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東歯周病は糖尿病と深い関連 心筋梗塞、脳梗塞になる危険性も

歯周病は糖尿病と深い関連 心筋梗塞、脳梗塞になる危険性も

 50歳代以上の約8割がかかっているとされる歯周病。身近な感染症だが、最近の研究で歯ぐきへの影響だけではなく、糖尿病や心筋梗塞(こうそく)、脳梗塞など、生活習慣病とも関連が深いことが分かってきた。歯周病を治すことで、生活習慣病の治療がスムーズになることもあるという。

 歯周病は、歯と歯肉の境目のプラーク(歯垢(しこう))にすみついた細菌が歯肉に炎症を引き起こし、やがて、歯を支えている骨(歯槽骨)が溶けていく病気だ。

 ●血管に菌が入って

 北海道大病院歯科の菅谷勉准教授(54)によると、口の中には約300〜500種類の細菌が存在する。そのうち歯周病の原因菌は弱毒性も含め約10種類。「プラーク1ミリグラム中の細菌数は1億〜2億個と大便と同じレベル。ある研究によると、深さ5ミリの歯周ポケット(歯と歯茎の間の隙間(すきま))が28本の歯全部にあると、総面積は手のひらほどの72平方センチになる。皮がむけた手のひらに大便を塗っているような無防備な状態だ」と指摘する。

 これらの菌は、歯周病だけにかかわっているのではない。はれた歯肉などから血管に入ると動脈硬化を促進する。その結果、心筋梗塞や脳梗塞が起きることがある。さらに関連が深いとされるのが糖尿病だ。血管に歯周病の原因菌が入ることがきっかけとなり、血糖値をコントロールするインスリンの働きを悪くする物質が白血球から作られる。インスリンが働きにくくなれば、正常な血糖値を維持することは難しい。

 歯周病患者はそうではない人に比べて、糖尿病になる危険性が1・7〜4・6倍、心筋梗塞など心臓の冠動脈疾患の危険性が1・5〜2・7倍高い。また、喫煙者は非喫煙者より2〜10倍も歯周病になりやすい。

 菅谷准教授によると、同程度の歯周病の場合、糖尿病の人はそうではない人よりも治りにくい。同病院では、歯周病の治療を始めて1〜2カ月たっても効果が出ない場合、内科の受診を勧めることがある。

 ●内科と並行治療を

 札幌市の50歳代女性は、空腹時の血糖値が1デシリットルあたり400ミリグラム(同126ミリグラム以上が糖尿病の可能性)あり、すぐに入院することになった。菅谷准教授は「歯周病を治療して糖尿病が治るわけではないが、歯周病が軽くなれば、血糖値もコントロールしやすくなる。並行して治療するのが良い」と話す。

 30年以上前から糖尿病の治療を受ける同市の女性(64)は数年前、歯周病の手術を受けた。歯周病は治ったが、糖尿病はインスリン製剤を打ちながら治療を続ける。「二つの病気の関係を、もっと早く知りたかった。『歯周病で命を落とすことはない』と思う人が多いかもしれないが、侮らないでほしい」と話す。

 菅谷准教授によると、歯の間の歯肉を軽く押し、出血する場合は歯周病の可能性がある。黄色っぽい膿(うみ)が出れば重症だ。歯周病はほかにも、誤嚥(ごえん)性肺炎、骨粗しょう症などを悪化させたり、低体重児出産や早産を引き起こしたりする。菅谷准教授は「歯周病予防は歯をきちんと磨き、菌をためないことに尽きる」と呼びかける。【平野美紀】

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 ◇歯周病と関わりの深い主な病気

生活習慣病

 心筋梗塞(こうそく)/脳梗塞/糖尿病

妊娠

 妊娠性歯肉炎/低体重児出産/早産

その他

 誤嚥(ごえん)性肺炎/骨粗しょう症/関節炎/糸球体腎炎

 *日本臨床歯周病学会のホームページを基に作成

2014年3月20日 提供:毎日新聞社