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上気道感染の予防に効果?抗菌剤

抗菌剤治療で人工呼吸器関連気管気管厚労省が調査へ

この問題を検討した初の前向き無作為化多施設共同研究の中間解析によれば、気管気管支炎患者に抗生物質を投与すると、感染性肺炎の発生率とその後の死亡率が低下した。
Emma Hitt


ホノルル 2月5日】人工呼吸器関連気管気管支炎(VAT)患者に抗生物質を投与すると、感染性肺炎の発生率とその後の死亡率が有意に低下することが、この問題を検討した初の前向き無作為化多施設共同研究の中間解析で明らかとなり、米国集中治療医学会(SCCM)第37回集中治療会議で発表された。

「VATを治療することで抑制されるのは、死亡率ではなく機械的換気の実施期間だと我々は考えていた」と、筆頭著者でありCentre Hospitalier R醇Pgional Universitaire(フランス、リール)のSaad Nseir, MDは述べている。「しかし、その後の人工呼吸器関連肺炎の発生率も両群間で有意に異なっていたことから、今回の結果はうなずけるものである」と、同博士はMedscape Critical Careに語っている。

機械的換気の開始から48時間以上経過後に初回のVATエピソードが診断された計44例の患者を、抗生物質の静脈内投与を8日間行う群(n=22)か、抗生物質の投与を行わない群(n=36)のいずれかに無作為に割り付けた。膿性気管吸引物と38℃以上の熱があって気管支炎以外に熱源がないこと、気管吸引物培養が陽性(1×10(6)コロニー形成単位/mL以上)であり、胸部X線像に新らたな浸潤影が認められない場合にVATと診断した。

患者背景は両群ともほぼ同じであった。感染率が最も高かったものは緑膿菌で、患者の36%から検出された。その他の起炎菌は黄色ブドウ球菌や大腸菌などであった。

その後の人工呼吸器関連の感染性肺炎は、抗生物質投与群のほうが対照群よりも有意に少なかった(3% vs 17%、P=0.011)。集中治療室(ICU)での死亡率も、抗生物質
の投与により低下した(4% vs 17%、P=0.047)。

機械的換気の実施期間に有意な群間差はなかった(抗生物質投与群で29日間 vs 非投与群で26日間)が、換気を必要としなかった日数は抗生物質投与群のほうが多かった(12日間 vs 2日間、P<0.001)。死亡率に有意な群間差が認められたことから、この研究は1回目の中間解析を行った後、倫理的な理由から中止された。

Nseir博士によれば、抗生物質の最適な投与期間がどのくらいかや、エアロゾル化した抗生物質が有用かどうかといった疑問は未解決である。

この会議の司会を務めたメモリアル・スローン・ケタリング癌センター(ニューヨーク市)のStephen M. Pastores, MDは、これはこの種の研究では初めての前向き研究であり、臨床上の意義は大きいと述べている。「VATは肺炎と死亡を引き起こすことがあるため、これらの研究結果からVATのスクリーニングにもっと注意を払う必要があることが示唆される。これは理に適っていると私は考えている。研究者らがVATの有病率を3%-10%と報告していることから考えても、VATは我々が考えている以上に発生率が高い可能性がある」。

しかし、Pastores博士は次のように付け加えている。「VATの定義の妥当性が確認されていないことに加え、『痰の新たな出現または増加』や『胸部X線像上の浸潤影の欠如』といった基準の使用がかなり曖昧であるため、正確な発生率とVATの重要性を明らかにするのは極めて困難である」。この研究で生じた疑問のひとつに、VAT患者には本当にベースライン時点で人工呼吸器関連肺炎が認められなかったのかという問題がある、と同博士はMedscape Critical Careに語っている。「肺炎の患者が一部に存在しており、適切な抗菌剤が投与されていたのなら、このことが死亡率低下の理由であった可能性がある」。

Pastores博士によれば、こうした患者の転帰に及ぼす抗生物質投与の真の効果を明らかにするには、もっと厳密で客観的なVAT診断基準を用いた研究をさらに実施する必要がある。

リール大学附属病院(フランス)が本研究に資金援助を行った。Nseir博士とPastores博士は、関連する金銭的関係がないことを公表している。


2008.2.5 記事提供 Medscape