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幹細胞移植せずに骨再生 名大、培養液を利用

 骨髄などから採取される幹細胞そのものではなく、細胞の培養液を使って骨を再生させることに、名古屋大大学院医学系研究科の上田実(うえだ・みのる)教授(頭頸部(けいぶ)・感覚器外科学)らの研究チームがラットの実験で、世界で初めて成功、1日に米専門誌に発表した。

 チームは既に人間への臨床研究を開始。幹細胞を移植する従来の方法は細胞の腫瘍化などのリスクがあるが、上田教授は「この方法で安全性が大幅に向上する。将来的には培養液の製剤化も期待できる」と説明している。

 研究チームは、幹細胞を培養する際の培養液に「サイトカイン」と呼ばれる、細胞増殖や細胞死などの調整をするタンパク質が何種類か含まれているのに注目した。

 この培養液をコラーゲンスポンジに染み込ませ、頭蓋骨の一部分を欠損させたラットに移植して観察。4週間後を比較すると、何もしなかったラットでは20%程度しか骨が再生しなかったのに、移植したラットは90%以上再生されたという。

 またラットの頭蓋骨に移植した後に、尾の静脈に色をつけた骨髄の幹細胞を投与すると、幹細胞は頭蓋骨の移植部分に多く集まることが判明。上田教授は「培養液が細胞を寄せる効果がある」と話した。

※米専門誌は「ティッシュ・エンジニアリング」

2012年7月2日 提供:共同通信社