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歯科ラクトフェリン

昨今、注目されている「ラクトフェリン」という言葉を数年前の医療関連記事で初めて見かけた。新聞報道によると、C型肝炎ウイルスの増殖抑制効果や大腸ガン予防効果があるとの報告であった。ラクトフェリンは右図に示すように万能な作用を有し、しかも牛乳から採取できるため、副作用の心配がなく医療従事者にとっては重宝な素材なのである。

ところが、重宝な素材でありながら歯科関連では、ほとんど試用された臨床報告がない。そこで、2003年より実際にドライマウスやドライソケット、重度の歯周炎、局所疼痛などの疾病に有効であることを確認し、年末に「歯科ラクトフェリン研究会」を設立したのである。

当初は10人ほどの有志を募り、どのような症例に試せばよいのか、効果の評価や使用方法、プロトコールの作製などを話し合い、十分な説明と患者の同意の上で検討を始めた。全身的な効果には、カプセルで唾液検査や口腔浸潤度、口臭などから評価した。また局所には、錠型の貼付剤を準備して口内炎、口角炎、ドライソケットなどを対象に、おもに治癒に至るまでの時間や疼痛軽減の度合いなどから判断した。

実際に検討を始めてみると、多くの患者から「体調が良くなった」「ご飯が美味しくなった」「歯の揺れや歯ぐきからの出血が改善した」「痛みが瞬時に軽減した」「口腔内の乾燥感が薄らいだ」などたいへん評判がよいものであった。とくに、舌痛症の患者あるいは花粉症などのアレルギー性疾患にも効果があるようである。仕事柄、薬の服用ができない職種もあるため、この点では優れた有用性が認められるであろう。

ラクトフェリンの歯科への臨床応用はここ2、3年の成果であり、まだ始まったばかりである。現状では、なぜ改善するのか、どこに作用するのかなどの具体的なメカニズムについては不明な部分もある。しかし、昨年あたりから歯科領域においてラクトフェリン関連の研究発表が歯周病の分野を中心に増えてきているので、遠からず種々の問題も解明されていくであろう。

興味ある方は、ぜひ歯科ラクトフェリン研究会のホームページを訪ねられたい。
HP:www.dental-lactoferrin.com/

2007.5.10 新聞 クイント