参考:2016年3月31日 (木)配信 毎日新聞社
美容、健康に?スーパーフード
アサイーやチアシードなどの「スーパーフード」と呼ばれる食材が、近年、多く出回っています。特定の栄養成分を豊富に含み、「健康や美容に良い」とうたわれたものが多いですが、中にはその働きが明確でないものもあります。一方、北海道ではスーパーフードを地域活性の起爆剤にしようと、生産・商品化に向けた取り組みが進められています。
●栄養価の高さ、定義
今月半ば、東京都内で健康や美容に関する商品見本市が開かれ、昨年に続きスーパーフードが注目を集めました。企業の垣根を越えた集中展示コーナーも設けられ、スーパーフードを使ったドリンクやサプリメント、菓子類など数十社の製品が並びました。
そもそもスーパーフードとはなんでしょうか。一般社団法人スーパーフード協会は「栄養バランスに優れ、一般的な食品より栄養価が高い」または「一部の栄養・健康成分が突出して多く含まれる」食品と定義します。2009年に米国の自然療法家が「スーパーフード」と題した本を出版し、有名なモデルが口にしたことなどで、流行につながったといいます。スーパーやコンビニ、百貨店に加え、インターネットでの販売も盛んです。
現在、同協会が優先して推奨するスーパーフードは43種類。南米原産でポリフェノールが豊富なアサイー▽メキシコ原産のシソ科植物の種子で食物繊維が豊富なチアシード▽アフリカなどで採れる藻でβカロテンが豊富なスピルリナ――などの、近年有名になったものだけでなく、蜂蜜やそばの実のような昔から馴染みのある食品も含まれています。
●新商品次々と
また、同協会の「推奨リスト」には掲載されていませんが、スーパーフードとして販売されている食品は他にもあります。「次々と新しいものが出てくるため、定義を満たしていても、推奨が追い付かない」(同協会)のだといいます。
一方、スーパーフードという言葉は市場向けの用語です。消費者庁長官の許可を受けた特定保健用食品(トクホ)や、厚生労働省が定める基準を満たした栄養機能食品とは性質が異なります。現時点では基準もなく、販売する側が自由に名乗れるようにもなっています。そこで、同協会は4月から、協会の法人賛助会員向けに「推奨マーク制度」を導入します。「トレーサビリティー(栽培や加工などの過程)が明確」などの条件を定めます。
●少ない検証例
ある業者は「同じ食品でも産地や加工技術によって品質が違う。急激なブームで粗悪品が出回れば、スーパーフード全体のイメージダウンにつながりかねない」と指摘します。多くは中南米やアフリカから輸入しており、残留農薬やカビの混入が問題になったこともあるといいます。また、栄養価が高いのは事実ですが、人を対象に効き目を十分に検証したデータはまだ少なく、例えば「ダイエットや美容に効く」などの不適切な表記も散見されます。
スーパーのダイエーは、都内などの3店舗で14年11月からスーパーフード専用売り場を設けています。業態開発部の下井由紀子さんは「薬ではなく、あくまで食品。病気が治るかのような説明はできない。対面販売なので、尋ねられれば丁寧に商品説明をしている」と話します。業者からは「学術的な成果が必要」という声もあります。消費者も冷静な視点が求められます。【鈴木敦子】
◇北海道 アロニアに注目
北海道では、バラ科の果実アロニアの栄養価に注目し、スーパーフードとしての生産や加工、販売に力を注ぐ動きがあります。道立総合研究機構食品加工研究センターの資料によると、アロニアには目の疲労回復に効果があるとされるアントシアニンが100グラムあたり1185ミリグラム含まれ、ブルーベリーの2倍以上。北海道大大学院の鈴木卓准教授(園芸学)は「老化を防ぐ成分が豊富で、人への効果が期待される」と話します。
一方、渋みが強いため生のまま食べるのは難しく、ジャムやサプリメントなどが人気です。北海道アロニア研究会の林晃勝副会長(77)は「スーパーフードとしては珍しい国内産であり、安心して口にしてもらえるのでは。一時的なブームで終わらせたくない」と話しています。
スーパーフードという言葉は市場向けの用語。消費者庁長官の許可を受けた特定保健用食品(トクホ)や、厚生労働省が定める基準を満たした栄養機能食品とは性質が異なる。現時点では基準もなく、販売する側が自由に名乗れるようにもなっている。特定の栄養素が多く含まれる、オーガニックが基本だが、ブームになると生産が追いつかず、粗悪なものも出回る。