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治療が必要な歯周病の割合は

治療が必要な歯周病の割合は
東京医科歯科大学 2013年研修医セミナー
第22週「歯周病と全身の健康との関わり」

全身の健康状態に害を与える、歯周病。
世界的にも重要疾患として注目を集めている。
歯周病の病態から、治療対象となる歯周病について学ぶ。
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科歯周病学分野教授の和泉雄一氏が解説。
まとめ:酒井夏子(m3.com編集部)

■全身の健康状態をおびやかす「歯周病」

講師は、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科歯周病学分野教授の和泉雄一氏
司会 本日は歯学部の和泉先生に「歯周病と全身の健康との関わり」について話していただきます。普段、歯の視点から見ることが少ないので非常に勉強になると思います。和泉先生、よろしくお願いします。

和泉 よろしくお願いします。今日は、医科と歯科の研修医の先生が出席されるので、共通のテーマとして「歯周病と全身の健康との関わり」を選んできました。はじめに歯周病についてお話します。さらに今回は、糖尿病と循環器疾患との関わりについて話したいと思います。

まずは症例の写真を見てみましょう。

52歳 女性 口の機能

52歳の女性で前歯は欠損していますが、そこにインプラントを入れて前歯を作ったところです。きちんと治療を行いますと、このように健康な口元に戻ります。口の機能を考えてみると、咀嚼や嚥下、味覚、唾液、構音、顔貌の6つの機能があります。こう見ると口の機能とは日常生活そのものということが分かるのではないでしょうか。

これは、口腔の機能と全身の健康状態との関係を図示したものです。

口腔の機能と全身の健康との関係

口腔の健康は外傷、う蝕、歯周病が脅かしており、歯の損失や機能を失うことがあります。この歯を失う、咀嚼機能の低下は、ストレス経路や高次脳経路で全身の健康状態に対して多大なリスクを与えます。また不規則な食生活にもつながりますので、栄養経路からのリスクもあります。一方、歯周病は、細菌・炎症経路からこの全身の健康状態に害を与えますので、非常にリスクの高い疾患だと考えられています。

■歯周病を取り巻く世界の動き  

WHOは、癌や循環器疾患、糖尿病、COPD、慢性閉塞性肺疾患の4つを取り上げ、これをNoncommunicable Diseases(非伝染性疾患)と定義しています。COPDを中心としたNoncommunicable Diseases、NCDsは、現在、世界的にも死因の約60%を占めていると言われており、今後10年間でさらに77%にまで増加するとの予測されています。WHOはこうした疾患を予防するために、「非伝染性疾病への予防と管理に関するグローバル戦略」を2013年まで策定し、禁煙や健康な食事、身体活動の増加、飲酒の減少をしっかり守り、予防していくことを提唱しています。

Non-communicable Diseases : NCDs

国際歯科連盟(FDI)は、この4つの疾患に口腔の疾患を加えることを昨年提唱しました。口腔疾患を加えると同時に、歯周病をリスクファクターとして加えることも提案しています。今後、NCDsの予防管理に、口腔疾患の予防管理が非常に重要視されていくと考えられています。

NCDs 5つの疾患と5つのリスクファクター

■「痛みがない」が歯周病の問題

それでは本題の歯周病について見ていきましょう。

歯周病の主な症状

歯科の研修医の先生はすでにお分かりのように、主な症状は、歯肉が腫れて血や膿が出るが痛くない、口臭がする、歯がやせて歯が長くなったように見える、歯が動く、物がはさまりやすい、口の中がいつもねばついた感じがする、冷たい水や温かい水を口にふくむとしみる、歯が浮いて物がかめない、というような症状が出てくるわけです。この中で特に痛くないというのがポイントです。炎症がありながら痛くない。そのため放置されてしまうという訳です。

歯周病の進行

これは健康な状態から歯周病への進行を示したものです。健康な状態の口は、歯肉がピンク色をしていますね。ピンク色をして、しっかりしているのが分かるかと思います。それが歯肉炎になると、歯肉辺縁に炎症を認めます。ただ、この段階では歯を支えている骨(歯槽骨)は吸収されていません。これが歯周炎になると、歯を支える歯槽骨の吸収がどんどん進むことになります。進行度によって軽度、中等度、重度と分けることができ、ほとんど表面的に炎症がないのにもかかわらず、だんだん歯槽骨が吸収されていきます。これが歯周炎です。

歯周病と一言で言っても、歯肉炎と歯周炎に分けることができます。日本だけでなく、世界的においても歯を失う原因は歯周病と言われていますので、医科の先生は全身を診る上で歯周病の症状、口の中をぜひ見てください。口の状態もしっかり把握していただきたいと思います。

■治療の対象となる歯周炎の割合

歯周病の罹患率を、平成23年歯科疾患実態調査の結果から持ってきました。所見のないものと、対象の歯がすでにない方を除いた部分が、歯周病の割合です。これが70.8%となります。すなわち、日本国民の約7割の人に何らかの歯周病の症状が認められるという、大きな根拠となるものです。

歯肉の所見の有無(年齢階層別)

ただ、この中で歯石の沈着や少ししか炎症がないといった軽度の歯周病を除いた中等度から重度の歯周炎だけを見ますと、29.8%です。ですから、日本でしっかりとした治療が必要な対象は、この約30%ということになります。

30%というのは世界的に見て多いのか、少ないのか分かりますか。米国の歯周病学会から発表されたデータによると、軽度から重度の歯周炎の罹患率が47.2%。さらに、中等度と重度にしぼると38.5%となります。誤差を含めて、ほぼ日本と同じような数値ではないかと考えられます。世界的にみても30%ぐらいが中等度から重度の歯周炎、つまり治療の対象となる歯周炎であると考えられているのです(続く)。

2014年3月26日 提供:酒井夏子(m3.com編集部)