たばこ増税で盛り上がる禁煙グッズに冷や水?
ニコチン含有の「電子たばこ」が出回る本末転倒
10月1日から、いよいよたばこ増税によるたばこの値上げが始まった。これを機に、禁煙を考えている読者も多いことだろう。
値上げによる「禁煙ムード」が高まるなか、禁煙グッズも当初の予想以上に盛り上がりを見せている。とりわけ需要が伸びているのが、「電子たばこ」だ。
しかし最近では、大手メーカーが発売する電子たばこに紛れて、ニコチンが含まれている「まがい物ではないか」と疑われる商品も、多く販売されていることが判明している。それでは、禁煙グッズの意味がない。
独立行政法人国民生活センターの全国消費生活情報ネットワーク・システム(PIO-NET)には、2007年6月〜10年6月末までの間に、実に309件もの電子たばこに関する相談が寄せられているそうだ。
その内訳を見ると、品質・機能・役務品質に関するものが168件、安全・衛生に関するものが73件など、品質や機能に関する相談が大半を占めている。
なかには、「『有害物質は含まれていない』と書いてある電子たばこを購入したが、吸っているうちに喉が炎症を起こしたような状態になった」「禁煙用の電子タバコを吸ったところ、父も自分も気分が悪くなり、頭重、めまいを感じた。父も吐き気を感じた」といった健康被害に関するものが、21件も含まれていた。
そこでPIO-NETは、一般的に入手できる方法で25銘柄45味の電子たばこを購入して、ガスクロマトグラフ(質量分析計)という試験方法により、スクリーニングを行なった。
その結果、国内で販売されている25銘柄45味中、11銘柄15味について、少量ではあるがニコチンが検出された。少量とはいえ、国内ではたばこ以外の商品についてはニコチンが「医薬品成分」に指定されているため、薬事法上問題となるおそれがある。
それでは、市販されている電子たばこの「表示」はどのようになっているのか? 今回テスト対象銘柄とされた、国内で販売されている25銘柄のパッケージや取扱説明書などの表示を調べると、ニコチンを含まない旨の表示が見られたものは25銘柄中22銘柄あり、ニコチンの含有に関する表示がないものは 3銘柄という結果であった。
現実にニコチンが含有されている事業者も、もちろん含まれている。この回答結果には、ただただ驚くばかりである。
では、なぜそのような結果が得られるのかというと、取扱説明書にはニコチンが含有されていることよりも、「誤飲」や「カートリッジ内の液成分や口にくわえたときに、溶出されてくる成分を飲み込んでしまった場合の安全性や衛生面」について表示をしておけば安全だと、事業者は考えていると推測される。
つまり吸引は問題なく、その他の行為についても液体自体を飲み込まなければ安全という安易な考えが、その背景の一因として考えられるわけだ。
また、家庭用の100ボルトの電源を利用する電子たばこの充電器は、電気用品安全法の特定電気用品「直流電源装置」に該当するため、登録検査機関の技術基準適合性検査を受け、商品にPSEマークを表示することが義務付けられている。にもかかわらず、それを表示すらしない製品も存在している。
以前筆者が電子たばこを試した際にも、製品が熱を帯びてくるだけで電子たばこ自体に充電がされず、危険を感じて破棄した経験がある。全ての製品にPSEマークが表示されていないわけではないが、火災の恐れがある充電式電池を使用している以上、事業者はもちろんのこと、使用者としても十分注意が必要である。
電子たばこは、コンビニやホームセンターなどで気軽に購入できる。「電子たばこにはニコチンが含まれていない」という認識から、未成年者へ販売されてしまう可能性すらある。現に、未成年者の服用に注意するよう明記されている電子たばこは限られているし、年齢確認が必要とも書かれていない。
「たばこを吸っている姿がカッコ良い、だけど電子タバコだから未成年でも大丈夫!」だなんてことは大間違いである。電子たばこに含まれるニコチンによって、禁煙者が喫煙者に変わってしまう可能性すらあるのだ。
禁煙ブームだからと言って、このように品質管理が徹底されていない業者がある以上、電子たばこを買う際はよく確認することが必要だろう。
以上の詳細データなどは、独立行政法人国民生活センターから消費者庁へ報告され、行政指導が求められている。消費者庁の迅速な対応に期待したい。