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セファム短期投与の効果は?

小児の溶連菌咽頭炎、再発患者にセフェム5日投与は不十分
経過観察中に再発した患者数に差

過去に少なくとも1度、A群β溶血性レンサ球菌(Group A β-hemolytic streptococcus:以下、溶連菌)感染による、咽頭炎の診断を受けたことがある患者(再発患者)には、セファロスポリン系抗菌薬の5日投与では不十分である可能性が示された。東栄病院(札幌市東区)副院長で小児科医長の菊田英明氏が、北海道内64施設の協力の下、2006年5月から07年8月にかけて行った多施設共同試験の結果によるものだ。

溶連菌による咽頭炎治療は、教科書的にはペニシリン系抗菌薬の10日投与とされており、この処方には数十年の歴史がある。しかし、2004年ごろから米国でセファロスポリン系の方がペニシリン系よりも効果が高いという報告が相次いだ。そうした報告を受け、国内でも複数のグループが検証を進め、最近になって結果が発表されはじめ、ペニシリン系10日投与ではなくセファロスポリン系5日を投与する医師が多くなってきている。その中で菊田氏らは、再発患者に限定した場合でも、セファロスポリン系抗菌薬が有効かどうかを検証するために共同試験を行った。

処方日数
図1 処方日数により、経過観察中の再発例や
除菌失敗例に差が生じた(菊田氏らによる)

試験は、再発患者に対してセファロスポリン系抗菌薬(セフジトレンピボキシル:9mg/kg、Max300mg、分3)を5日投与した群(77人)と、同10日投与した群(149人)に分け、その効果を比較。抗菌薬投与による除菌の確認は、服用から21日目に行った。

まず、21日後の細菌検査では、5日投与群で7人(約9.1%)、10日投与群で17人(約11.4%)について除菌ができておらず、両群の間には有意差は見られなかった。しかし、21日の経過観察中に再び咽頭炎を発症した患者数をみると、5日投与群で7人(約9.1%)、10日投与群で1人(約0.7%)と、有意差があった。また試験結果の解析から、咽頭炎の好発年齢が5〜8歳であり、前回発症からの期間が短いと除菌に失敗しやすいことも分かったという。発症から1カ月以内の咽頭炎再発は、抗菌薬による除菌が不完全で、その患者が保有していた菌により再発する例(再燃)が多かった。一方、1カ月以上経過していれば、他人からうつされた例(再感染)がほとんどだという。

「再発患者については、セファロスポリン系の5日投与では、不十分な可能性がある。私は、セファロスポリン系を10日投与している」と菊田氏は話す。そして、日常診療においては、「治療前に、患児がここ数年で、溶連菌咽頭炎と診断されたことがあるかどうかを把握しておく必要がある。『過去に発症したことがある』のか、『今回、初めて発症した』のかを問診でしっかりと確認することが重要だ」と菊田氏は指摘する。

この話題のほか、ペニシリン系とセファロスポリン系の短期投与の効果に差があるかどうかを調べた試験や、その他の溶連菌治療をめぐる最近の話題について、『日経メディカル』最新号(2008年4月10日発行)でまとめたのでご一読ください。
吉村 馨太


2008.4.2 記事提供 日経メディカルオンライン