コーヒー1日1杯で肝改善 ドリップコーヒーで


大阪市立大が知見、ドリップコーヒーで

 大阪市立大学大学院の研究グループは、コーヒーの飲用がC型慢性肝炎の患者の肝機能改善に効果をもたらすという新知見をまとめた。患者への疫学的アプローチであるコホート研究調査を実施し、肝機能の指標にあたる血清中の酵素アラニン・アミノトランスフェーラーゼ(ALT)の値を測定し、1日当たり1杯以上のドリップコーヒー飲用者ではこの値が低下し、肝臓がん発症のリスクが減少することを見いだした。C型慢性肝炎の患者では肝硬変や肝臓がん発症リスクを減らすため、ALTの値を安定化させたり、低く抑えることが必要で、今回、コーヒーの飲用がそのコントロールに有効だと初めてわかったとしている。

 研究グループは、検診受診者を対象にコーヒーの飲用がALT値を低下させるという効果が示唆されてきたことをもとに、C型慢性肝炎の患者への適応が図れるのか否かを調べるため実施し、今回、成果を得ることに成功した。コーヒーに含まれるポリフェノールなどの成分には、さまざまな機能性があることが研究報告されている。今回の研究成果からも新しい効果が見つかった。

 試験では、C型慢性肝炎の患者を約380人を対象に、カフェインを含んでいるドリップコーヒー、それを含まないデカフェコーヒー、緑茶、紅茶、ウーロン茶をグループに分けて1年間、継続的に飲用してもらった。

 コーヒー類については1日1杯以上、1日1杯未満、飲まないグループとし、さらに調査開始時にALT値が正常のグループ約230人、同値の高い約150人にも細分化し、詳細な測定を行った。

 その結果、ALT正常値で、ドリップコーヒーを1日1杯以上飲用したグループでは、まったく飲用しないグループに比べ、1年後も正常値を維持している被験者が89%と多かった。またALTが高値でも1日1杯以上、ドリップコーヒーを飲用したグループは、1年後ALTが低下する比率が高かった。

 一方、デカフェコーヒーの飲用グループの場合、飲用しないグループと比べ、ALT値の安定化や改善に効果的でなかったこともわかった。

 日本での肝臓がんの主要原因は、C型肝炎ウイルス感染によるものが、全体の約80%を占めている。国内での患者数は約200万人と推定され、臨床現場で肝臓がんの発症リスクが高まることと関連するALT値をコントロールしていくことが重要だとしている。血液検査でALT値が高いと、肝細胞が障害を受けることが知られている。

 今後、研究グループでは、この結果を踏まえて、より長期的な調査へと研究ステージをアップさせるとともに、肝硬変への移行に対する予防、がん発症の予防がどの程度続くのかといった検討、インターフェロン投与による治療を実施している患者に対するコーヒー飲用のウイルス排除効果の影響などを調べていく。


  2013年12月13日 提供:化学工業日報