自転車 上手に乗って体力アップ

ペダルのこぎ方工夫
効果ある坂道での走行

 自転車、乗っていますか。もし最寄駅までや買い物など日常に利用しているのであれば、その移動時間を「運動時間」としない手はない。もちろんただ乗るだけでも運動にはなるが、効果を高めるためには漫然とペダルをこいでいるだけでは限界も。押さえておきたい乗り方のポイントがあるようだ。

  「自分の知らない道も走れるし、人の案内で出かけるのも新鮮」――。こう話すのは東京都内の会社員、浜田公子さん(35)。この日は自転車ツアーや勉強会なども企画するライフクリエーションスペースOVE(東京・港)主催のツアーに参加、築地をメーン目的地にゆっくり3時間ほど自転車散歩を楽しんだ
 実は浜田さんは片道15キロほどを自転車通勤する「自転車ツーキニスト」だ。仕事場からの移動もたいていは自転車で、日常生活に自転車が欠かせない。乗り方の基本は「マイペースでしんどくなく」。運動のためと意識しなくても、日常の利用でダイエットにもなるうえ、ストレス解消にも最高。ただ「雨が降るとその日の運動量をどう捻出(ねんしゅつ)するか悩ましい」のが困った点らしい。
 
  一方、「まだまだ初心者」と話す編集者の舟橋千鶴子さん(39)は浜田さんよりもっと一般的な自転車利用者。それでも「前は少し歩くだけですぐ疲れたが、体力もつき近頃は当時より若返った気分。夏の暑さにもばてなかったし冷え性も改善、寝つきもよくなった」と効用を実感する。
 5年程前にマウンテンバイクを入手したものの当初は、最寄り駅までの数百メートルも冷や冷やで腰や腕などあちこち痛くなりもしたが、自分なりに座り位置やこぎ方を工夫しているうち徐々に自信がついてきたという。それと同時に走行距離も延び始め、そうなると体力も自然にアップ、自転車が楽しくなり遠出もしたくなってきた。
 10キロ、20キロとクリアするごとにまた自信と体力がつくという好循環が生まれ、今では都内50キロを夫と共に走るまでになった。「息があがっていた坂も今は楽勝。あちこち周囲にも注意するので動体視力もよくなった気がする」

 中村博司自転車博物館サイクルセンター事務局長によると自転車こぎでは@心肺機能の向上Aコレステロール値、血糖値などの改善B脚筋力の維持向上Cバランス調整力の維持向上Dストレス解消――などの効果が期待できるという。また座った状態の運動なので関節への負担が小さく、風を切るので疲れを感じにくい、ペダルを強くこいだり回転を速めたりして負荷を調整できるといった点も特徴だ
 ただ名古屋市立大学大学院の高石鉄雄准教授は「平坦な道を楽に走行しているだけでは健康効果は限定的」と指摘する。「呼吸循環器機能アップや脂質代謝の改善などを望むなら一定強度以上の有酸素運動を20分以上継続し少なくとも週3回は行うことが必要」とのことだ。この一定強度とは息がハアハア上がるほどではないが、「ちょっときついかな」と感じるくらいの強度に当たる。この強度を上げるのにおすすめなのが「坂道走行」だという。
 坂道走行は脚筋力の維持増強にもうってつけだ。「人によって違いはあるが、それぞれの脚で連続15回程こいだ時に太ももが張るくらいの坂を1日に自転車こぎの中に2、3カ所は組み込みたい。坂道を嫌う人が多いが、逆に坂道があったら『ラッキー』だと思って」と同准教授はアドバイスする。

  何事にも共通だが大事なのは継続すること。移動時間をちょっとのコツで運動時間に変えられる自転車こぎは「運動したくても暇がない」という人にも取り組みやすい。財団法人日本サイクリング協会の小林博さんは「楽しくないと続かない。肩ひじ張らずに格好から入ってもよいのでは」と話す。
 お気に入りの自転車があればちょくちょく出かけたくもなる。その際アクセントをつけた乗り方を意識すれば健康は結果としてついてくるだろう。「自転車こぎで血流が良くなるので肌もきれいになりますよ」(小林さん)。ますます聞き捨てならない。
(ライター  佐藤 裕理子)

疲れないように自転車に乗るには
【ペダルへの足の乗せ方】
・母指球(足の親指の付け根の膨らみ)がペダルの中心にくるように
・土踏まずをペダルの中心に置くと力が効率的に伝わらず疲れやすくなる
・ペダルをこぐ際、太ももに力が入りすぎるのも疲れやすい
・ふくらはぎから足首を意識してこぐとよい

【サドルの位置や姿勢】
・サドル(椅子)はまたがってペダルを一番下にしてかかとを乗せた時に膝が軽く曲がっている程度の高さに調節
・おなかにボールを受けるような感覚で前傾姿勢を
・ひじは伸ばしきらずに下側に軽く曲げる

【効率のいい乗り方】
・いわゆるママチャリでよりスピードを出したい場合はサドルを高めにして前のめり気味のポジションにする
・人によるが、一般的にはエネルギー効率のいいペダル回転数は1分間に70回転といわれる
(中村さん、小林さん、高石さんらの話を基に作成)


2007..9.22 記事提供  日経新聞