1月10日の一般演題で国立国際医療センター戸山病院糖尿病・代謝症候群診療部の能登洋氏は、クリニカルクエスチョン「日本人において糖尿病は癌発生の危険因子か?」に対するメタ解析結果を報告。日本人の糖尿病患者でも、全部位、肝臓、子宮体部の発癌リスクの有意な増加が示唆されると解説した。
PubMed、Cochrane Library、医中誌を用いて日本人を対象にメタ解析
検索エンジンにはPubMed、Cochrane Library、医中誌を用い、キーワードはdiabetes mellitus、cancer/neoplasm、risk factor/risk、Japanとして文献検索を実施。
発癌リスクの有意な増加を報告した論文は、男女別に数えると、全部位7件、肝臓11件、膵臓3件、子宮体部3件などだった。胃癌では1件有意な低下を報告した論文が見られたが、その他の部位では有意差なしという報告はあったものの、低下を認めた論文はなかった。
次に、解析に適した論文が3件以上ヒットした部位(全部位、肝臓、子宮体部)についてメタ解析を行った。全部位では5件の論文が対象となり、総人数は250479人(男性42%)。ランダム効果モデルを用いてオッズ比を算出すると、1.70と有意な発癌リスク増加を認めた。5件のうち1件はケースコントロール研究だったため、それを除外してもほぼ同様の結果(オッズ比1.67)だった。
さらに、5件中4件の論文で男女別に報告されており、同様にオッズ比を算出すると、男性1.40、女性1.51だった。能登氏は「男女ともに同程度の有意な発癌リスクの増加が認められる」と解説した。
臓器別で見ても、肝臓癌のオッズ比3.64、子宮体癌のオッズ比3.43であり、それぞれ有意な発癌リスクの増加が認められた。
能登氏はこの結果を踏まえて、「インスリン抵抗性とそれに伴う高インスリン血症が糖尿病患者の発癌リスク増加にかかわる可能性が高い」と指摘。ただし、糖尿病患者では多くの検査を受けるため癌発見率が高まる可能性があること、糖尿病患者は高齢者や肥満者が多いこと、が交絡因子として結果に影響を及ぼしているおそれがあることも同時に強調した。
最後に能登氏は、「日本人の糖尿病患者で発癌リスクの増加が示唆され、癌の予防・早期発見の面からも糖尿病治療を考える必要がある」と述べ、糖尿病治療薬の選択や有効な癌検診法の確立についても今後の課題と強調して演題を終えた。