しょうがは昔から台所の常備野菜である。刺し身や冷や奴におろししょうが、焼き魚に葉しょうが、鮨にガリ(薄切りしょうがを甘酢につけたもの)、弁当に紅しょうがといったように、特に夏の暑い時には利用度が高まる。それは食欲を進めるからだ。

しょうがは栄養素としては、特に多く含まれているものはないが、すがすがしい芳香とさわやかな辛み感を持っている。そして香り(シネオールなど)は、脳の働きを活性化し気分を爽快にする。辛み成分としては、ショウガオールやジンゲロールなどが含まれている。辛み成分は口や胃などの粘膜を刺激し、中枢神経に働き、唾液や胃液の分泌を促し、さらに腸の運動を刺激し、ガスを排出させ、胃腸の働きをよくし食欲を促す。

「嘔吐(おうと)の聖薬」ともいわれ、吐き気や嘔吐を止めるのによく、乗り物酔いや二日酔い、妊婦のつわりのときなどに使われる。辛み成分には強い殺菌作用があるので、食中毒予防が期待できる。またしょうがは、臭みをとる働きがあるので、魚や肉料理に使用される。

さらに、タンパク質分解酵素のジンジベインが含まれているので、鶏の空揚げなどに、下味におろししょうがを加えると肉が柔らかくなる。近年辛み成分には抗酸化作用のあることが分かり、ガン予防になりそうだということが分ってきた。

他に抹消血液循環や体熱産生を促す働きがあるので、防寒や冷え症、風邪の予防治療にも利用される。まさに薬食同源の食品といえよう。しょうがの適量は1日あたり10グラムくらいが目安。

(新宿医院院長  新居 裕久)


 2006.8.26 日本経済新聞