揚げ物やいため物にレモン汁など、酸味のあるものを加えると、減塩していても味がこく感じ、おいしく食べられる。和食の定番、三杯酢を使った酢の物には食塩が1人分で0.6グラム前後しか含まれていない。酸味の強い調味料を使うと味を感知する味蕾を刺激して、少量の食塩でも味こく感じさせるのだ。

さらに、うま味とこくをだす油脂類を一緒に使うとより効果的である。フレンチドレッシングやマヨネーズは酢と油を入れて作る。食塩含有量は、大さじ1杯で、フレンチドレッシングは1.5グラムくらい、マヨネーズは0.3グラムくらいである。

さらに、最近食酢そのものにも、降圧効果のあることが分ってきた。ミツカングループ中央研究所の多山賢二博士らは、軽症と中等症の高血圧者(最高血圧が140−180)の57人を3群に分け、1群には食酢(りんご酢)を1日当り15ミリリットル(大さじ1杯)、2群には、30ミリリットル、3群には酢を含まない擬似飲料(プラセボ)を毎朝飲んでもらった。すると8週間後、15ミリリットル摂取の場合はプラセボに比べ、最高血圧が平均10、30ミリリットル摂取の場合は平均15低下した。

降圧作用を発揮するのは、食酢の中の酢酸によるもので、これが血圧の調節に関与するレニン−アンジオテンシン−アルドステロン系を抑制し、同時に酢酸代謝の過程で生成されるアデノシンが血管拡張を引き起こすことで、血圧が降下すると考えられている。

さらにまた食酢には血中総コレステロール値を下げる働きがあるという。食酢には意外な効用があるのだ。
(新宿医院院長  新居 裕久)

2007.2.24 日本経済新聞