寿司屋に入ると必ず大きな茶碗(ちゃわん)で濃いお茶が出される。これは意味があることで、1つの理由として食中毒予防の可能性が考えられる。

昭和大学医学部の島村忠勝教授は、1987年ごろ、コレラの研究に取り組んでいた。コレラワクチンの効果については限界を感じていたため、他に良い方法はないかと、研究に専念していたところ、大変驚くべき発見をした。それはスライドグラスに乗せたコレラ菌にお茶を1滴加えた時、激しく動いていたコレラ菌が一瞬にして止まり、菌が凝集して、ついには抗菌・殺菌効果がみられた。

何がそうさせたか追求したところ、お茶に含まれているポリフェノールの仲間で、渋みのもとになっているカテキンであることを知った。これが細菌に対して、界面活性剤のような働きをし殺菌をしたのだ。さらに細菌の出す毒素と結合して、抗毒素と結合して、抗毒素効果を発揮することが分かった。続いて食中毒を起こす細菌、腸炎ビブリオ、黄色ブドウ球菌、サルモネラ、カンピロバクター、さらには病原性大腸菌0−157や赤痢菌に対しても同様な効果が得られることが判明した。

それではどのぐらいの量のお茶を飲んだらこのような効果が得られるのだろうか。各種実験の結果から、茶碗で1、2杯ぐらい。この場合カテキンが十分に存在する一煎目か二煎目のお茶が良いという。この働きは緑茶ばかりでなく、紅茶、ウーロン茶にも見られるそうだ。なおカテキンは牛乳たんぱく質と結合する性質があるので、お茶と牛乳と一緒にとると効果が得られない。
(新宿医院院長  新居 裕久)


2005.7.30 日経新聞