徳島大学の木戸博教授らは、微量の唾液(だえき)や鼻水などから食物アレルギーを調べられる微小チップを試作した。アレルギーのきっかけとなる物質(アレルゲン)の抗体を高感度でとらえる。微量の血液を使う検査では一度に一種類しか検査できなかったが、600種類が可能になる。病院と協力して性能を確認し、来年4月のサンプル出荷を目指す。
測定感度20倍に向上
チップ上に炭素がダイヤモンドと同じ構造に並んだ分子を並べ、この原子間に卵やそば、牛乳などのアレルゲンの抗体をとらえる分子をくっつける。唾液や血液などの試料を垂らし蛍光するところを測る。
この構造は分子と結合しやすいため感度が20倍以上に向上した。20マイクロリットルという微量の試料でアレルゲンの抗体について最大で600種類調べられる。検出時間は1〜2時間で中小の病院や診療所などでも迅速な検査ができる。従来は血液20マイクロ〜30マイクロリットルで1種類しか調べられなかった。
アレルギーは一般に血液中に含まれる「IgE」という抗体の値を調べる場合が多い。だが、IgEが少ないにもかかわらず、症状の思い患者がおり、症状の軽重や治りかけか、否かにかかわる抗体「SIgA」や「IgG」なども調べる研究が進んでいる。
こうした抗体は唾液や涙、鼻水などで測れる。チップが実用化されると、症状に合わせた最適な治療方法を選べる可能性がある。
現在、木戸教授らは、健康保険鳴門病院(鳴門市)やいからし小児科アレルギークリニック(新潟県加茂市)と協力、100人規模の幼児患者の診断に利用して性能などを確認中だ。
血を使う医師向けの診断キットと唾液や鼻水、涙などを使うキットの2種類で実用化を検討中。
唾液対応のキットは学校などで給食を利用する前に調べられ、潜在需要は大きい。現在、協力企業と製品化に向けて検討中。10月をメドに製造会社などを決める。
厚生労働省の調査などによると、乳児の一割が食物アレルギーにかかっており、激しいショック症状「アナフィラキシー」で死亡する例もある。乳幼児期から体質を確認して食事の管理をする必要がある。
|