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8020フォーラム:"う蝕・歯周病"予防への
課題&期待を巡り活発な議論展開

公益財団法人8020

公益財団法人8020推進財団が主催する第11回「8020フォーラム」が10月19日、歯科医師会館で開かれた。「国民の歯とお口の健康」をテーマに、6名の専門家からそれぞれの立場からの講演。さらにそれらの講演を受けてシンポジウムが行なわれた。

まず、神原正樹・大歯大教授は、"日本人の歯の健康状態"、"う蝕に関する世界の動向"、"カリエスフリー社会"などを解説。う蝕治療・予防の世界の潮流、新しい概念、具体的な政策目標にも言及した。特に、日本口腔衛生学会理事長も務める立場から、う蝕のない社会を迎える時代になった現在、歯科界全体で検討すべき項目として、「国民皆保険制度の予防導入と内容の整合性」「予測性のある歯科医療」「エビデンスの蓄積」「疾患検出の診査から、健全を見る診査への転換」「Public と歯科診療所との連携」などを挙げ問題提起した。

今後の展望について、「カリエスフリーは"8020"運動に通じるもので、カリエスフリーからペリオフリーへと進展していくものであり、FDI(国際歯科連盟)でも、GCI(Global Cries Initiative)から、GOHI(Global
Oral Health Initiative)を視野にGlobal Oral Health Improvement Matrixの概念も提示した」とし、日本でもこの傾向を踏まえてVisionを作りが必要と強調した。

続く小林清吾・日大客員教授は、フッ化物応用研究・疫学調査の第一人者として、現状認識を示した。「多くの疫学調査から、今日の我国においても歯の喪失の主因はう蝕と歯周病となっている。またう蝕とその治療経緯が歯周病の温床になっている症例が多いことから、より高いレベルの口腔保健度実現のためには、健全な歯質と歯列・咬合の保持が土台である。歯周病予防やプラークコントロールの第一歩にも、う蝕予防が必ず含まれるべきものと考え、う蝕予防対策として適正なフッ化物利用の意義を疑う余地はない」と指摘した。

さらに、フッ化物利用方法の基本であるWF(ウォーターフロリデーション)について、「2004年、元米国公衆衛生長官のリトャード・カルナモ氏が3つの利点を挙げている。@すべての地域住民が水道水、あるいはその水で調理した飲食物を摂るだけで、恩恵に浴する方法、Aう蝕に関する健康格差を取り除く強力な方策であること、B小児から成人まで、そして生涯を通した口腔保健の向上に繋がる単一で最も効果的な公衆衛生手段である。今日、WFは世界54カ国(うち調整27国)、約4億4千万に普及拡大している。我国において、日本歯科医師会、日本歯科医学会、日本口腔衛生学会、厚生労働科学研究班など専門機関が繰り返し、フッ化物利用推奨を公表してきている」と改めて訴ったえた。

一方、花田信弘・鶴見大歯学部探索歯学講座教授は、定期歯科検診と歯周病予防に関連して唾液検査について述べた。「歯周病は咀嚼咬合系を破格するが、さらに口臭や歯原性菌血症の原因になっている。歯周病を予防するためには初期の症状を的確に速やかに改善することか望ましい。初期症状とは具体的には出血である。8020推進財団の報告書にある、唾液ヘモグロビン検査の人数分布から、2.0μg/mL以上の唾液ヘモグロビン量が認められたものは歯と全身との健康が脅かされていると考えられている」と強調し、その必要性を述べた。

続く吉江弘正・新潟大学大学院教授(前日本歯周病学会理事長)は、「歯周病予防のための検査」をテーマにその期待と課題を示した。「現在の保険制度での歯周病の検査項目は、歯周ポケット測定、プロービング時の出血、プラーク付着状況、X線画像が主体であり、多くの結果として現状の病態診断である」と指摘した上で、「歯周治療を行なうためには、必要な項目であるが、残念ながら予防の観点からの原因検査・診断がないのが実情」と指摘した。細菌・抗体価検査にも言及。SPT期の細菌:P.gingivalisの歯周病の進行予知判定のための臨床研究の結果、進行予知が可能になったことを明らかにし、「細菌・抗体価検査のさらなる普及、保険診療への導入への可能性が確認できた」と今後へ期待をにじませた。

そのほか、「歯科口腔保健法の推進に関する法律について」小椋正之・厚労省医政局歯科口腔保健推進室長、「県条例に対する具体的取り組みをどう考えるか」三木昭代・埼玉県歯科医師会理事・地域保健部副部長が話した。


2013年10月22日 提供:奥村 勝 氏