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インプラント死亡裁判:東京地裁「鑑定申請を却下 
原告・被告に和解勧告へ

1月26日、東京地方裁判所(民事14)で、2007年5月に書類送検、昨年、在宅起訴されていた、被告:昇高会・「飯野歯科」(当時理事長飯野久之)、インプラント治療を受けた死亡された会社経営の女性(当時70歳)の家族(吉田深雪)が原告とした公判が行われ、裁判長は、和解勧告することを示した。

公判は準備書面を確認した中で開かれたが、冒頭、原告が「治療内容」についての鑑定申請をしたが、裁判長はこれを却下。裁判長は、「2月上旬に原告・被告に和解案を勧告・提示したい。提示案を受け入れられない場合には、その後に判決を出したい」と述べ、審理を終えた。

そもそもこの医療事故の今日までの経緯は以下通りである。2007年5月、インプラントの手術で女性の下顎の骨をドリルで削る際、誤って動脈を傷付けて大量出血を起こし、出血が激しくなったが、ガーゼで止血するだけで手術を続行。女性は出血や口の中の腫れで息ができなくなった。同月23日に窒息による低酸素脳症などで死亡させた疑いで、警視庁捜査1課は、業務上過失致死の疑いで執刀医の飯野久之院長(67歳)を書類送検し、昨年、在宅起訴されていた。捜査1課によると、院長は「そこに動脈があるとは認識していなかったが、治療技術にはミスはなかった」と容疑を否認している。しかし、被告飯野歯科医師は事故後は、女性の遺族らに対し、手術の際、持病などにより体調不良だったと説明した上で、手術ミスを認めていたという。遺族らはその後、約1億9000万円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こしていた。

こうした中で、独立行政法人国民生活センターが昨年12月、「歯科インプラント治療に係るー身体的トラブル中心に」としたタイトルで公表しているが、同センターでは、「今回の公表について、特別な意図はありません。内容を読んでいただければわかりますが、全国的にインプラント治療についての相談が増加傾向にあること。ついては、関係団体等にこの事実について理解してほしいということ」と述べていた。

また、NHKクローズアップ現在でも、インプラント治療のトラブルを取り上げ、独立行政法人国民生活センターの公表内容の一部「2006年度から5年間に2000件以上の相談が寄せられと発表した。このうち、インプラント治療で被害を受けたトラブル相談は343件に達し、内容は歯や口腔の痛み、腫れ、しびれや、痛みが取れず夜眠れない、食べ物を噛めず体調を崩したなどと様々だ」を紹介した。同時に、NHKのアンケート調査も次のように報告した。「歯学部のある27の大学病院を対象にアンケート調査した結果、インプラント治療後の不具合を訴えていた患者が、この2年半で2700人以上にのぼっていることが分かった。背景として大学病院が挙げた理由は、"最初に治療した歯科医院での知識、技量不足"が86%、"難しいケースにもかかわらず無理な治療を行った"が76%にのぼっている」。こうした報道を含めて、インプラント事故・裁判の結果とともに、今後のインプラント治療の提供への環境整備が問われていることを受け、関係者・関係団体が対応に動き始めている。

【書類送検】検察官送致の一種で、被疑者の逮捕・勾留の必要がない事件や、被疑者が送検以前に死亡した事件、公訴時効が成立した事件の被疑者が判明した場合などで行われる。一般に、司法警察員が被疑者を逮捕しない場合の送致を書類送致(書類送検)、逮捕した場合の送致を身柄付送致(身柄送検)という。

【在宅起訴】送致を受けた検察官は、裁判所に起訴するか否かを決定する(公訴の提起、同法247条)。この時点で起訴しないと決定すると不起訴処分となる(同法248条)。刑事訴訟法の被告人が刑事施設に勾留(未決拘禁)されていない状態で起訴がなされることを言う。略式手続や、被告人が勾留されないまま公訴を提起された場合などに在宅起訴となる。

取材; 奥村 勝 氏 

2012年2月5日