抑うつと不安が体重増加に関係する
精神疾患を持つ者は肥満になりやすい
Salynn Boyles
【10月8日】抑うつや不安などの精神疾患を持つ者は、そうした疾患を持たない者よりも体重が次第に増えていく傾向が強いことが、新研究で示された。
この研究は、精神衛生が肥満に及ぼす影響を調べた研究の中では最長のもののひとつであり、4000人を超える英国の公務員をほぼ20年間追跡した。
それによると、19年間の調査期間において、抑うつ、不安といった精神疾患のエピソードを慢性もしくは反復性に有する者は肥満になる傾向が強いことが分かった。
調査期間において精神疾患の症状がひとつでもあった者が最終検診で肥満になっていた確率は、そうした症状を申告しなかった者の2倍であった。
「調査を始めた時は、肥満ではない者を対象にしていた」と研究者であるロンドン大学ユニバーシティ・カレッジのMika Kivimaki, PhDがWebMDに語った。「精神疾患症状の申告回数が多いほど、調査期間が終わるまでに肥満になるリスクが大きかった。精神疾患と体重増加との間には用量反応関係があることが示された。」
肥満と抑うつ
今回の研究の対象者は、1980年代中盤から末にかけての登録時に35歳から55歳までだった公務員4,363名である。
研究登録時と、その他に平均19年間の追跡期間の中で3回、精神衛生と身体の診察を行った。身体所見には、体重、身長、肥満指数(BMI)を含めた。
体重増加が見られる抗精神疾患薬の使用といった肥満の既知のリスク因子について調整すると、調査開始時に抑うつや不安といった精神衛生上の問題を持つ者は、それらを持たない者に比べて、そのうち肥満になる傾向が強かった。
しかし抑うつ、不安、その他の精神疾患のリスクは、肥満では有意に増えなかった。
この研究論文は、『BMJ』オンライン速報版に掲載されている。
「体重増加が精神疾患を誘発するのかどうかを逆の方向で調べてみたが、その関係性は明白ではなかった」とKivimaki博士は言う。「ただし関係性がないということではなく、今回の調査ではとても弱いものでしかなかったということだ。」
先に来るのはどちら?
シアトルの精神科医であるGregory E. Simon, MD, MPHがWebMDに語ったところによると、抑うつと肥満とが関係することはかなり強いエビデンスで示されているが、その関係の向きについてはあまりはっきりしていない。
「抑うつで肥満のリスクが増える理由としてはかなり有力な説明があるし、肥満で抑うつのリスクが増える理由としてもかなり有力な説明がある」と博士は言う。「わたしは、その両方が起きている可能性が高いと思っている。」
2006年に発表したSimon博士自身の研究は、両方向の関係性が働いている可能性を示している。
食欲が増し、運動量が減るのは抑うつの一般的症状であり、そのために体重が増える。一方、肥満には悪いイメージがつきまとうので、それで抑うつが誘発される可能性もあると博士は言う。
米国人口の肥満率は25%から30%の範囲だが、顕著な抑うつを持つ者の肥満率はその2倍になると博士は指摘する。
「抑うつでは肥満があたりまえなのであり、その2つを分離することはかなり難しい」と博士は言う。「抑うつを持つ者は結婚生活上の問題が起きやすく、結婚生活上の問題を持つ者は抑うつになりやすいと言うのと同じだ。この2つを分離するには相当に鋭利なナイフが必要になるだろう。」
出展:
Kivimaki, M., BMJ, 2009; vol 339: p b3765.
Mika Kivimaki, PhD, professor of social epidemiology, department of epidemiology and public health, University College London.
Gregory E. Simon, MD, MPH, psychiatrist and researcher, Group Health Cooperative, Seattle.
News release, BMJ.
Simon, G.E. Archives of General Psychiatry, July 2006.
Medscape Medical News 2009. (C) 2009 Medscape
|