精進料理は動物性食品を使うことが禁じられているので、たんぱく質不足が懸念される。それを補ってくれる唯一の食品は植物性の良質たんぱく質の供給源、大豆である。その中でも豆腐やその加工品がよく使われ、各種料理の食材としても用いられる。さらに大豆たんぱく質には動脈硬化を予防する働きがある。

岡山大学医学部の平田洋博士らは、軽度の高コレステロール血症を有する21〜59歳の成人男性31人を対象にし、1日7グラムの大豆たんぱく質含有粉末スープを2週間にわたって1日1回夕食時に摂取してもらったところ、血中総コレステロール値の低下がみられた。

ほかの研究では、この働きは血中総コレステロール値の高い人ほど顕著だが、正常血圧の人にはコレステロール低下はみられなかった。だが、この場合は悪玉コレステロール(LDL)に対して善玉コレステロール(HDL)が上昇しており、動脈硬化に対する予防効果が期待できる。

コレステロール値を下げるメカニズムとしては、大豆たんぱく質が腸管内で胆汁酸(コレステロールが原料)とコレステロール自身の吸収を抑制し、便として排出することなどが考えられる。この働きに加えて、大豆たんぱく質は質が良い。この質を示すアミノ酸スコアは100で、肉や卵並みに良質なので血や肉になりやすい。これに対して精白米のたんぱく質は61、小麦粉は42と低い。ところで大豆たんぱく質の含有量だが、木綿豆腐の場合は100グラム中6.6グラム、生揚げでは10.7グラム、がんもどきでは15.3グラム。どれも日常生活でたくさんとりやすい食品だ。
(新宿医院院長  新居 裕久)

2007.5.26 日本経済新聞