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乳酸菌のお口効果

「乳酸菌配合」でゴシゴシ 唾液分泌に口の体操 ヘルシーリポート 虫歯予防

歯の健康維持にも、乳酸菌が大切な働きをすることが分かってきた。ヨーグルトなどに含まれる乳酸菌が善玉菌を増やし腸の調子を改善するのと同じように、口の中でも乳酸菌が虫歯や歯周病を予防するかもしれないという。6月4日は虫歯予防の日。

 ■細菌バランスを改善

 口の中には約700種類の細菌がいるという。その中には虫歯や歯周病、口臭の原因となる悪玉菌もいれば、虫歯菌を抑える善玉菌もいる。

 腸内や口内の細菌のバランスを改善して良い効果をもたらす微生物をプロバイオティクスというが、実は歯の健康にもプロバイオティクスが関係している可能性がある。

 例えば、虫歯の原因となるストレプトコッカス・ミュータンス菌は、ネバネバした不溶性グルカンを作り出し、その中で作られる酸が歯を少しずつ溶かしていく。これに対し、口の中にいるLS1という善玉の乳酸菌は不溶性グルカンが作られるのを抑えることが報告されている。

 こうしたことから注目されているのが、善玉菌と悪玉菌のバランスを改善することで虫歯を予防する健康法だ。

 ■微生物に代わる働き

 乳酸菌(ラクトミン)を配合した歯磨き剤を使う方法もある。鶴本明久・鶴見大学歯学部教授らは乳酸菌配合歯磨き剤の有効性を確かめる臨床試験を行った。

 大人27人を2グループに分け、一方は生きた乳酸菌を配合した歯磨き剤、もう一方は通常の歯磨き剤で1日2回2週間、磨いてもらった。科学的な厳密さを期すため、しばらくして両方のグループがそれぞれ逆の方法で磨くクロスオーバー試験を実施した。

 その後、歯垢(しこう)(プラーク)の中にいる連鎖球菌属に占めるミュータンス菌の比率(う蝕(しょく)菌比率)を調べたところ、乳酸菌配合歯磨き剤を使った方がミュータンス菌が少ないことが分かった。試験開始前にミュータンス菌比率の高かった人ほど、減少傾向が強かった。一方、歯垢の全体量にはあまり変化はなかった。

 この結果について鶴本教授は「ミュータンス菌比率の減少は統計的な有意差はなかったが、乳酸菌群でミュータンス菌比率の減少傾向が見られた。虫歯を防ぐ上で、乳酸菌がプロバイオティクスのような働きをする可能性を示唆するものだ」と話す。

 この乳酸菌はもとは腸にいるもので、口の中に定着するものではないという。今後は「乳酸菌と改善作用のメカニズムを詳しく研究していくことが必要だ」と話す。

 ■基本は毎日の歯磨き

 もちろん、乳酸菌を取っただけでは虫歯予防にはならない。基本はいうまでもなく、毎日歯を磨くことと適切なフッ化物の応用だ。鶴本教授は「夜、寝る前にきっちりと磨くことが基本。テレビを見ながらでもよいが、まずは3〜4分間、ブラシだけで歯全体を磨き、その後フッ化物が配合された歯磨き剤で磨けば確実です。乳酸菌配合なら、なお期待できるかもしれない」と話す。

 ■汚れ落とし酸を中和

 唾液(だえき)をよく出すことも虫歯予防には大切だ。口の中の汚れを洗い落とし、虫歯菌のつくった酸を中和する働きがある。唾液が少ないと、口の中がネバネバすることもある。

 唾液が出るのは食べ物をかんだときだけでない。あごの下にある顎下腺(がっか )や舌下腺は副交感神経に支配されているため、悩み事や不眠などストレスがあると、唾液の分泌が少なくなりやすい。

 食事の雰囲気も大事で「独り寂しく取る『孤食』は避けたいものです」(鶴本教授)。

 唾液をたくさん出すには、毎日の食事でよくかむことが重要だ。歯の弱い高齢者の場合、軟らかいものを食べているとかむ回数が減り、唾液分泌が少なくなりやすい。高血圧薬などを長く服用していても、少なくなることがある。

 ■顔の筋肉動かし刺激

 そんな高齢者に効果的なのが口周辺のマッサージや口の体操だ。神奈川県茅ケ崎保健福祉事務所は、お口の体操を映像で解説したDVD「湘南版お口の健口(けんこう)体操」(20分)を製作、とても好評だ。唾液腺は口や顔の筋肉を動かすと刺激されるので、両手で口の周りをもみほぐしたり、なでたりする。歌うことも口の体操になる。発声練習の要領で「あ」「い」「う」「え」「お」と声を出すのもよい。

 また、口を開けて舌を上下左右に動かしたり、回したりするのも、唾液分泌につながる。こうした口の体操をデイケアセンターなどで実践すると効果的だ。

 DVDにも出演して口の体操を広めている同福祉事務所の北原稔・保健福祉課長は「お年寄りが口や顔の筋肉を動かすことは、唾液を出すだけでなく、顔の表情が豊かになって物事に意欲的になると実感している」と話している。DVDの問い合わせは「クリフォード」(電話045・662・5688)。

2009.5.30 記事提供 毎日新聞社