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2011年日本歯科医学会の展望:
注目集める学会と共通する特徴と傾向

 日本歯科医学会には専門学会(21学会)と認定分科会(18学会)があるが、時代の趨勢に伴い各学会の勢いが、ここ数年の傾向から明確になってきている。歯科界からも注目・関心の高い学会が、以前とは変化してきており、学会会員・開業医の時代意識の変化の表れでもある。歯科医療を支える学会は、補綴、保存、歯周病、口腔外科、矯正歯科等の分野が主流を占めている中、昨今は、補綴と保存への勢いが見られなくなってきている傾向が顕著になっている。もちろん、補綴は、依然として治療の過半数(診療行為別)を占めるが、「演題が面白くない」「テーマがマンネリになっている」「自己満足の発表が多い」「学位のための発表に辟易」等々、開業医の評価は厳しい。さらに、意見の中には、「早晩、保存学はなくなるか、どこかの講座に取り込まれます。米国では既にその兆候が出ていますから」(元大学歯学部助教授・保存学)とした、現在の保存学の趨勢を見据えた意見もあった。その一方で、歯科医学会の主流であった学会以外に、近年は、かつてはマイナーとされていたものがクローズアップされ、今後に向け大きな期待を集めるようになった学会もある。注目される学会を中心に一部内容を報告する。

 現在、最も注目されているのが、会員数が1万人を超えた日本口腔インプラント学会(川添孝彬・理事長)。歯科疾病の変化、新しい治療方法の定着(エビデンスの確立)という時代背景が反映しており、その勢いは止まる様子がないが、その一方で、昨年、豊橋で起きた"インプラント使い回し事件"を含め、金銭・治療トラブルなどが増加することなどを挙げ、今後に不安視をする声が増えているもの事実で、春日井昌平・東医歯大歯学部大学院教授は「年間60万本のインプラントが埋入されているが、本学でも約70本程度抜去している。その原因とされるインプラント周囲炎への対応がクローズアップされている」と指摘し、注意を促している。こうした社会背景を踏まえ、学会としても安全性、感染症を含めた対応・対策に万全を尽している。

 日本老年歯科医学会(森戸光彦・理事長)、日本有病者歯科医療学会(白川正順・理事長)、日本摂食嚥下リハビリテーション学会(才藤栄一・理事長)、日本障害者歯科学会(向井美恵理事長)、日本口腔ケア学会(鈴木俊夫・理事長)の学会が、今後の研究活動に期待が高まっている5学会とされている。
 日本老年歯科医学会には、歯科医師、歯科衛生士ほか、医師、看護師、薬剤師、介護福祉士、社会福祉士などの職種のほかに、NPO法人団体などの地域活動グループが学会に参加している。まさに現在、社会から求めている医療連携のモデルと指摘される医療活動がある。同時に、社会性が伴うことで、マスコミの取材対象になることで、話題提供をする可能性を秘めていることになる。また、妻鹿純一・日本障害者歯科学会副理事長は「お蔭様で毎年、200〜300名の新規入会があります。時代が変わったのではないか」とコメントを残している。
 日本摂食嚥下リハビリテーション学会に対しては、ますます、ニーズが高まることが確実視されている介護サービスに牽引されるように、歯科の視点からの介護問題に介入できること、同時に介護職の人たち等への啓発活動ができるとされ関心が高くなっている。同様に、日本口腔ケア学会にも注目が集まり始めている。高齢者・患者の口腔問題に関してそのケアの重要性が医科にも理解・浸透してきており、介護サービスの充実、在宅治療の拡大もあり期待は依然として高い。歯科衛生士の活用の在り方の問う形になり、今後の議論・政策に期待が集まっているようだ。

 一方、毎年開催するものの、発表の内容、演題数において、"学会"と称するには疑問を持たざるを得ないものもあり、今後、ますます厳しい運営を強いられるのは必至。また、研究内容への不満、消化不良など、研究レベルの停滞を指摘される学会もある。某学会の昨年の大会(都内)は、演題8題、特別講演2題、参加者50名。幹部の1人は「厳しいですね、演題が集まりません。特定の人からの発表や質疑応答になってしまうことも課題の一つです。参加者の減少は仕方ないと思いつつ、工夫が必要かもしれません。理事会でも今後の運営について議論が出ると思います」と現実を直視していた。

 「学会には、関心のある研究を聞くために、交通費・参加費を出して参加するのですから、それなりの内容・レベルを維持してほしいです。大学学内や医局で行う発表とは違う、という意識をもってほしい。昨今、海外の学会に参加していく人が増加している理由の一つは、そこにあると思う。時代に合った、社会の要請に応える内容にしないと歯科の貧困の象徴になってしまう。形骸化した学会は解散してもいいのではないか」と厳しい意見を述べる開業医が多くなってきたことは事実である。

奥村 勝 氏
オクネット代表。明治大学政経学部卒業後、一般企業に就職。さらに東京歯科技工専門学校を経て歯科医院、歯科技工所に勤務。さらに日本歯科新聞社編集部記者、雑誌「アポロニア」(日本歯科新聞社)編集長、新聞「Dental Today」(医学情報社)編集長を歴任。

2011.01.06 記事提供:DentWave