参考:Wikipedia
SE Book 2018/06/20
funakoshi FRONTIERS IN LIFE SCIENCE 2020/06/19
レクチン(英:lectin)
狭義には「糖鎖と結合する能力を有する酵素や抗体以外のタンパク質」の総称と定義されているが、この定義が定められて以降に酵素活性を持つものなどの例外が数多く見つかったため、現在では「糖鎖に結合活性を示すタンパク質の総称」といった広義の概念が広がりつつある(しかし、糖鎖に結合する抗体は現在でも「レクチン」ではなく、一般に「糖鎖抗体」と呼称されている)。
多くのレクチンは多量体を形成するため、分子内サブドメイン内に糖認識サイトを1つしか持っていない場合でも多量体を形成することで、糖鎖分子を介した架橋を形成する能力(凝集能)を有するものが多い。
生のマメ科植物が血液を凝集する毒性を持つのも、マメ科のレクチンによる作用である。
語源と歴史
歴史的には、アメリアの免疫学者 William Clouser Boyd によって、1945年に「レクチン」は命名された。
マメ科植物などが血液を凝集する成分を持つことは既に当時から知られていたが(1888年にHermann Stilmarkがトウゴマによる血液の凝集を発見していた)、しかしBoyd以前は血液型に依存しないと思われていた。Boydの研究により、血液型に依存する事が分かったので、ラテン語の「選び出す」legereにちなみ、レクチンと名づけられた。Boydはスーパーでリママメを買ってきて実験したという。そして、Boydの実験のリママメのレクチンが、A型赤血球を凝集したという[1]。
その後の研究などで、糖によってレクチンの凝集が阻止される事が分かった[2]。また、血液の糖鎖などの構造の解明のヒントになった。
なお、1888年にHermann Stilmarkの発見したトウゴマの毒性レクチンはリシン(ricin)である。アミノ酸のリシン(lysine)と別物。
これらレクチン研究の当初は、植物のレクチンが当時の研究者の関心事だった。しかし現代では動物にもレクチンは存在する事が分かっている。
機構など
レクチンの代表的なサブファミリーとしては、細菌を含む全ての生物界で見出されるリシンB鎖関連の「R型レクチン」、真核生物全般に存在して糖タンパク質のフォールディングに関与する「カルネキシン・カルレティキュリン」、多細胞動物に広く存在して「セレクチン」や「コレクチン」など代表的なレクチンを多く含むカルシウム要求性の「C型レクチン」、動物界に広く分布してガラクトースに特異性を示す「ガレクチン」、植物豆科で大きな家系を形成する「豆科レクチン」、およびこれと構造類似性をもち動物細胞内輸送に関わる「L型レクチン」、リソソーム酵素の細胞内輸送に関わるマンノース-6-リン酸結合性の「P型レクチン」、グリコサミノグリカンをはじめとする酸性糖鎖に結合する「アネキシン」、免疫グロブリンスーパーファミリーに属して「シグレック」を含む「I型レクチン」等が挙げられる。
動物レクチンは海綿から、線虫、昆虫、魚類、爬虫類、鳥類、哺乳類(ヒト)までと進化系統樹の下から上までの実に幅広い領域において発見され、レクチン研究者の研究対象とされている。また、動物以外にも植物や菌類由来の多くのレクチンが知られ、現在もその知見は年々増加している。
ウナギの血中に含まれるレクチンはヒトのO型赤血球を凝集する。1935年に日本のウナギがヒトのO型赤血球を凝集する事が報告されていたが、当時は科学界の関心にならず見過ごされてしまった。
出来事・事件
2006年、レクチンの一種であるファセオリンがTBSの番組内で「ダイエット効果がある」と紹介され、加熱不十分の白いんげん豆を摂取した視聴者の間で下痢や嘔吐などの症状が多発したが、これは同じくレクチンの一種で豆類に含まれるフィトヘマグルチニン(phytohaemagglutinin, PHA)の作用である可能性が高いとされている。
脚注
- ^ 小山次郎・大沢利昭 著『免疫学の基礎 第4版』、東京化学同人、2013年8月1日 第5刷、110ページ
- ^ 小山次郎・大沢利昭 著『免疫学の基礎 第4版』、東京化学同人、2013年8月1日 第5刷、110ページ
関連項目
外部リンク
- レクチンデータベース J-オイルミルズ
- World of Lectin-レクチンの紹介サイト(英語)
- Biological effects of plant lectins…
- Proteopedia shows more than 800 three-dimensional molecular models of lectins, fragments of lectins and complexes with carbohydrates
- EY Laboratories, Inc World’s largest lectin manufacturer.
健康食が肥満や病気の原因になる?豆腐や玄米、蕎麦に含まれる毒素「レクチン」とは何なのか
昨年アメリカで発売され、6月19日時点でAmazon.comで総合3位にランキング、950件以上の5つ星がついた『The Plant Paradox』。すでに世界18か国で発売が決定されている話題の本が『食のパラドックス 6週間で体がよみがえる食事法』として、ついに日本でも6月20日に刊行となりました。本書でスティーブン・R・ガンドリー医学博士が説くのがレクチンフリーの食事法。今回はレクチンとはどんなもので、私たちの体がどう作られてきたのかを紹介します。
肥満や病気の原因は健康食だった!?
健康食といえば、全粒粉パンや玄米などの茶色い食べ物、トマト、キュウリなどの野菜を思い浮かべることでしょう。最近では、チアシードなどのスーパーシードも注目されています。
しかし、これらのヘルシーフードを食べ脂肪を毛嫌いしているスリムな人たちが、さまざまな病気を患いアメリカの著名な心臓外科医であるガンドリー博士の外来にくるようになりました。そこで博士は、植物の種子や皮などに含まれる「レクチン」というタンパク質が、現代人の健康を阻害していることを発見します。
1960年代半ばから、肥満、糖尿病、自己免疫疾患、喘息、アレルギー、鼻炎、関節炎、がん、心臓病、骨粗しょう症、パーキンソン病、認知症などが急増した。そして同時期に、私たちの食事が少しずつ変わってきたことは、決して偶然ではない。どうしてわずか数十年で社会全体の健康状態が悪化し、体重が増えたのか? 私はその最大の答えを見出した。それは、レクチンと総称されるタンパク質群から始まっている。(中略)
レクチンは初耳だろうが、グルテンなら聞き知っているだろう。グルテンは数千種類もあるレクチンの一種だ。レクチンはほぼあらゆる植物に含まれ、実際、牛肉、豚肉、鶏肉、魚など今日の米国の食事を構成する大半の食材に含まれている。レクチンはさまざまな働きをするが、植物が動物と戦う強力な武器である。植物は、ヒトが現れるはるか前から、植えた昆虫から我が身と子孫を守る術を身につけていた。すなわち種などの部位にレクチンをはじめとする毒物を蓄えたのだ。
そして昆虫を殺傷するこうした毒物は、私たちの健康も密やかに衰えさせ、いつの間にか太らせていたのだ。本書を『The Plant Paradox』(原題)と題したのは、多くの植物性食品は身体に良く、私の食事計画の基礎となるものである一方、その他の「健康食」とされる植物性食品が実は病気や肥満をもたらしているからだ。そう、多くの植物性食品は、あなたを病ませているのだ。
毒/味方 食品リスト一例
毒(レクチンたっぷりの「食べてはいけない食品」)
玄米、パン、パスタ、蕎麦、シリアル、ジャガイモ、砂糖、豆類全般(もやしのようなスプラウトもダメ)、豆腐、枝豆、ピーナツ、カシューナッツ(ナッツではない)、チアシード、トマト、ナス、キュウリ、カボチャ、メロン、トウモロコシ、ローカロリー飲料……など
味方(体がよろこぶ「食べて良い食品」)
アボカド、ナッツ全般、栗、ココナッツ(ミルクやクリームもOK)、オリーブ、ダークチョコレート、海藻類、キノコ類、アブラナ科の野菜類(ブロッコリー、白菜、キャベツなど)、オクラ、玉ねぎ、葉菜類、サツマイモ、サトイモ、こんにゃく、柿、味噌、キムチ……など
食べ物が人をつくる
「食は人なり」ということわざがあるように、たとえば野菜や家畜製品を食べると、その栄養は土やその家畜が食べた飼料に由来して、それが私たちの細胞へと受け渡されます。自分たちが食べているものがどのように育てられたかを知ることは、単なるライフスタイルの選択ではなく、自分の健康に直接かかわることなのだと博士は説きます。
レクチンは植物だけではなく、動物性食品にも含まれている。牛などの動物が飼料としてレクチンたっぷりの豆やトウモロコシを食べると、レクチンはその肉や牛乳に移る。同じことは、レクチンの豊富なえさで育った鶏やその卵にも言える。やはり大豆やトウモロコシ由来のえさで育った養殖魚も同じ。(中略)有機飼育家畜や放し飼い家畜でさえ、やはりトウモロコシや大豆──たとえそれが有機栽培であっても──の飼料を与えられているため、レクチンを含んでいる。夏には牧場で草を食み、冬には干し草を食べて育った牛から作ったハンバーガー(あるいは牛乳やチーズ)と、厩舎でレクチンたっぷりのトウモロコシや大豆を食べて育った牛から作ったハンバーガーとでは、大変な違いがある。
第一に、オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸の割合が違う。いくつか例外はあるが、オメガ6脂肪酸は炎症を引き起こすが、オメガ3脂肪酸はそうではない。トウモロコシや大豆は主にオメガ6脂肪酸を含むが、草はオメガ3脂肪酸を多く含む。それだけではない。こうしたトウモロコシや大豆は、同じカロリーの草に比べても、牛をずっと太らせるのだ。体重増加について考える際には、このことを念頭に置いてほしい。
スティーブン・R・ガンドリー医学博士。人微生物叢と兆の関わりの世界的権威。2000年、手術不能な冠動脈疾患患者が食事法の変更と栄養摂取の組み合わせによって劇的に回復したことに感銘を受け、それまでのトップ心臓外科医としてのキャリアの方向性を大きく変えて、カリフォルニア州に国際心肺研究所と、その下部機関として回復医療センターを設立し、研究と臨床を行っている。対象には心臓病、糖尿病、自己免疫疾患、がん、関節炎、腎臓疾患、アルツハイマー病などの神経疾患が含まれ、先進的な血液検査と血流検査によって患者の健康寿命を最長化している。独立医師格付け機関キャッスル・コノリーによる米国のトップドクターに21年連続で選出。イェール大学、ジョージア医科大学卒業。
レクチン(Lectin)特集/レクチン糖鎖結合特異性一覧表
標識・非標識レクチン(Vector Laboratories社)
レクチンは凝集素とも呼ばれ、糖鎖と結合する性質をもつタンパク質です。オリゴ糖(数糖)の大きさまでの糖鎖の糖配列や結合位置を認識できます。このような性質は免疫機構にも利用され、また研究用のツールとしても有用です。
※ 本製品は研究用です。研究用以外には使用できません。
使用例
ホルマリン固定、パラフィン包埋マウス腎臓 |
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マウスの舌
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大腸の凍結切片の観察
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レクチン(Lectin)の種類/血液型・糖鎖結合特異性/価格
をクリックすると該当する製品のリストと価格をご覧いただけます。
※「特異性」は、認識する糖鎖構造および反応する物質等の例を記載したもので、記載以外の物質と反応する場合もあります。
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レクチンガイド・糖タンパク質検出プロトコル
下の図をクリックすると、「Lectin Application and Resource Guide」および「レクチンを用いた免疫組織染色・ELISA・ウエスタンブロッティングによる糖タンパク質検出プロトコル」をダウンロードいただけます。
Lectin Application and Resource Guide (全50ページ)ガイドの概要を見る→ |
レクチンを用いた免疫組織染色・ELISA・ウエスタンブロッティングによる糖タンパク質検出プロトコル |
レクチン(Lectin)に関する情報
- レクチン特異性リスト・使用文献リスト( 約 536 KB)
- レクチン特性一覧( 約88 KB)
- 各種標識トマトレクチン(トマト凝集素)
- 非霊長類の内皮細胞を特異的に染色するレクチン「GSL Ⅰ-Isolectin B4」
- 神経細胞染色用トレーサー
- 抗レクチン抗体
- レクチンスクリーニングキット
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スペクトラ/ポアRC透析用チューブ (再生セルロース製) スペクトラ/ポア7(MWCO:1,000〜50,000)
VECTOR LABORATORIES, INC. / 神経組織染色に最適なレクチン
免疫化学実験用レクチン(Vector社)