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乳幼児からかかりつけ歯科医は小児専門医?

小児専門のかかりつけ医で乳児から歯の定期健診 フッ素塗布、磨き方指導で虫歯予防

赤ちゃんのころから、かかりつけの小児歯科医を持とうという動きが広がっている。虫歯になったら行くのではなく、歯が生え始める生後5-6カ月から定期的に口の中の健康診断を受け、「口の中の困りごとの相談先」として考えればいいという。定期的に受診している親子を取材した。【中村美奈子】

 東京都中野区の幼稚園児、大矢真央(まお)ちゃんは3歳11カ月。2歳3カ月から区内の「田中歯科クリニック」に通っている。3カ月から半年に1度受診し、これまでに11回来院した。うち4回は健診時のフッ素塗布で、他は歯(し)垢(こう)除去と治療だ。健診のたびに歯磨き指導を受ける。歯垢染め出し液を綿棒に付けて歯に塗り、ぶくぶくとうがいする。磨き残したところは紫色になるので、そこを磨き直す。着色部分が取れたら歯磨きは終了だ。

 今月は右下の奥歯1本がごく初期の虫歯になり、麻酔の後少し削ってプラスチックを詰めた。治療は1回で済んだ。初めての虫歯だ。

 真央ちゃんの中学3年の姉、真愛(まな)さん(15)も2歳1カ月から、小学4年の兄、真大(まさひろ)君(9)も9カ月から同院に通い、虫歯はそれぞれ1、2本しかない。2人はいまも半年に1度、フッ素塗布に通っている。

 母の主婦、こずえさん(40)は、真愛さんが乳幼児時代の区の歯科健診で、予防目的でも歯科受診が可能と知った。真愛さんの時に「あおむけに寝かせると親が磨きやすいですよ」と田中英一院長に教わり、歯ブラシの他にフロスも使った。

 姉や兄がいると、受診のきっかけになる上、こうした口(こう)腔(くう)ケアが自然と生活に溶け込むようだ。真央ちゃんも1歳半から染め出し液を、2歳半からフロスを使っている。毎食後自分で歯磨きし、夜はこずえさんの仕上げ磨きが加わる。姉と兄が真央ちゃんを誘い、誰が一番磨き残しが少ないか、3人で歯垢染め出し競争をして遊ぶ。

 こずえさんは子ども3人に歯磨きの仕方を教えたことがない。親が言うと反発するが、健診時にやり方を教わると、その通りにしようとして、習慣付けに効果があるという。

 「歯は悪くなると取り返しがつかない。普段は透明な子どもの歯の色が、牛乳のような白色になると、すぐ診察の予約をします。長く診てもらっていて相談しやすいので、転居後も通っています」

 同院では、大矢さんのような虫歯予防での来院が4、5年前から増えている。来院者のうち、6歳未満の乳幼児の約4割が予防目的で、治療や矯正目的より多いという。

 理想的には離乳食の開始前後の生後5-6カ月で1回は歯科医に診せるのがいいそうだ。「子どもが口の中の機能や健康を獲得していく手伝いをするのが小児歯科。歯科を子育て支援の一機関と考えてほしい」と田中院長は話す。

 ◇保険の適用外、費用は数千円

 厚生労働省や東京都歯科医師会によると、歯科も自治体が実施する乳幼児の医療費助成の対象になる。助成制度は自治体によって違い、東京都のように虫歯などの治療は無料のところもあれば、治療に一部自己負担が必要な自治体もある。健診には保険が使えず、数千円程度の費用がかかる。

 小児歯科の専門医は非常に少ない。日本小児歯科学会によると、子どもの歯を中心に診察している小児歯科の専門医と認定医は、全国で計1000人余り。全国の歯科医9万7000人の約1%だ。認定医より専門性の高い専門医の名簿は同学会のサイト(http://www.jspd.or.jp/specialist_doctor/index.htm)に掲載されている。


2009.9.27 記事提供 毎日新聞社