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メカニズムで理解すると、歯周病は全身疾患に

東京医科歯科大学大学院 教授 和泉雄一 先生(歯周病学分野)
『メカニズムで理解すると、歯周病は全身疾患に』

予防・メンテナンスに関してどのようにお考えですか。

私は歯周病科ですから歯周病の予防についてですが、早期発見・早期治療が何よりも大切です。早く見つければ、それだけ簡単に直りますし、それこそ費用もかかりません。歯周治療後もメインテナンスをしっかり行い、歯周病の再発を早期に発見することが重要だと考えています。

早期発見・早期治療の為には何が必要でしょうか。

一般的な歯周病の症状がありますよね。Silent disease としての歯周病です。それをもっともっと宣伝する必要があると思います。出血、排膿などの症状をよく理解して頂いて、例えば歯ブラシを使った時に出血をしたら、すぐ歯科に行くといった意識が生まれると良いかなと思います。

歯周治療に関して、どのような事に気をつける必要があるとお考えですか。

衛生士さんに任せすぎるという事がないように気をつける必要があると思います。最初と最後は必ず歯科医師が診るように、それだけはやりたいですよね。その間の、口腔内清掃とかスケーリング、そういった点は衛生士さんにお願いして、最初と最後だけは自分でしっかり診る。また、診られるような知識と技術は絶対に必要ですよね。

初期のペリオの方がいらっしゃった際、そこから先に進行させない為に、どのような指導をされていますか?

もちろん、口腔内の清掃を行い細菌の管理を行う事から始まりますが、患者さんへの説明も同様に重要視しています。口腔と全身との関係、それをきちんとお話しする。そういう時間を持つ事が大切です。だいたい今、ひとりの患者さんに20分から30分程度担当するのですが、そのうちの15分くらいお話ししています。

患者さんとのコミュニケーションに多くの時間を割いているのですね。

大学としてそういう事ができるという環境があるからかもしれません。ただ、こういったコミュニケーションに関しては衛生士さんの方が上手なこともあります。

口腔と全身との関係というのは説明が難しいと思うのですが、どのような形でお話しされていますか?

メカニズムからお話するようにしています。メカニズムはつながっていますよね。表面的な話だけで、口と全身をつなげようとすると、つながらないです。口は全身の一部なのですが、なぜ狭心症のリスクが高まるのか、とか、早産、低体重児出産だったら、なぜ子宮まで口の中の影響があるのかとか、それを上手くつなげようとなったらメカニズムでつなげれば絶対につながりますよね。その為には、じゃあ口腔内で炎症がおきて、その炎症がどのような形で臓器まで影響するのかっていうところを簡単にお話しします。それをするには、歯科医師自体も知識を得る必要がありますね。

確かに電顕で見ると歯周ポケットの歯肉壁に潰瘍面があります。そこからどんどん菌が中に入っていって、血管の中に入ってそれが全身に回ると言うことに関して、どれくらい全身に影響があるのかと行った事ははっきりとは申し上げられません。ただ、菌血症という症状はあります。歯科の治療を行ったあとには菌血症ってありますよね。菌が予想以上に入り込んでいることは入り込んでいる。通常の場合、身体の方は菌をブロックしますから、15分くらいで殺菌ができるのですが、それが出来ない場合がある。

全身疾患の話ですと、肥満との関係も重要です。脂肪細胞が炎症性の物質を出します。それが全部血行を介して口腔内に回って来る。結局炎症がある時と同じ状態になってしまう。歯周病から肥満になるかと言ったら、そちらはまだ分からないのですが、「歯周病を、肥満の人は悪化させる」、この矢印はよく分かります。糖尿病の場合にはこんどは逆です。糖尿病の局所での免疫機能の低下がありますから、感染症である歯周病がどんどん進んでしまう。さらにそこで炎症が起こる。炎症性のサイトカインが出て来る。サイトカインが今度はインスリンの抵抗性を上昇させてしまう。それがグルグル回っている。最近ではよく言われておりますが、研究が進んできております。

全身疾患との関わりについてご説明した上で、患者さんへどのように日々のブラッシング、メンテナンスを指導して行けば良いでしょうか。

だんだん年齢の高い患者さんのメンテナンスが増えてきます。そうするとやはりしっかり自分で磨けない方が増えてきます。細かい動きが出来ないとか。それで、そういう方はやはり電動歯ブラシを使ってやっていくと、歯ブラシが動いてくれますから、磨けてきます。男性で手用歯ブラシを使っても結局、ガーって磨いたりね、そういう方がいらっしゃるのですが、そういう方に電動歯ブラシを薦める。そうすると、まったく口腔内のケアに関心なかった人も電動歯ブラシ薦めたら面白がってしっかり磨いたりする。元々はあまり重要視していなかったのですが、本当の話ですけど最近電動歯ブラシ薦めています。

最近は電動歯ブラシへの関心も高くなっており、患者様からの質問が増えていると聞きます。電動歯ブラシの利点を先生はどうお考えですか?

私ども歯科医療従事者は「時間をかけてしっかり磨いてください」とお伝えしますが、患者さん皆さんがそこまで時間かけているわけではないですよね。早く、簡単にできるのであれば、それにこした事は無い。あとは考えることなく1本ずつ磨いていけばよい。洗面所でやらないと歯磨材がこぼれてしまうのが難点ですが(笑)

(インタビュアー:DW編集部 今泉)


2012年6月9日