| 特定の疾患・症状を抱えた身で、ある種の薬品を摂取すると体に異変が起こり、命にかかわる危険性もあるというのだ。しかもこれは病院薬だけではなく、市販薬、栄養補助食品やサプリメント、漢方薬、普通の食品でも起きる場合がある。葛根湯、小青竜湯、芍薬甘草湯、安中散、大黄甘草湯、防風通聖散など一般用医薬品として販売されているものをはじめ多くの漢方製剤に配合されている。リコリスティー、リコリスキャンディーなど、「リコリス」と表記されているものも同じ。漢方薬を購入する際には、薬剤師に相談する。
 元日本薬剤師会常務理事で医薬情報研究所/(株)エス・アイ・シー医薬情報部門責任者の堀美智子さんの全面協力のもと、病気ごとの「飲んではいけない薬」の組み合わせパターン、そしてこの問題の解説を、お送りする。
 
 気になる組み合わせは表をご覧いただきたい。我々の生活の中のあらゆる場面に顔を見せる薬品・食品に含まれる成分ばかりだ。
 
 目薬や点鼻薬など外用薬は、体への影響が少ないような感じがする。しかしこれは大間違いだ。
 特定の病気との関連ではないが、鼻粘膜から吸収される外用薬の恐ろしさを教えてくれる症例がある。
 
 生後2カ月の赤ちゃんに、市販の点鼻薬を左右の鼻腔に2滴ずつ入れた。その後赤ちゃんはぐったりし、呼びかけに応じなくなった。顔色は悪くなり、異常発汗し、体温は36度を切るまでに低下。点鼻薬に含まれていた硝酸ナファゾリンという成分の中毒症状だった。「目薬に含まれるβ遮断薬はぜん息症状を引き起こすおそれがあり、経口摂取には注意が払われてきました。ところが、最近、目から流れて鼻の粘膜などから吸収されるおそれが指摘されたのです。外用薬なら安全だろうと、赤ちゃんにも使う人がいますが、これは誤り。鼻の粘膜は薬物を吸収しやすく、薬物が脳に直接行くからです」
 自分の付き合っている病気との関係を知らずに目薬を差すだけで、思いもよらぬ症状が出ることがある。その恐ろしさをご理解いただけただろうか。
 
 本誌・中西 庸
 
 高血圧
 ●交感神経刺激薬(塩酸プソイドエフェドリン、硫酸プソイドエフェドリン、塩酸フェニレフリン)
 末梢血管を収縮させる作用、心機能を亢進させる作用をもち、血圧を上昇させるおそれがある。
 鼻づまりを楽にする成分として、多くの鼻炎薬に配合されているので注意。鼻炎薬を購入する際は、薬剤師に相談する。
 ●交感神経刺激薬(塩酸メチルエフェドリン、塩酸メトキシフェナミンなど)
 末梢血管を収縮させる作用、心機能を亢進させる作用をもち、血圧を上昇させるおそれがある。
 総合感冒薬や咳止めに配合されていることがあり、注意する。鼻炎薬等を購入する際には、薬剤師に相談する。
 ●交感神経刺激薬(塩酸ナファゾリン、硫酸テトラヒドロゾリン、塩酸テトラリゾリン、塩酸フェニレフリンなど)
 末梢血管を収縮させる作用、心機能を亢進させる作用をもち、血圧を上昇させるおそれがある。
 ほとんどの鼻炎薬に配合されている。過剰使用は注意。鼻づまりがかえって悪化することもあるので、点鼻薬の使用は鼻づまりがひどいときだけに限り、長期連用や安易な使用は避ける。
 ●マオウ(麻黄)
 上記の成分と同様の作用をもつエフェドリンを主成分とするため、血圧を上昇させるおそれがある。
 葛根湯や小青竜湯など多くの漢方薬製剤に配合されている。総合感冒薬や鼻炎薬に配合されていることもある。生薬成分だが、一般の医薬品と同様の注意が必要。総合感冒薬や漢方薬を購入する際には、薬剤師に相談する。
 ●抗炎症剤(グリチルリチン酸、グリチルリチン酸ニカリウムなど)
 ナトリウムやクロル、水分を体内に取り込む作用、及びカリウムを排泄する作用があり、血圧を上昇させたり、むくみを生じさせたりするおそれがある。グリチルリチンを1日400mg以上摂取することで、高血圧が出現したとの報告がある。
 総合感冒薬、鼻炎薬、咳止め、トローチ、のどスプレー、口内炎用塗り薬、栄養補助食品などに広く配合されている。歯磨きペーストや口腔洗浄剤、リップクリームなど医薬品以外にのものに入っていることも多い。食品の甘味料として、調味料、魚介加工品、菓子、飲料など、一般的にも使用されている。知らないうちに重複して摂取していることも考えられるので注意が必要。
 ●カンゾウ(甘草=リコリス)
 上記の成分と同様の作用をもつグリチルリチンを主成分とするため、血圧が上昇したり、むくみを生じさせたりするおそれがある。
 葛根湯、小青竜湯、芍薬甘草湯、安中散、大黄甘草湯、防風通聖散など一般用医薬品として販売されているものをはじめ多くの漢方製剤に配合されている。リコリスティー、リコリスキャンデーなど、「リコリス」と表記されているものも同じ。漢方薬を購入する際には、薬剤師に相談する。
 ●解熱鎮痛剤(アスピリン、イブプロフェン、エテンザミドなど)
 ナトリウムやクロル、水分を体内に取り込む作用があり、血圧を上昇させるおそれがある。降圧薬の作用を弱めるおそれもある。
 多くの解熱鎮痛薬、感冒薬に配合されている。常備薬を使用する場合には、その成分を確認する。解熱薬や痛み止めを購入する場合は、薬剤師に相談する。
 ●H2ブロッカー(シメチジン)
 〈β遮断薬を服用している場合〉シメチジンが薬物代謝酵素を抑制するため、β遮断薬の代謝・分解が遅延して作用が強く出、脈が遅くなる、血圧の低下、めまいやふらつきを感じるなどの症状が出るおそれがある。
 市販の胃薬にも配合されているものがある。H2ブロッカーを購入する場合は、薬剤師に相談する。
 ●抗コリン薬(ロートエキス、スコボラミン、ベラドンナ総アルカロイド、ヨウ化イソプロパミドなど)
 〈β遮断薬を服用している場合〉抗コリン薬が消化管の運動を抑えることによりβ遮断約の吸収が上昇し、脈が遅くなる、血圧の低下、めまいやふらつきを感じるなどの症状が出るおそれがある。両者の作用が拮抗し、血圧や心機能が不安定になることも考えられる。
 抗コリン薬は、胃腸薬、下痢止め、乗り物酔い予防薬、総合感冒薬、鼻炎薬などに配合されている。抗コリン薬単独でも、口の渇きや眠気、尿が出にくい、目のちらつきなどの副作用を生じることがある。これらの薬剤が必要な場合は、薬剤師に相談をすること。
 ●「血圧が高めの人向け」特定保健用食品」
 〈ACE阻害薬を服用している場合〉降圧作用をもつ薬剤と同じ作用をもつ成分を含むものがあり、降圧作用が強く出たり、血圧が十分にコントロールできなくなったりするおそれがある。ACE阻害作用の重複により咳が出やすくなるおそれもある。
 この種の特定保健用食品の中には、降圧薬のACE阻害薬と同じ薬理作用をもつもの(ラクトトリペプチド、かつお節オリゴペプチド、サーデンペプチドなど)や、副交感神経を刺激しておだやかな血圧降下作用を有するもの(杜仲葉配糖体)がある。降圧薬との安易な併用は避ける。日ごろから取っている健康食品があれば、医師・薬剤師に伝えておく。
 ●カリウムを多く含むもの(医薬品:アスパラギン酸カリウム、グアヤコールスルホン酸カリウムなど サプリメント:クロレラ、青汁、にがりなど。「血圧が高めの人向け」の特定保健用食品の中にも、カリウムを含むものがある 食品:芋類、りんご・バナナなどの果物、きのこ類、海藻類など)
 〈ACE阻害薬、ARB、カリウム保持性利尿薬などを服用している場合〉血中のカリウム濃度が上昇し、脱力感、筋力低下、吐き気、下痢、不整脈などの高カリウム血症を起こすおそれがある。 注意! 服用中の薬剤によって、カリウムの取りすぎに注意が必要な場合と、カリウムを積極的に取ったほうがよい場合がある。
 通常の服用量や摂取量では問題になることはほとんどないと考えられるが、高血圧の治療は長期間に及ぶことが多いため、留意が必要。食事療法を行なう場合も、野菜やきのこ類などを極端に増やしたりせず、多種類の食品をバランスよく取るように心がける。青汁などの健康食品や特定保健用食品なども取りすぎないように。
 〈上記の薬剤を服用していない場合〉
 カリウムはナトリウムの排泄を促進し、血圧を下げる作用がある。カリウムは線維知るの食品に多く含まれているため、偏食がちの人や小食の人、歯の弱い高齢者などでは、不足する傾向があるため、積極的に取ることが望ましい。ただし、高血圧治療中の人は、薬剤師に服用中の薬剤や日常的に取っているサプリメントや特定保健用食品などを伝え、相談する。
 ●アルコール
 アルコールには血管拡張作用があるため、血圧が過度に下がり、起立性低血圧を起こすおそれがある。
 アルコールで薬を服用したり、服用前後にアルコールを飲んだりすることは避ける。血圧を良好に保つためにも、飲みすぎには注意。
 
 糖尿病
 ●交感神経刺激薬(塩酸プソイドエフェドリン、硫酸プソイドエフェドリン、塩酸フェニレフリン)
 交感神経刺激作用により、グリコーゲンの分解を促進して血糖値を上昇させるほか、インスリンの分泌を変化させ、血糖値のコントロールが困難になるおそれがある。また、末梢血管収縮作用や心機能亢進作用によって血圧を上昇させ、糖尿病の症状を悪化させるおそれもある。
 鼻づまりを楽にする成分として、多くの鼻炎薬に配合されているので注意。鼻炎薬を購入する際は、薬剤師に相談する。
 ●交換神経刺激薬(塩酸メチルエフェドリン、塩酸メトキシフェナミンなど)
 交感神経刺激作用により、グリコーゲンの分解を促進して血糖値を上昇させるほか、インスリンの分泌を変化させ、血糖値のコントロールが困難になるおそれがある。また、末梢血管収縮作用や心機能亢進作用によって血圧を上昇させ、糖尿病の症状を悪化させるおそれもある。
 総合感冒薬や咳止めに配合されていることがあり、注意する。鼻炎薬を購入する際には、薬剤師に相談する。
 ●交感神経刺激薬(塩酸ナファゾリン、硫酸テトラヒドロゾリン、塩酸テトリゾリン、塩酸フェニレフリンなど)
 交感神経刺激作用により、グリコーゲンの分解を促進して血糖値を上昇させるほか、インスリンの分泌を変化させ、血糖値のコントロールが困難になるおそれがある。また、末梢血管収縮作用や心機能亢進作用によって血圧を上昇させ、糖尿病の症状を悪化させるおそれもある。
 ほとんどの点鼻薬に配合されている。過剰使用は注意。鼻づまりがかえって悪化することもあるので、点鼻薬の使用は鼻づまりがひどいときだけに限り、長期連用や安易な使用は避ける。
 ●マオウ(麻黄)
 上記の成分と同様の作用をもつエフェドリンを主成分とするため、血糖値のコントロールを困難、症状の悪化のおそれがある。
 葛根湯や小青竜湯など多くの漢方製剤に配合されている。総合感冒薬や鼻炎薬に配合されていることもある。生薬成分だが、一般の医薬品と同様の注意が必要。総合感冒薬や漢方薬を購入する際には、薬剤師に相談する。
 ●副腎皮質ステロイド
 使用部位に感染症を引き起こしやすくなるおそれがある。
 虫刺されのかゆみや湿疹・炎症を抑える軟膏・クリーム剤・液剤、痔疾患用の座薬などに配合されている。長期間の使用により感染症を引き起こしやすくなるので、症状が改善しないときには早めに薬剤師に相談を。
 ●解熱鎮痛剤(アスピリン)
 血糖降下薬の作用が増強され、また本剤自体も血糖値を下げる作用をもっているため、血糖値が下がりすぎたり、コントロールが十分にできなくなるおそれがある
 多くの解熱鎮痛薬、感冒薬に配合されている。常備薬を使用する場合には、その成分を確認する。解熱薬や痛み止めを購入する場合は、薬剤師に相談する。
 ●炭水化物消化酵素(ジアスターゼ)
 〈αグルコシダーゼ阻害薬(アカルボース)を服用している場合〉それぞれの作用が打ち消しあって弱まり、食後の過血糖が改善されないおそれがある。
 総合胃腸薬や消化薬に配合されていることがある。胃腸薬等が必要な場合は、この成分を含まないものを選ぶ、薬剤師に相談するなどすること。
 ●「血糖値が気になる人向け」の特定保健用食品
 〈αグルコシダーゼ阻害薬(アカルボース、ボブルボース)を服用している場合〉両者の作用が重複するため、糖分オ吸収がさらに抑制され、血糖値が下がりすぎるおそれがある。
 グァバ葉ポリフェノールやトウチエキスなど、αグルコシダーゼ阻害薬と同様に糖の吸収を遅らせる作用をもつ成分を含むものがある。血糖値の過度の低下のほか、膨満感、放屁、便秘などの症状が出るおそれもある。食事や水分補給時などに、これらの成分を含む飲料を飲むことは控える。
 
 ぜん息
 ●解熱鎮痛薬(アスピリン、イブプロフェン、エテンザミド、サリチルアミドなど)
 ぜん息の発作を誘発するおそれがある。
 本剤やほかの解熱鎮痛薬、総合感冒薬などでぜん息の発作を起こしたことのある人は使用しないこと。鼻茸、慢性副鼻腔炎などがある人も注意。同種の薬剤でもアセトアミノフェンでは比較的起こりにくいとされるが、鎮痛薬が必要な場合は、薬剤師に相談する。
 ●外用消炎鎮痛薬(インドメタシン、ケトプロフェン、ピロキシカム、フェルビナク)
 ぜん息の発作を誘発するおそれがある。
 本剤でぜん息の発作を起こしたことがある人は使用しない。過去に発作を起こしたことがない場合でも、使用後、息苦しさなどを感じた場合はすぐに使用を中止し、患部を洗い流す。ぜん息の人は、外用消炎鎮痛薬を購入する場合は、薬剤師に相談する。
 ●交感神経刺激薬(エンサンプソイドエフェドリン、硫酸プソイドエフェドリン、塩酸フェニレフリン)
 〈キサンチン系製剤を服用している場合〉併用によってキサンチン系製剤の中枢神経刺激作用が強く表れることがある。また吐き気、嘔吐、動悸、頻脈、頭痛、イライラ、興奮、不眠など交感神経刺激薬の副作用も出やすくなるおそれがある。体のだるさ、手足や口の回りのしびれ、引きつりなど低カリウム血症が表れるおそれもある。
 鼻づまりを楽にする成分として、多くの鼻炎薬に配合されているので注意。鼻炎薬を購入する際は、薬剤師に相談する。
 ●交感神経刺激薬(塩酸メチルエフェドリン、塩酸メトキシフェナミンなど)
 〈キサンチン系製剤を服用している場合〉併用によってキサンチン系製剤の中枢神経刺激作用が強く表れることがある。また吐き気、嘔吐、動悸、頻脈、頭痛、イライラ、興奮、不眠など交感神経刺激薬の副作用も出やすくなるおそれがある。体のだるさ、手足や口の回りのしびれ、引きつりなど低カリウム血症が表れるおそれもある。
 総合感冒薬や咳止めに配合されていることがあり、注意する。鼻炎薬等を購入する際には、薬剤師に相談する。
 ●交感神経刺激薬(塩酸ナファゾリン、硫酸テトラヒドロゾリン、塩酸テトラリゾリン、塩酸フェニレフリンなど)
 〈キサンチン系製剤を服用している場合〉併用によってキサンチン系製剤の中枢神経刺激作用が強く表れることがある。また吐き気、嘔吐、動悸、頻脈、頭痛、イライラ、興奮、不眠など交感神経刺激薬の副作用も出やすくなるおそれがある。体のだるさ、手足や口の回りのしびれ、引きつりなど低カリウム血症が表れるおそれもある。
 ほとんどの点鼻薬に配合されている。過剰使用は注意。鼻づまりがかえって悪化することもあるので、点鼻薬の使用は鼻づまりがひどいときだけに限り、長期連用や安易な使用は避ける。
 ●マオウ(麻黄)
 〈キサンチン系製剤を服用している場合〉上記の成分と同様の作用をもつエフェドリンを主成分とするため、併用によってキサンチン系製剤の中枢神経刺激作用が強く表れることがある。また吐き気、嘔吐、動悸、頻脈、頭痛、イライラ、興奮、不眠など交感神経刺激薬の副作用も出やすくなるおそれがある。体のだるさ、手足や口の回りのしびれ、引きつりなど低カリウム血症が表れるおそれもある。
 葛根湯や小青竜湯など多くの漢方製剤に配合されている。総合感冒薬や鼻炎薬に配合されていることもある。生薬成分だが、一般の医薬品と同様の注意が必要。総合感冒薬や漢方薬を購入する際には、薬剤師に相談する。
 ●H2ブロッカー(シメチジン)
 〈キサンチン系製剤を服用している場合〉キサンチン系製剤の代謝が抑制されて作用が増強し、吐き気、嘔吐、頭痛、イライラ、動悸や頻脈、手の震えなどが表れるおそれがある。
 市販の胃薬にも配合されているものがある。H2ブロッカーを購入する場合は、薬剤師に相談する。
 ●キサンチン系製剤(テオフィリン、ジプロフィリン、アミノフィリンなど)
 〈キサンチン系製剤を服用している場合〉服用中の薬剤と同様の成分であるため、併用によって過量になり、吐き気や嘔吐、動悸や頻脈、手の震えなどが表れるおそれがある。
 咳止めや乗り物酔い予防薬に配合されているものもある。
 ●カフェイン
 〈キサンチン系製剤を服用している場合〉
 服用中の薬剤と同様の成分であるため、併用によって過量になり、吐き気や嘔吐、動悸や頻脈、手の震えなどが表れるおそれがある。
 カフェインは上記のテオフィリン等と類似した作用をもつため、同様の危険性が考えられる。コーヒーや紅茶などの飲料のほか、総合感冒薬、鼻炎薬、咳止め、乗り物酔い予防薬、眠気予防薬、ドリンク剤など、医薬品としても広く配合されているので、過剰摂取にならないように注意が必要となる。
 ●喫煙
 〈キサンチン系製剤を服用している場合〉
 喫煙者は体内の薬物代謝酵素が増えているため、治療薬の作用が弱まって症状のコントロールが十分にできないことがある。
 ぜん息の改善のためにも、禁煙することが望ましい。また急に禁煙すると薬物の血中濃度が上昇し、副作用が出やすくなるため、禁煙をする場合は、医師や薬剤師に伝えておく。
 
 心疾患
 ●交感神経刺激薬(塩酸プソイドエフェドリン、硫酸プソイドエフェドリン、塩酸フェニレフリン)
 末梢血管を収縮させる作用、心機能を亢進させる作用をもち、血圧を上昇させるおそれがある。
 鼻づまりを楽にする成分として、多くの鼻炎薬に配合されているので注意。鼻炎薬を購入する際は、薬剤師に相談する。
 ●交感神経刺激薬(塩酸メチルエフェドリン、塩酸メトキシフェナミンなど)
 末梢血管を収縮させる作用、心機能を亢進させる作用をもち、血圧を上昇させるおそれがある。
 総合感冒薬や咳止めに配合されていることがあり、注意する。鼻炎薬などを購入する際には、薬剤師に相談する。
 ●交感神経刺激薬(塩酸ナファゾリン、硫酸テトラヒドロゾリン、塩酸テトリゾリン、塩酸フェニレルフリンなど)
 末梢血管を収縮させる作用、心機能を亢進させる作用をもち、血圧を上昇させるおそれがある。
 ほとんどの点鼻薬に配合されている。過剰使用は注意。鼻づまりがかえって悪化することもあるので、点鼻薬の使用は鼻づまりがひどいときだけに限り、長期連用や安易な使用は避ける。
 ●マオウ(麻黄)
 上記の成分と同様の作用をもつエフェドリンを主成分とするため、血圧を上昇させるおそれがある。
 葛根湯や小青竜湯など多くの漢方製剤に配合されている。総合感冒薬や鼻炎薬に配合されていることもある。生薬成分だが、一般の医薬品と同様の注意が必要。総合感冒薬や漢方薬を購入する際には、薬剤師に相談する。
 ●尿をアルカリ化させる薬剤(炭酸水素ナトリウム=重曹
 〈塩酸メキシレチンを服用している場合〉尿のpHをアルカリ性側に変化させるため、塩酸メキシレチンが排泄されにくくなり、血中濃度が上昇して作用が強く出るおそれがある。
 制酸剤として、多くの胃腸薬に配合されている。胃腸薬を購入する場合は、炭酸水素ナトリウム(重曹と記載されている場合もある)を配合していないものを選ぶ。薬剤師に相談するなどする。
 ●キサンチン系製剤(テオフィリン、ジプロフィリン、アミノフィリン、カフェイン)
 キサンチン系薬剤の心臓への刺激作用により、不整脈などの症状が悪化するおそれがある。〈塩酸アミオダロン、塩酸メキシレチンを服用している場合〉キサンチン系背以外の代謝が抑制されて作用が強く出て、吐き気、嘔吐、頭痛、イライラ、動悸などの症状が表れるおそれがある。
 一部の鎮咳薬や乗り物酔い予防薬に配合されている。カフェインもキサンチン系物質の一種であるため、過剰摂取には注意。コーヒー・紅茶などの飲料のほか、総合感冒薬、鼻炎薬、鎮咳薬、眠気防止薬、乗り物酔い予防薬、ドリンク剤など、医薬品にも広く配合されている。
 ●ヨウ素(ヨード)を含む医薬品・食品
 〈塩酸アミオダロンを服用している場合〉アミオダロン中にヨウ素が含まれているため要素が過剰となり、動悸、頻脈、息切れ、イライラ、疲労感、震え、手の汗ばみなど甲状腺機能亢進症の症状、あるいは寒気、眠気、疲れやすい、声がかすれるなど機能低下症の症状が表れるおそれがある。
 うがい薬、のどスプレーなどに配合されている。特にのどスプレーは、手軽に使用できることから使いすぎてしまうことも多く、注意が必要。普通に食事を取る文には問題になることはほとんどないが、コンブやワカメ、ヨウ素を強化した卵などの食品も、取りすぎないように気をつける。
 ●カルシウム・ビタミンDを含む医薬品・サプリメント・食品
 〈ジギタリス製剤を服用している場合〉カルシウムの血中濃度が上昇し、ジギタリスの中毒症状が表れやすくなる。
 カルシウム製剤やサプリメント、カルシウム強化食品などの過剰摂取には注意する。
 ●食物繊維を含む健康食品、「おなかの調子を整える」・「コレステロールが高めの人向け」の特定保健用食品
 〈ジゴキシンを服用している場合〉薬剤の吸収が遅れたり、十分に吸収されなかったりすることがあり、症状が改善されないおそれがある。
 この種の特定保健用食品に含まれる低分子化アルギン酸ナトリウム、難消化性デキストリンなどの成分には注意する。またサイリウム種皮、小麦ふすまなどや食物繊維の取りすぎにも気をつける。
 ●抗コリン剤(ロートエキス、スコポラミン、ペラドンナ総アルカロイド、ヨウ化イソプロパミド)
 抗コリン剤の心臓への作用により、頻脈などが表れ、症状が悪化するおそれがある。〈ジゴキシンを服用している場合〉抗コリン剤が消化管の運動を抑制するため、ジゴキシンが消化管内に長くとどまって吸収が高まって作用が増強し、除脈や不整脈などが表れるおそれがある。
 胃腸薬、下痢止め、乗り物酔い予防薬、鼻炎薬などに配合されている。これらの薬剤を購入する際は、薬剤師に相談する。
 
 緑内障
 ●抗ヒスタミン剤(マイレン酸クロルフェニラミン、フマル酸クレマスチン、ジフェンヒドラミンなど)
 眼圧を上昇させ、症状を悪化させるおそれがある。
 総合感冒薬、鼻炎薬、咳止め、かゆみ止め(アレルギー用薬)、乗り物酔い予防薬などに配合されている。この成分の入っている薬剤には注意し、薬剤師に相談する。また自分の病状について、医師から十分な説明を受けるようにし、どのような薬剤に気をつけるべきかなどを、あらかじめ確認しておくとよい。
 ●抗コリン薬(ロートエキス、スコポラミン、ペラドンナ総アルカロイド、ヨウ化イソプロパミドなど)
 眼圧を上昇させ、症状を悪化させるおそれがある。
 総合感冒薬、鼻炎薬、胃腸薬、乗り物酔い予防薬などに配合されている。この成分の入っている薬剤には注意し、薬剤師に相談する。また自分の病状について、医師から十分な説明を受けるようにし、どのような薬剤に気をつけるべきかなどを、あらかじめ確認しておくとよい。
 ●血管収縮薬(塩酸テトラヒドロゾリン、塩酸ナファゾリン、塩酸フェニレフリンなど)
 眼圧を上昇させ、症状を悪化させるおそれがある。
 鼻づまりを緩和する点鼻薬に配合されている。塩酸フェニレフリンは、内服用の鼻炎薬に配合されているものもある。すぐに症状が悪化することはほとんどないが、点鼻薬の使用は、鼻づまりがひどいときだけに限る。
 ●※眼科医の治療を受け眼圧がコントロールされている場合などは、上記の薬剤を服用しても大きな問題とならないことが多い。逆に眼圧は正常でも視神経に障害が起きている場合もある。緑内障にはいくつかのタイプがあるので、自分はどのタイプで今どのような状態か、医師から説明を受けておくのが望ましい。
 
 腎障害
 ●解熱鎮痛薬(イブプロフェン、アスピリン、アスピリンアルミニウム、アセトアミノフェン、エテンザミドなど)
 腎臓の働きに関与するプロスタグランジンの産生が抑えられるため、腎機能が低下し、尿量の減少やむくみ、血圧の上昇などが表れるおそれがある。特にイブプロフェンには、服用により全身のむくみとそれに伴う息苦しさ、だるさ、悪心、嘔吐が見られたとの報告もある。
 解熱鎮痛薬のほか、総合感冒薬にも配合されている。これらの薬剤が必要となった場合は、薬剤師に相談する。左記のような症状が見られたときは、服用を中止して、すぐに医師・薬剤師に知らせる。
 ●ナトリウム含有薬品(炭酸水素ナトリウム=重曹)
 腎障害があると、ナトリウムが蓄積しやすいため、むくみや血圧の上昇など高ナトリウム血症の症状が表れるおそれがある。
 炭酸水素ナトリウム(重曹)は、制酸剤として多くの胃腸薬に配合されている。1、2回服用する程度であればほとんど問題はないと考えられるが、食塩の摂取を制限されていることもあるため、注意が必要。胃腸薬を購入する時は、念のため、薬剤師に相談する。
 ●マグネシウム含有薬品(酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムなど)
 腎障害があると、マグネシウムが蓄積しやすいため、悪心、嘔吐、血圧の低下など高マグネシウム血症の症状が表れるおそれがある。
 胃腸薬、便秘薬のほか、保健薬、栄養剤、ドリンク剤、カルシウム製剤・サプリメントなどにも配合されているので注意する。
 ●カルシウム含有薬品(乳酸カルシウム、リン酸カルシウム、クエン酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、ボレイ=牡蠣など)
 腎障害があると、カルシウムが蓄積しやすいため、食欲不振、吐き気、多飲、多尿など高カルシウム血症の症状が表れるおそれがある。
 カルシウム製剤・サプリメントのほか、保健薬、栄養剤、胃腸薬などにも配合されている。パンやヨーグルトなどにはカルシウムを強化した食品も多いため、取りすぎないように気をつける。
 ●アルミニウム含有食品(乾燥水酸化アルミニウムゲル、ケイ酸アルミニウム、合成ヒドロタルサイト、アルジオキサなど)
 腎障害があると、アルミニウムが蓄積しやすいため、長期連用によって、アルミニウム骨症(骨が痛むなど)、アルミニウム脳症(痴呆様症状、物忘れ、言葉が出にくいなど)が起きるおそれがある。
 胃腸薬や解熱鎮痛薬に配合されているので、これらの薬剤を、漫然と服用しない。
 ●抗炎症剤(グリチルリチン酸、グリチルリチン酸二カリウムなど)ナトリウムやクロル、水分を体内に取り込む作用、及びカリウムを排泄する作用があり、血圧を上昇させたり、むくみを生じさせたりするおそれがある。
 総合感冒薬、鼻炎薬、咳止め、トローチ、のどスプレー、口内炎用塗り薬、栄養補助剤などに広く配合されている。歯磨きペーストや口腔洗浄剤、リップクリームなど医薬品以外のものに入っていることも多い。食品の甘味料として、調味料、魚介加工品、菓子、飲料など、一般的にも使用されている。知らないうちに重複して摂取していることも考えられるので注意が必要。
 ●カンゾウ(甘草=リコリス)
 上記の成分と同様の作用をもつグリチルリチンを主成分とするため、血圧を上昇させたり、むくみを生じさせたりするおそれがある。
 
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