牛乳は栄養価が高く、吸収率のよいカルシウムの補給源で、その上美味なドリンクだ。夏の疲れから回復するため、水がわりにとるとよい。ところが牛乳を飲むとおなかがゴロゴロしたり、腹部がはったり、下痢、腹痛などを起こしたりする人がよくみられる。このような症状を起こす人は乳糖不耐症と呼ばれ、日本人の場合、成人の20%ぐらいを占めるといわれている。

原因は牛乳中に含まれている乳糖。これは小腸内で乳糖分解酵素(ラクターゼ)の働きによって、ブドウ糖とガラクトースという2つの糖に分解され、吸収されてエネルギー源になり、体に役立つ。乳児の栄養によく牛乳が使われるのは、この乳糖が乳児の発育になくてはならないものだからだ。

しかし、成人になると各種の食物を摂るようになるため、乳糖は必要ではなくなってくる。と同時にこれを分解するラクターゼの量が減り、乳糖が分解されにくくなり、そのままの形で大腸内に残るようになる。

その結果、浸透圧の関係で大量の水分が大腸内にたまり、さらに乳糖の発酵による乳酸や炭酸ガスが発生し腸を圧迫したり、刺激したりする。そのため各種の腸の症状がでてくると考えられている。

乳糖不耐症対策は3つある。第一に、牛乳を一気に大量を飲まないようにし、少量ずつかむようにしてゆっくり飲むようにすること。第二に、冷たい牛乳は腸の運動を高めるので、人肌ぐらいに温めて飲むようにする。第三に、乳糖が少ないヨーグルトや乳糖を分解した乳飲料「アカディ」などが販売されているので、この種のものをとることだ。

(新宿医院院長 新居 裕久)


 2006.9.2 日本経済新聞