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【来賓挨拶・大久保満男日歯会長=要旨】

小沢幹事長がわざわざ寄っていただいて、ご挨拶もさせていただきました。

 10月の初めには党務の要ということで小沢幹事長には私と堤会長と二人で出かけていって、表敬訪問ということであったので最初は15分ぐらいと思っておりましたが、小沢幹事長の方で、せっかく来たのだから、私も聞きたいのできちんとお話をしていってくださいという言葉がございまして、資料をもとに歯科の現状について少し話をさせていただきました。

 私が説明したのは、医療費総額が伸びているにもかかわらず、歯科医療費が伸びていない、その伸びなくなった接点のところ、ちょうど小中学生のう蝕罹患率が90%を切って、どんどんう蝕が減っているという現状で、歯科医療費が伸びなくなる。

 う蝕だけが歯科医療費のすべてではないけれど、しかし口の中の大きな疾病は二つしかないので、そのうちの一つが減っていくというのは、当然、歯科医療費に関係があることだと思うという話をいたしました。

 小沢幹事長は、そのときにいくつか鋭い質問をされましたが、最初の質問は、むし歯は自然に減るのですかというものでした。減りません。これは歯科医師と歯科医師会が長い年月にわたって大変な努力を重ねてきた結果、減っていますと言ったら、それはおかしいとおっしゃった。おかしいというのは、先生方の努力で虫歯が減っているのにもかかわらず、それに反比例して歯科医療費が増えないのはおかしいということです。

 そうしたら、そのあとの小沢幹事長の質問が大変鋭くてびっくりしたのですが、「それではどういうロジックを重ねたら先生方の評価がきちんとされるのか?」というご質問でした。私は、私たちがやってきた努力は一時予防なので、いまの保険は疾病保険ですから一時予防がそのまま診療報酬の中に評価されることはありえない。したがって私たちの無償の努力というものを精神的な評価としていただいて、その分を新たな、たとえば歯を残す医療技術のようなところにきちんと評価をしていただくことを考え方の基準にしていただかなければいけない。いまの診療報酬の制度そのものを変えないという前提ならそれしかありません。それをすることによって健康な高齢者が増えるという結果につながるという話をしました。

 もう一つ、もしロジックを直接つなげるとすれば、それは疾病保険の中に予防という概念を入れることだ。しかしこれは私どもとして簡単に入れてくださいとは申し上げられない。なぜならば、厚生省も含めて予防というのは安上がりな医療だと考えている。たとえば材料を使って30分治療をするのと、同じ30分で患者さんに健康教育をする、知識だけを与えるのとでは、絶対に知識を与える30分のほうが点数が低く、機材を使うほうが高い。これは本当はおかしい。予防というのはものすごく大変なことである。したがって予防を安上がりの医療と考えている限り,私どもは保険の中に入れることについては必ずしも賛成できない。つまりものごとに対する考え方を変えていただかないとだめだというお話もさせていただきました。大変興味を持ってお聞きいただきました。

 それからもう一つは、ドクターからもうもたないと言われて車椅子で生活をしている高齢者がいて、そこで歯科医師が、在宅で義歯を入れて噛めるようにしたら、一カ月後に腰が曲がって歩けるようになった。そして二カ月後には腰が伸びて、三カ月後には庭仕事をするようになったという話を写真を手に説明しました。

 これは小沢幹事長の地元の岩手県の国保の診療所で、しかも地元中の地元、ご自分の選挙区、衣川の診療所だったので、それも説明をしたら、大変興味を持たれていました。

 私が最後に申し上げたのですが、歯科医療が大事でなければ医療費が伸びないのはしょうがない。しかし歯科医療がこれだけ人々の生きる力を支えている以上、われわれの歯科医療費が伸びないというのは、完全に国民にきちんとした医療が提供できないということになるという話をさせていただきました。

 今回、中医協の経済実態調査が発表されました。ご承知のように6月の調査です。これを私どものほうで10年間、もちろん調査は2年ごとですから5回ですが、10年間の保険医療費は去年の20年までの9年で毎年マイナスで、このマイナスの総数がマイナス19.3%です。21年は20年度改定の結果として、保険医療費の収益ですが4.4%増えました。しかし、その前9年間はマイナス19.3ですから、プラス4.4を差し引いても14.9、約15%ぐらいのマイナスなわけです。これはやはり、基本的には患者さんに安定した、しかも質の高い歯科医療を提供できる体制はもう完全に崩れているということだと考えています。これは昨日、青木副幹事長にはご説明をいたしました。

 したがって、私どもは、とにかく歯科医療の評価というものをもう一度きちんとしていただくことが大事で、実は社会保障制度審議会の中で、いままでは医療保険部に渡辺日歯常務、医療部会に近藤日歯副会長がそれぞれ出ておりますが、それぞれの部会の中で、歯科側の委員以外の方から歯科医療が大事という話がかなりの頻度で出てまいりました。


2009.12.15 提供:日歯連盟広報