コーヒーの効果と夏太り


 
第35回 コーヒーの効果と夏太りー日本経済新聞からー

日本大学歯学部・解剖学第II講座 准教授 本田雅規 先生

暑いですね。千代田区は現在33度。猛暑まではいきませんが暑いです。猛暑の定義は35度以上、酷暑という言葉も使われていますが、酷暑の定義を私はしりません。  
今回のお話しは、日本経済新聞に目に留まる内容として、「コーヒー」と「夏太り」の話題が掲載されていましたので、取り上げさせていただきます。一つ目の話題のコーヒーは,会員の方で好きな方も多いでしょう。どこのコーヒーが好きですか?
私はS・Bのハウスブレンド、ライトノートブレンド、もしくはエスプレッソローストの豆を買ってきて、朝食と夕食後に頂いています。一日2杯です。次の話題は、夏は痩せるはずなのですが、「夏太り」する方も少なからずおられるようです。知っている人も多いと思いますが、興味を持っていただければ幸甚です。

初めはコーヒーのお話です。私は「コーヒーの飲みすぎは良くない」と思っていて、「一日2杯までにしよう」と考えていたのですが、驚きの事実が書かれていました。「一日2杯以上飲んでも大丈夫」ということです。
1980年代までは「コーヒーに発がん性があるのではないか」と考えられていて、体に悪いという視点からの報告が多かったようだが、近年、なんと「コーヒーは体に良い」という視点からの研究報告がある。第一は、「コーヒーにはがんの発症を抑制する効果がある」とのこと。肝臓がん、大腸がんおよび頭頚部がんでは、毎日コーヒーを飲む人の方がコーヒーを全く飲まない人よりがんになりくい傾向があることがわかった。
肝臓がんでは、毎日1〜2杯飲む人の発症リスクは全く飲まない人の2分の1と低かった(国立がんセンター)。頭頚部がんの調査では、1日3杯以上飲む人の発症リスクは1杯未満のヒトに比べて約40%低い(愛知県がんセンター)。この理由もわかっているようだ。コーヒーには眠気を抑えるカフェインや抗酸化作用のあるポリフェノールの一種「クロロゲン」などの化合物が、がん化を抑える働きがあることが明らかとなった。クロロゲンは、さらに、血糖値の上昇を抑える効果もあり、一日7杯以上飲む人の糖尿病の発症リスクは2杯以下のヒトに比べて2分の1とのこと(ハーバード大)。
逆に多く飲む問題として、昔から言われているカフェインの過剰摂取。一日0.5〜1グラムの摂取を超えると心臓や血管の負担を高める恐れがあるが、カフェインはコーヒー1杯あたり平均0.1グラムなので、5〜10杯までは飲んでも良いことになる。悪い点では、胃酸の分泌を促進する効果もあるので、胃酸過多の薬を服用している人は注意が必要であり、クロロゲン酸は鉄分と結合しやすいので、貧血気味のヒトもコーヒーの摂取は避けた方が良い。

次は、夏の食生活のお話です。「夏は痩せる」と思っていたが、やはり気をつけていないと太ることも多いようです。調査によると、「夏に痩せた」という人より「夏に太った」人が多かったようだ。体重が増える第一の理由が、「ヒトの場合夏においては脂肪を燃やして熱を作る必要がなく、体が消費するカロリーである基礎代謝が下がる」ことだそうです。冬と比較すると10%も落ちる。
次の理由は食です。私は暑い夏になると食べたくなるのが「そうめん」。なんといっても食べやすいです。しかし、驚くことに「そうめん」2束を1人分として食べると300キロカロリーを超えて、2人前食べて、おかずも食べると、1食で1000キロカロリーを超えてしまいます。「そうめん」は製造過程で油が使われているので高カロリーということを、まったく知りませんでした。
よく言われることですが、「炭水化物の摂取量が増えると良くない」また、炭水化物を最初に食べると血糖値を下げるインスリンが膵臓から過剰に分泌される。このインスリンの過剰分泌が炭水化物を脂肪に変えるようです。家庭ではなかなか難しいとおもいますが、和食のレストランのコースに習って、野菜などの副菜から食べ始めて、肉や魚を食べて、最後にご飯や麺類の主食を食べなさいということです。明日から、即実行しましょう。
野菜から食べる良い点として、食物繊維を含む野菜は、血糖値の急激な上昇やインスリンの過剰な分泌を抑制する効果があるからです。豚肉などに含まれるビタミンB1は、糖質をエネルギーに変える働きを持つ。ビタミンBが不足すると代謝が悪化し、余剰な糖質が脂肪に変わります。また、脂肪の燃焼には、やはり運動が良いので、暑い夏はプールに行って体を動かしましょう。  
飲み物として、牛乳にはビタミンB1や代謝を促すビタミンB2が含まれているので、朝食に飲むと良いとのこと。一方で、スポーツ飲料は糖分が多いので、飲み過ぎには注意が必要。知らなかったことだが、冷たい飲料を一気に飲むと胃壁の血管が冷えることで代謝が低下し余分な脂肪を燃焼しづらくなる。さらに、胃が冷えると自律神経の働きが乱れて血液の流れが悪化し、胃壁を保温するために脂肪が胃の周囲に集まってくるようなので気をつけましょう。  
みなさん、コーヒーは健康に良いようですよ。また、夏太りには注意しましょう。まだまだ暑い日が続くと思いますので、ビールも美味しいですが「幸せな一杯のコーヒー」を嗜みましょう。

*夏太り防止効果のある栄養素と食について書かれていたので抜粋します。
・ビタミンB1: 豚肉、大豆、のり、うなぎ
・ビタミンB2:納豆、卵、マイタケ、牛乳、レバー
・ビタミンB6:にんにく、カツオ、サンマ
・ビタミンB12:しじみ、牛レバー、サンマ
・ナイアシン:タラコ、豆類、コーヒー
・パントテン酸:鶏レバー、納豆、マツタケ


  2013年9月4日 提供:日本大学歯学部・解剖学第II講座  准教授 本田雅規 先生