ジンギスカン鍋がダイエットによいと人気がある。この料理は、もとはといえば北京で生まれた料理。兜状の形をした鉄鍋を炭火のコンロの上に置き、薄切りにしたマトン(羊肉)、野菜をのせて焼き、漬け汁をつけて食べる。マトンは多少臭みがあるが、漬け汁と添える野菜の工夫で美味しく沢山とれる。

マトンは良質なたんぱく質食品、牛や豚肉と比べて鉄や亜鉛、カルニチンが多く含まれている。カルニチンはアミノ酸のリジンとメチオニンから造られるペプチドの一種である。マトンのカルニチンの含有量は100グラム中約280ミリグラム。これに比べて牛肉約90ミリグラム、豚肉は約20ミリグラムだから大変多い。カルニチンは、東京都老人総合研究所の研究によると、脂肪の燃焼を促す働きがあるので減量効果が期待できるという。

そこでラットにカルニチンを与えたところやや太った老齢ラットでは減量効果が見られたが、若い正常体重のラットでは、効果は見られなかった。老齢ラットでは加齢で体内でのカルニチン合成量が減ってくるので、足りなくなった分を補うことでダイエット効果が得られたのではないかと考えている。

ところで、ラットに与えたカルニチンの量は、人で換算するとマトンで2キログラム位の大量、とても毎日食べられる量ではない。そこでジンギスカン鍋でダイエットを望むならば、ローエネルギーの野菜をたくさんとり、マトンを十分に食べ、肉の脂肪と一緒にとると体脂肪になりやすい炭水化物の量を減らす。エネルギーを抑え、食後しっかりと運動するのが賢明だ。

(新宿医院院長  新居 裕久)


2005.12.17 日本経済新聞