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「美味しさの脳科学」著者ゴードン・シェファード
「美味しさの味わいに咀嚼重要」


「美味しさの脳科学」著者ゴードン・シェファード「美味しさの味わいに咀嚼重要」

ゴードン・シェファード氏(エール大学科学者)が、最先端の五感研究を解き明かした書「美味しさの脳科学」(株式会社インターシフト・2450円・小松淳子訳)を、東原和成(とうはら かずしげ)東大大学院教授が評者として、日経サイセンス・Book Reviewで解説している。 解説の中で、まず「和食が注目される中で、日本料理には日本酒、日本ワインを合わせるシーンやレストランが増えるなど、食文化の挑戦と進化は止まるところを知らない」と最近の食にまつわる動向を指摘。 ではその食の美味しさはどこで感じるのかとして、その研究解明のここ20年程度で、そのメカニズムが明らかにされたとしてまとめたのが本書とした上で、「著者のゴードン・シェファードは高名な脳科学者であり、神経科学の学問領域では定評のある雑誌”Journal of Neuroscience”の編集長を長年務めた大御所でもある。シェファード博士ならではの記述の正確さと洞察力には目を見張る」と紹介。

最初の章では、「ワインと料理のマリアージュを話題している。美味しさにおける香りの重要性が説かれている。美味しさは、舌で感じていると思っている人がほとんどであるが、実際に重要なのは、味より香り、すなわち嗅覚である。鼻をつまんで食べたり飲むと嗅覚の重要性がよくわかる」とも指摘している。

ヒトは、喉越しから匂い知覚ができる生物であるからこそ食文化が発展したというシェファード博士独自の説が展開され、“ニューロガストロノミー”という新しい学問領域が提唱されている。

特に、歯科に関連する記述は匂いがどのように感知されるか、そのメカニズムの解明について関して、「実際に美味しさを感じる時は、匂いだけでなく、味、テキスチャー、視覚、音など五感が総動員されるが、それに加えてシェファード博士は、ヒトは口の中での咀嚼の仕方に特徴があり、その美味しさの味わいに重要だという。シェファード博士は科学的に説明しながら、最先端の五感の科学的知見が紹介される」と興味深い評論をしている。

さらに「本書は”美味しさ”に関するものであるが、多方面から考察されているため、嗅覚や味覚をやっている研究者だけでなく脳科学者やっている人にも大変勉強になる本である」とも論じている。

「美味しさの脳科学」というタイトルの書の中で、歯科に関係する”咀嚼”についての言及されていることに、改めてその重要性を再認識される。歯科専門分野では、この種の指摘は散見されるが、他分野と思われる研究で、”咀嚼”に触れていることの意味は大きいと捉えたい。

近年、歯科は、本来有する咀嚼機能への評価を強調し始めたが、歯科だけの主張でなく他分野の研究にも指摘・同調されることで、社会的に評価が広がることを期したい。本書もその一つに資している。

引用:奥村勝氏 DENTWAVE 2014年6月10日

更新日:2014年6月19日