副作用なく中高年支持
動脈硬化予防、低血圧にも

コエンザイムQ10(CoQ10)というサプリメントの人気が高まっている。特に中高年で疲れを感じている人に支持されているという。のむと疲れにくくなることを比較的実感しやすいためだ。


「『年のせいか、疲れやすくなった』と知人に相談したら、コエンザイムQ10のサプリメントを薦められた。半信半疑でしばらく試してみると、疲れがたまりにくいと実感した。今は手放せない状態」と話すのは50代後半の主婦。

コエンザイムQ10は、体を元気にすると評判のサプリメントだ。補酵素Q10、ビタミンQとも呼ばれている。もともと人間の体内のすべての細胞に存在する物質で、特に心臓の細胞に多く存在する。

ところが、20歳ごろをピークに年をとるにつれて体内量は減っていく。イワシなどの魚、豚肉や牛肉などの肉類、野菜や種実類にも広く含まれるが、人間の体内でも合成されている。加齢に伴って減っていくのは合成量が減っていくのが一因と考えられている。体内量が減っていくと、「疲れやすくなりがち」と日本コエンザイムQ協会理事長で、東京工科大学バイオニクス学部の山本順寛教授。逆に「不足している人がコエンザイムQ10をのむと、疲れにくくなる」と続ける。

コエンザイムQ10は細胞のエネルギー生産を高める働きをしている。摂取すると、例えば心臓の動きが高まり、送り出す血液量が増え、血行がよくなる。同様に他の臓器の働きもよくなるため、疲れにくくなるといわれている。

また、「心臓が送り出す血液量が増えるため、血圧が低い人によい。立ちくらみや朝の寝起きの悪さなど、低血圧から起こる不快な症状を緩和できる」と、浜松医科大学保健管理センターの永田勝太郎講師は指摘する。

もう一つ重要な機能としては、体の酸化を防ぐ抗酸化作用が強いことが挙げられる。そのため、動脈硬化の原因となる、悪玉コレステロールの酸化を抑えたり、肌の酸化を抑えてシミやシワを防ぐ効果も期待できる。

すでに10年以上前からサプリメントとして販売されている米国では、日本以上に人気が高い。心臓の機能が高まることから生活習慣病を予防したい人やスポーツをする人、抗酸化力に期待して、顔のシワが気になる女性が美容のために利用しているという。

日本では、30年近く前から心臓病(うっ血性心不全)の治療薬として、コエンザイムQ10が使われてきた。2001年から食品としての利用が可能になり、サプリメントが出回り始めた。利用者は、疲れを感じている中高年が多いという。

サプリメントは日清ファルマや佐藤製薬、資生堂薬品、大塚製薬など50社以上が製品化しており、ドラッグストアや通信販売などで手に入れることができる。値段はメーカーによって異なり、1ヵ月分で2000円以下のものもあれば、5000円程度するものもある。

のむ量の目安としては、医薬品として使われる際の摂取量が1日30ミリグラムなので、同じ量でよいという意見がある。

30ミリグラムを食品でとろうとすると、イワシなら6匹分にあたり、十分な量をとるのは難しいが、サプリメントなら市販のものは1粒30ミリグラムが主流なので、簡単に摂取することができる。

ただ、幸循会OBPクリニック(大阪市中央区)の副所長で医師の内海恭子さんは、「効果を実感できる量には、個人差がある。中高年だと、1日60−100ミリグラム程度のまないと効果を感じられないかもしれない」と話す。

とりあえず1日30ミリグラムを1週間続けてみて、効果を実感できないときは、少しずつ量を増やす、といった方法で自分に合う量を見つけるのがよいだろう。また「必ず全員に効くわけでなく、効果を実感できない人もいる」(内海さん)という。

のむタイミングとしては食後が効果的だ。脂溶性なので、食事に含まれる脂肪分があると、体内に吸収されやすくなるからだ。脂分の多い食事を食べた直後にのむとよい。

体内にある成分なので安全性は高く、これまで深刻な副作用は報告されていない。ただし、「のむと胃がむかむかするという人がいる。また、就寝前にのむと元気が出てしまい、眠れないという人もいる」と内海さんは注意する。(『日経ヘルス』編集部)

(2003.8.30 日本経済新聞)