2回目に違うワクチンを打った方が効き目があるとテレビで報道していたのですがなにかデータはありますか?なぜ効果が上がるんでしょうか、そしてリスクも気になります

参考: Quora 2021年7月8日

これは「2回目に違うワクチンを…」と言うか「2回目に違うタイプのワクチンを…」という事です。

現在、世界で使用されている新型コロナワクチンは大きく分けて

  1. mRNAワクチン…ファイザー社製、モデルナ社製
  2. ウイルスベクターワクチン…アストラゼネカ社製、スプートニクV(ロシア製)、ジョンソン&ジョンソン社製
  3. 不活化ワクチン…シノファーム社製、シノバック社製

の3種類の「タイプ」があります。

この中で、現在問題になっているのは「ウイルスベクターワクチン」です。ウイルスベクターワクチンはその性質上、2回目の接種の効果が薄まるのではないかと危惧されていました。又、血栓の問題も浮上しました。更に国によっては途中で使用が禁止されたり、流通が確保できないという事も発生しました。

そこで、つい最近になってから、「ウイルスベクターワクチンとmRNAワクチンの違う2種類のワクチンを接種するとどうなるのだろうか?」という研究が行われました。

まず、スペインの研究ではアストラゼネカの「ウイルスベクターワクチン」を接種して8週間後にファイザーの「mRNAワクチン」を接種しました。その結果、663人の治験データから重大な副作用がほとんどなく、2回目の注射の2週間後に強力な抗体反応が出来る事が報告されました。

Reactogenicity and Immunogenicity of BNT162b2 in Subjects Having Received a First Dose of ChAdOx1s: Initial Results of a Randomised, Adaptive, Phase 2 Trial (CombiVacS)

https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=3854768

 

ベルリンのシャリテ大学病院では、340人の医療従事者がアストラゼネカ社のワクチンを接種した10~12週間後にファイザー社のワクチンを接種しました。その結果、ファイザー社のワクチンを2回接種した人達と抗体量にあまり差が出ませんでしたが、免疫を誘導するT細胞の量は増加しました。

Safety, reactogenicity, and immunogenicity of homologous and heterologous prime-boost immunisation with ChAdOx1-nCoV19 and BNT162b2: a prospective cohort study

https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2021.05.19.21257334v2

 

この様な治験はドイツのウルムでも26名に対して小規模で行われましたが、同様の結果が出ています。

Heterologous ChAdOx1 nCoV-19 and BNT162b2 prime-boost vaccination elicits potent neutralizing antibody responses and T cell reactivity

https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2021.05.30.21257971v1

 

シャリテ大学病院の感染専門家のエリックサンダー氏は「mRNAワクチンは抗体反応の誘発に非常に優れており、ベクターベースのワクチンは免疫を誘導するT細胞反応の誘発に優れています」と述べられています。

又、最新のオックスフォード大学主導の研究では830人に対して「異なるタイプ(アストラゼネカとファイザー)のワクチンの2回接種」の治験が行われました。

Safety and Immunogenicity Report from the Com-COV Study – a Single-Blind Randomised Non-Inferiority Trial Comparing Heterologous And Homologous Prime-Boost Schedules with An Adenoviral Vectored and mRNA COVID-19 Vaccine

https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=3874014

 

結果、アストラゼネカのワクチンを2回打つよりも、アストラゼネカのワクチンを接種後に2回目にファイザーのワクチンを打った方が抗体反応の誘発もT細胞の誘発も優れていました。(因みに、逆の順番(ファイザー→アストラゼネカ)で打った場合はアストラゼネカを2回打つよりも優れていましたが、アストラゼネカ→ファイザーの順番で打つよりも効果が薄い事も確認されました)

ただ、それでもファイザーを2回接種した方が一番抗体反応の誘発が高い事も確認されました。しかし、T細胞の誘発はアストラゼネカを打った後にファイザーを打った方が高く出るという事も確認されました

これらの事から言える事は、ヨーロッパ諸国やカナダ等ように、アストラゼネカ社のウイルスベクターワクチンとファイザー社のmRNAワクチンを使用している国では「2回目の接種にファイザーのワクチン」を接種する事が可能で、それは大きな副反応も認められず、高い効果があるという事です。

これまでは、違うメーカーやタイプのワクチンを接種する事は推薦されてきませんでした。これはそういった治験がなされていなかった為ですが、この治験により、そういった事も可能だという事がわかってきました。これにより、同一ワクチンの大量入手が難しい国やエリアでは2種類の異なるタイプのワクチンを接種する事が出来るようになり、接種が迅速に行えるようになります。

ただ、日本では現在使用されているのがファイザー社とモデルナ社のワクチンです。これは両方ともmRNAワクチンであり、両方の違うワクチンを接種しても効果の差は見られないと思います。ですので、当面の開はそれほど気にする事はないと思います。ただ、将来的にジョンソン&ジョンソンのワクチンや日本製のワクチンが承認された暁にはmRNAワクチンとの併用もあり得るかもしれません。(J&Jのワクチンは基本1回接種ですが、変異種への対応策としてmRNAワクチンとの併用もあり得ます)

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