赤ワインの効果は脂肪撃退?

健康によいと言われているレスベラトロールに脂肪撃退効果もあることが分かった。
Kathleen Doheny



【6月17日】レスベラトールは赤ワインとブドウの中から見つかった抗酸化物質として知られ、すでに心臓の健康を守り癌を防ぐと考えられているが、脂肪撃退効果もあることが新たな研究により分かった。

ウルム大学(ウルム、ドイツ)の研究者Martin Wabitsch, MD, PhDによると、研究室で脂肪前駆細胞と呼ばれる脂肪になる前の細胞にレスベラトールを加えたところ、脂肪前駆細胞の増加が止まり、成熟した脂肪細胞に変化しなくなったという。Wabitsch博士は今週、サンフランシスコで開かれている内分泌学会第90回年次総会“ENDO 08”で同研究結果を発表した。

「人でも同じように効果があることを証明しなければならない」とWabitsch博士はWebMDに話す。

今後も研究を続けていって確証が得られたら、レスベラトールと同じ脂肪細胞制御メカニズムを利用した薬を開発したい、と博士は言う。

レスベラトールの健康増進効果:研究の詳細
Wabitsch博士らは前回の研究で、レスベラトールがカロリー制限と似たような作用を示すことによって、高カロリー食を与えられている実験マウスの肥満関連疾患を予防することを見出していた。

そこで次は細胞を変え、ヒト脂肪細胞でこの物質が疑似カロリー制限効果を示すかどうかを探ってみることにした。

「我々はヒト脂肪細胞株を使用した」とWabitsch博士は言う。研究室で繰り返し使用することができる安定した細胞株である。

数個の脂肪細胞にはレスベラトールを加え、比較群の脂肪細胞にはレスベラトールを加えなかった。「[脂肪前駆細胞が] 倍増する時間は通常40時間である」とWabitsch博士は言う。「48時間で対照ディッシュの脂肪前駆細胞は2倍以上に増えたが、レスベラトールを入れたディッシュでは脂肪前駆細胞数が40%から45%減少した」とWebMDに話す。

レスベラトールに触れた脂肪細胞は容積も小さくなり、実質的に脂肪細胞が縮んだという。また、レスベラトールに触れたことによりインターロイキン6および8と呼ばれる物質の分泌量が低下した。これらは肥満関連疾患と考えられている糖尿病や動脈閉塞の発症に関係する物質である。

いわゆるフレンチパラドックス(フランス人は比較的脂肪の多い食事を摂り赤ワインをよく飲むのに、心臓疾患による死亡率は低いという観察結果)は赤ワインに含まれるレスベラトールにより説明が可能という説と、今回の研究結果はつじつまが合う、とWabitsch博士は言う。

レスベラトールの健康増進効果:そのメカニズムは?
レスベラトールは様々な方法で脂肪に作用する、とWabitsch博士は言う。「メカニズムは1つだけではない」。

「脂肪前駆細胞数の減少はSIRT1を介して行われる」とWabitsch博士は代謝と老化に関連する遺伝子の活性化についても触れながら説明する。

博士らが動物実験でSIRT1の活動を「封じた」ときは、脂肪前駆細胞の増殖に対するレスベラトールの影響がみられなかった。

この研究は一部、ドイツ研究協会(German Research Association)およびドイツ科学研究文化省(Ministry of Science、 Research and Arts)の補助金を得て行われた。

レスベラトールの健康増進効果:さらに研究が必要
これは興味深い研究であると米国栄養士会(American Dietetic Association)の広報担当であるKatherine Tallmadge, RDは言うが、「さらに研究が必要」という。

カロリー制限についてはまだ十分わかっていない。カロリー制限は体脂肪を減らし、様々な効果をもたらす。しかし厳しすぎるカロリー制限は骨粗しょう症などの健康問題を起こす場合がある、と栄養士のTallmadge氏は言う。

レスベラトールの健康増進効果:今後の展望
レスベラトールの脂肪制御メカニズムがさらに深く解明されたら、レスベラトールの作用を模した薬剤を開発したい、とWabitsch博士は言う。製薬業界はすでにこのコンセプトについて研究を開始しているとのことである。

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2008.6.17記事提供 WebMD