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ラクトフェリン臨床応用の可能性について

秦野伊勢原 北村政昭


昨今、ライオン株式会社や森永乳業株式会社などでラクトフェリンがサプリメントとして食品添加物として、多種多様な効能を謳い販売され、メジャーなものになってきた。9月4日に昭和大学旗の台校舎で開催された臨床ラクトフェリンシンポジウムに出席した際の興味ある知見を、今回紹介したいと考えた。

ラクトフェリン(LF) とは、原田悦守(鳥取大学名誉教授・酪農学園大学客員教授)先生によると、1939年に赤いタンパクとして発見されたトランスフェリンファミリーに属する鉄結合性の塩基性糖タンパク質(Mwt.80Kd.N-lobeとC-lobe.689のアミノ酸残基)であり、多くの哺乳動物のミルク(ヒ卜の初乳:5-7mg、常乳:1-3mg/ml) 、涙液、唾液、膵液、胆汁などの外分泌液、並びに好中球にも含まれている。LFは乳幼児のみならず、成人においても多様な生理学的な機能を持っており、静菌、殺菌、免疫増強、抗炎症、骨成長、抗酸化ストレス、抗ウィルス、抗がん作用などが報告されているとの事であった。

また、2005年にハワイで開催された国際LF会議では、LFの新たな作用として骨の成長、歯周病、ドライマウス、シェーグレン症候群におけるドライアイなどの改善効果が報告され、国際的にも活発に研究が進められている。獣医臨床分野ではネコの口内炎などの炎症を和らげる効果も報告されている(岩手大学 佐藤教授)。高分子タンパク質のLFを服用したとき、いかに胃消化を少なくし、効率よく腸まで届けることが出来るか、腸溶製剤の開発も進められている(23. NRL ファーマ)。最近開発されたLFの腸溶性顆粒は、LF粉末に比べて10数倍も体内への取り込みが増強されることが明らかとなった。ミルク由来で安心して利用でき、優れた機能を持つLFは、ストレス過多・高齢化社会において極めて重要な課題とされているメタボリックシンドローム、生活習慣病の予防・改善にも貢献できる機能性食品素材として、ひいては医薬品としての可能性を秘めており、これら観点からの発展が期待されるとの事であった。

また、清水友先生(千葉県開業・千葉県歯科医師会理事・昭和大学兼任講師)により歯科臨床において厄介な疾患である舌痛症にラク卜フェリン(LF)を応用して症状の軽減を認めた報告があった。報告内容は、豪州マレーゴルバン社が牛乳から抽出・精製した高純度品のLFを使用した。直径8mm、厚さ1mmの平らな円盤状のLF徐放性素錠(ラクパッチ、LF 30mg/tablet) を舌の疼痛部位に直接貼付することによって症状の緩和が図れるか検討した。

ラクトフェリン
ラクトフェリンカプセル(左)と貼付錠(右) :カプセルには100mg貼付錠には30mgのラクトフェリンが含まれている。

このラクパッチには粘膜への接着を容易にするため、糊剤のぺクチンを混入してある。他の医療機関で症状の軽減が認められなかった舌痛症の患者4人(63-69歳、男1人、女3人)に口頭で治験の説明をして内容を十分理解して頂いた後、同意を得て今回の治験を実施した。

ラクパッチは1-2回/日、舌の疼痛箇所に1- 3枚を直接貼付し、そのうち二人にはラクパッチの局所貼付に加え、内服用として腸溶性LFカプセル剤(ラク卜フェリンD)、100mg/capsule)も毎食後1cp(LF300mg/day)服用していただき、主として疼痛の経時的変化を検討した。

疼痛の測定はVAS (Visual analogue scale)を用いた。結果として1.舌痛症患者には弄舌癖や噛み締め傾向が認められた 2.舌痛症患者には几帳面な性格の人が多かった 3.初め他科を受診、歯牙や補綴物を原因と指摘されたケースが多かった 4.ラクパッチはいずれの症例でも症状の軽快を認めた 5.ラクパッチの貼付は1-2枚/日で効果があり、就寝前の貼付が有効であった 6.いずれのケースでも1-2週間位で症状の軽快を認めた 7.腸溶性ラクトフェリンとの併用が有効であった 8.いずれのケースでも副作用等の不快症状は認められなかった。

以上がシンポジウム内容の一部である。さらに興味がある会員の先生は詳細を臨床ラクトフェリン研究会のURL:HTTP://www.clinical-lactoferrin.com/で確認されたい。


2012年5月29日