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山梨県は6日、県立あけぼの医療福祉センター(同県韮崎市、佐藤英貴所長)で5日、全身麻酔で虫歯の治療を受けていた同県甲斐市の女児(9)が心停止状態となり、約6時間後に死亡したと発表した。 死因は急性心不全で韮崎署が司法解剖を行い、詳しく調べている。 同センターによると、治療は、5日午前10時15分に全身麻酔を施された後、同50分から始まった。午後2時ごろ、突然、女児の容体が急変、心停止状態になった。一時、心拍が再開し、甲府市内の病院に搬送されたが、同7時50分過ぎに死亡が確認された。 治療は、県歯科医師会から派遣された男性歯科医、麻酔科の女性医師ら7人が行った。女児は重度の知的障害を持ち、手術中に動いてけがをする恐れがあったため、全身麻酔を施したという。同センターは「適切な方法で治療は終盤まで順調に行われていた。どうしてこうなったか全くわからない」としている。 ■診療台で失神 同病院では平成13年、歯科麻酔専門医による専門外来「リラックス歯科治療外来」を設けた。治療は、問診やレントゲン撮影を行ってから、治療計画を立てるところから始まる。治療期間や治療部位などを踏まえたうえ、主に恐怖心や嫌悪感が強い患者には、静脈に点滴をして、ウトウトとした状態で治療をする「静脈内鎮静法」で対応する。 「例えば、口を開けてもらうときにだけ意識レベルを上げるなど、(点滴の量などで)比較的自由に(患者の意識を)コントロールできます」と福田さん。口の中に手をいれただけでむせかえってしまう「おう吐反射」を示す人など、より強い拒否反応を示す患者には全身麻酔で対応している。 歯科麻酔医と歯科医がタッグを組んで治療に当たる医院もあれば、「リラックス歯科治療外来」のように両方を1人が兼ねるケースもある。 全身麻酔の場合でも治療後、1時間半程度で麻酔は切れる。「その日のうちに帰宅し、お酒を飲むことも可能」(福田さん)という。費用は健康保険が適用されるケースもあり、1回数千円ですむこともある。 歯科麻酔科はもともと、障害者ら長時間じっとしていられない患者を対象としていたが、「治療する際の(患者の)ストレスに注目が集まるようになってきた」と、歯科ジャーナリストの秋元秀俊さんは広がりの背景を説明する。 欧米では親知らずを抜く際、全身麻酔や静脈内鎮静法が一般化しているともいわれる。「日本は野蛮だなどという声もある」(都内歯科医)といい、日本人の“我慢強さ”に頼ってきた面もある。そんな状況から、これまで「恐怖症」の実態を歯科医ですら認識し切れていなかったという。 東京歯科大学の福田さんは「『怖くて30年以上歯医者に行けなかった』という方など、恐怖心を抱いている人の多さに驚いた」と目を丸くする。恐怖症患者の実態は患者数の増加が表し、リラックス歯科治療外来は開設以来、患者数は増え続け、2年間で倍増したという。 ■リストを公開 学会は今年6月から、専門医のいる医療機関名や医師名をインターネットのサイト上で公開している(http://wwwsoc.nii.ac.jp/jdsa/index.html)。麻酔に対する不安や警戒心があるのは確か。学会では「安全で安心の歯科医療を求める声は多い。多くの患者さんに(サイトを)利用してもらいたい」と呼びかけている。
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2007.7.6 読売新聞 YOMIURI ONLINE |