという。「イスに座ったまま、つま先立ちを繰り返す。そんな簡単な運動でも、うっ血状態は解消される」

マッサージと運動をする時間は、始業時と夕方の1日2回を目安にするとよい。特に大事なのが始業時。
「仕事を始める前にひとほぐしすれば、疲れやむくみ予防になる」ためだ。


【職場で5分でできる足の疲れ解消法】

@片方の靴をぬぎ、足指を使ってもう片方のふくらはぎを上下にさする。疲れている部分は、親指を使い強めに。終わったら、反対のふくらはぎを同様に。

A足の付け根を手の親指で押す。グリグリとした感触のあるリンパ節を中心に

Bくるぶしの周囲を手でもむ。足首裏側のアキレスけんの周辺も念入りに

C靴を脱ぎ、足の甲を手でほぐす。親指と人さし指の間に、手の親指を割り込ませ、甲から指の先端にむかってさする

D親指の先端を手の指でもみほぐす

E土踏まずを手でもみほぐす。ただし、食後30分は避ける。片足をひざに乗せるともみやすい

F足指を動かす。グーパーの動作のように、指をちぢめパッと放す

Gイスに座ったまま、つま先立ちとかかと立ちを交互に繰り返す



2005.5.14 日本経済新聞