美容整形などの美容医療に関する相談が国民生活センターなどに多数寄せられている。「きれい」「美しく」といったうたい文句は魅力的だが、契約は高額に上ることが多い。費用やリスクなどの細部にわたって説明を聞き、納得してから契約することが大切だ。相談辞令からトラブルを回避するための心得をまとめた。
国民生活センターと全国の消費生活センターを結ぶ「全国消費生活情報ネットワーク・システム(PIO−NET)」に寄せられた美容医療に関する相談を分析すると、内容は脱毛、レーザー、二重まぶた、脂肪吸引、豊胸、ワキガ、シミやシワの除去、ピーリングなどに関するものだ。2003年度には856件と、1997年度の357件の倍以上となり、04年度以降も多数に上っている。
美容医療では保険診療の医療とは異なり、消費者が費用を全額負担する自由診療がほとんど。相談の大半が自由診療のためか、相談を通じて契約金額が分ったケースの9割近くは10万円以上で、平均61万円と高額だった。また、相談は20代と30代を中心に、幅広い年齢層の男女から寄せられている。
具体例をいくつか挙げる。
▼雑誌広告を見て電話で尋ねると二重まぶた手術は8万円からと言われた。実際に出かけて聞くと、効果があるのは45万円と、5倍以上の金額だった。
▼チラシで100%完治をうたう美容整形で、ワキガの手術を受けた。だが、まだにおいが残り、傷跡もある。
▼脂肪吸引を受ける契約をしたが、料金が高額であるうえ、手術も不安なのでキャンセルを申し出たところ、高額のキャンセル料を請求されている。
▼「跡は目立たない、有名な先生が手術する。料金も割り引く」といわれ、まぶたの脂肪吸引を受けたが、跡が汚く、頭痛もある。
相談では広告をきっかけとして医療機関へ出かけたケースが多い。美容医療の広告の内容を調べると「低料金」「無痛」「傷が残らない」など、消費者を引きつけるうたい文句があふれているが、実際の料金や施術結果は異なるという趣旨の相談が寄せられている。
また相談によると、医師や医療機関からキャンセル料金を含めた費用の説明がない、あるいは説明不足が問題となるケースが見られる。冷静に考えられない状況下で考える時間を与えず契約するケースや、中途解約を拒否するケースなどに関するトラブルがある。「当日から化粧ができる」「リスクはない」など施術・手術に関して医師から受けた説明と術後の状態が違う、期待した内容と結果が異なる、やけどなどの身体被害や副作用があったなどを問題にする品質・安全面の相談も見られる。
美容医療は消費者と医師・医療機関(事業者)との間の医療サービス契約なので、消費者契約に関する消費者保護の規定の適用対象となる。重要事項について事実と違うことを告げられ誤認した場合や、退去を妨害され困惑して契約した場合などは消費者契約法では取り消しができるとしている。
ただ「医療行為」にはクーリングオフは摘要されない。
美容医療は消費者が受けるかどうかを含めて、どの医療機関で、どの医師から受けるかなど、自ら選択する医療である。高額の費用がかかる場合が多い医療でもあり、雑誌の広告などのうたい文句に頼ることなく、情報収集することが大切だ。日本美容医療協会(http://www.jaam.or.jp/)などが美容医療に関する情報を提供している。
一般に急いで契約する緊急性は乏しいので、契約をするかどうかを決めるまでに契約当事者として費用総額、施術の限界、リスクや副作用、治療期間などの説明を十分受け冷静に判断することが必要だ。費用については相談段階から施術後の治療まで総額を確かめ、キャンセル料金についても詰めておこう。「すぐに手術を」「すぐに契約を」と言われても、例えば家にいったん持ち帰って検討し、納得して契約することが大切だ。
トラブルが発生した場合は、医師・医療機関とのやり取りなどの客観的な事実が争点になる。消費者は医療機関とのやり取りに関してメモをとり、資料は整理して保存しておこう。消費生活センターまたは弁護士などに相談するほか、医師の説明がよく分からない場合などは自治体の医療安全相談窓口でアドバイスを受ける方法もある。
(国民生活センター相談調査部調査室主任研究員 渡辺 多加子)
▽相談・カウンセリングの段階から費用がかかるか |
▽保険適用で受けられる施術かどうか |
▽契約・解約条件の説明、ルールの明示 |
▽施術・手術費用について、治るまでの費用総額の詳細 |
▽担当医や専門の麻酔医などの医療体制 |
▽担当医の担当する範囲 |
▽自由診療での費用の金額や支払い方法、支払時期 |
▽担当医から自分が希望している施術・手術の効果や限界や個人差など |
▽リスクの説明、副作用 |
▽術前の検査や術後のケア |
▽治療が必要な期間及び普通の生活に戻れるまでの期間? |
▽担当医から術後の状況や注意点、ケア方法 |
▽術後の細菌感染などについての危険性 |
▽治療期間中に身体に危害などの問題が発声したときの対処方法 |
▽相談窓口の紹介 |
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