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祖国で生かす…
ネパール人歯科医、日本で7年も勉強

日本の医学 祖国で生かす…ネパール人歯科医

虫歯予防法を普及へ

  ネパールの村を拠点に活動しているNGO「ネパール歯科医療協力会」(北九州市)との出合いをきっかけに来日し、九州歯科大で学んでいた歯科医師アミット・カナルさん(34)が近く、日本での7年間の勉強、研修を終えて帰国し、現地でNPOを設立して虫歯の予防法の普及などに当たる。

  協力会は「歯科医療の分野でネパール人が自立する大きな一歩」として、首都カトマンズに今夏、現地事務所を設けてアミットさんの活動を支えていく。

  協力会は1989年、同大山岳部OBを中心に活動を開始した。当時、ネパールには歯科医師が約30人しかいなかったといい、虫歯は放置するしかなく、予防も重視されていなかった。そこでこれまで歯科医師や歯科衛生士ら延べ663人が、計20の村と市で虫歯治療や学校での虫歯予防の普及などに取り組んできた。

  アミットさんはネパール東部の町、ダラン出身。歯科医師を志したが、同国には養成大学がなかったため、近国パキスタンの大学に進学。3年の時に里帰りした際、協力会理事長の中村修一・九州歯科大特任教授(66)と出会った。

  卒業後、ダランにできた医科歯科大で1年働いた後、「もっと専門的な内容を学びたい」と、中村さんに相談。中村さんが入国時の保証人になり、2003年4月に来日を果たした。

  1年目は九州歯科大の研究生として過ごし、その後、大学院で4年間の課程を修了した。「もっと勉強したい」と帰国を延期し、さらに2年間、特別研修生としてあごの変形や口腔(こうくう)がんの治療を学び、手術のアシスタントなども務めてきた。

  帰国後は大学助手として働きながら、政府機関に申請中のNPOの代表として、中村さんらが口腔保健の専門家として養成した現地の小学教諭ら8人とともに、虫歯の予防法を普及していく。ほかの医師にも参加を求め、村々での巡回治療も行いたいという。

  アミットさんは「日本の仲間たちは家族。皆さんの温かい気持ちの中で勉強できて幸せ」と感謝し、送り出す中村さんは「活動の主体が日本人からネパール人に代わる一歩になる。これからも支えていきたい」と話している。(大塚晴司)

2010.5.26 記事提供:読売新聞