秋は1年中で一番食べ物がおいしく感じられる季節。ところが、食べ物の味がわからなくなる味覚異常の人が増えている。男性は50代、女性は40代がもっとも多く、他の成人病の年齢カーブとよく似ているので“隠れた成人病”といわれる。最近は「味覚外来」という専門の科もできるほどだ。

人間の体には、ごくわずかだが、2グラムの亜鉛がある。これが食べ物の酵素の働きを促進させ、味覚に大変重要な作用を及ぼす。しかし、高血圧の薬や抗がん剤、かぜ薬などを服用していると、薬物によって亜鉛の働きが抑えられてしまう。

だから、カキ、サザエといった貝類、小魚やレバー、ゴマなど亜鉛の多い食品をとることが大切。味覚消失は短期間ならほとんど治せるが、2年以上たつと治療も難しくなるという。味覚障害も、早期発見、早期治療が大事ということか。

(2000.9.23日本経済新聞)