義歯の問題が議論される時には必ず指摘されるのが、義歯安定剤の評価である。それは、義歯安定剤のそのものの評価、義歯製作の技術、マーケットとして現状などの観点で様々な議論がされてきている
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かつて、濱田泰三・広島大学大学院教授は、義歯安定剤について論文を発表している。「歯科医師による義歯安定剤との関わり方を端的にいうのなら、“専門家としては、知らないではすませられない”ということに尽きる」としている。さらに「せめて患者よりは詳しい知識が必要である。“使うな”とか“邪悪だ”では、今日は通用しなくなっている」と指摘している。また、次のような見解を示している。
「確かに場合によって義歯がうまく作れないこともある。受療の条件が悪かった場合、あるいは術者の技術が不足していた場合などの原因はあるが、結果としてうまくできなかったものを患者が独自に、隙間を埋め合わせて何とか使用したいという気持ちから義歯安定剤を使用しているのである。
このようなことが歯科医師を信頼しない行為として捉えられ、長く義歯安定剤に否定的であり、偏見を生んできたのである。しかしながら、実際に文献を調べていくと、義歯安定剤の利用を否定するような論文の方が少ないのである。さらに否定するエビデンスもほとんどなく、否定の根拠は非常に乏しいと言わざるを得ない」。
こうした現状を踏まえて、グラクソ・スミスクライン鰍フ福田千恵氏は「社会の高齢化に伴い、市場の伸びが著しく、多くの義歯使用者に愛されている。当社としても、理想は歯科医師の指導のもと使用されることです。
あくまで、一時的に安定させるものであり、この点を説明する必要はあります。義歯安定剤は、一時誤解されていたことがありますが、ユーザーの方にそれなりに浸透しているのも事実です」としながら、「現在は売上げに占めるタイプ別のシェアは、クリームタイプ:53%、クッションタイプ:39%、シートタイプ:5%、パウダータイプ:3%です。市場はまだまだ拡大するという見通しをもっています」と今後への意欲を示している
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