認知症、ミカンの皮で改善? マウスで確認



認知症:ミカンの皮で改善? マウスで確認−−松山大

 ミカンなど柑橘(かんきつ)類の皮に含まれる物質が脳機能を活性化させることを、松山大薬学部(松山市)の古川美子教授(60)=神経化学=と奥山聡助教(37)=行動薬理学=の研究チームが突き止めた。安全性が確認されれば臨床研究に移る。将来はエキスを取り出して錠剤にする方向で、認知症の改善に効果が期待できるという。【津島史人】

 動物実験の結果を今年2月、スイスの学術論文誌「インターナショナルジャーナル・オブ・モレキュラーサイエンス」で発表した。

 古川教授らは脂溶性の物質が脳に到達しやすい性質がある点に着目。油分を多く含む柑橘類の皮に脳機能改善を促す可能性があるとみて08年4月から地元特産のミカンを研究してきた。神経細胞を培養して活性化に効果のある物質がないか調べたところ、皮に含まれる有機化合物の「ヘプタメトキシフラボン」にその働きがあることが分かった。

 更にプラットホーム(避難場所)を取り付けた小さなプールで、避難場所への行き方を覚えさせたマウスを放して到達する時間を計測した結果、正常なマウスは11・6秒、薬で健忘症状態にしたマウスは33・6秒かかった。ところが、ヘプタメトキシフラボンを投与した健忘症マウスは11・3秒で到達した。

 また、約20種類の柑橘類を調べたところ、愛媛県が生産量日本一で「和製グレープフルーツ」と呼ばれる「河内晩柑(ばんかん)」に、ヘプタメトキシフラボンが0・024%と、他の倍以上含まれていることも分かった。

 古川教授は「愛媛が誇るミカン類に健康と暮らしに役立つ特長があると分かったことがうれしい」と話す。認知症を研究する三木哲郎・愛媛大医学部教授(62)=老年医学=は「認知症の薬は効用面でも安全面でも開発が難しいが、ミカンの皮なら安全性も問題ないのではないか」と評価している。


2012年6月30日 提供:毎日新聞社