参考:2021年8月30日(月)配信 山梨日日新聞
■感染対策「これ以上何を」
新型コロナウイルスワクチンの接種が進んだ山梨県内の高齢者施設で8月中旬以降、クラスター(感染者集団)が発生するケースが出始めました。交付の施設では利用者と職員15人が感染し、このうち10人が接種済み。面会制限など感染対策は継続していたといい、施設担当者は「接種が完了していたのに」と落胆しました。感染力の強い変異株がまん延し、「切り札」とされたワクチンの接種後も感染対策に神経をすり減らす状況に、県内の施設は「これ以上何をどうすればいいのか」と戸惑います。
「接種を終えたのに感染者が出てしまった。感染対策は続けていて、決して油断していたわけではないのに…」。クラスターが発生した甲府市の介護施設の担当者は言います。
この施設では入所者と職員計約150人のうち、8割以上が接種。残りは体質に問題があるほか、家族や本人が希望しなかったケースといいます。ですが、20~27日に入所者11人、職員4人の陽性が判明し、このうち入所者9人、職員1人は1回または2回の接種が完了していました。
マスクや消毒など基本的な対策をはじめ、職員の健康管理を毎日行い、体温が37度以上ある場合は出勤させていませんでした。入所者の面会も時間を制限し、面会者とアクリル板で隔てるなどしていたといいます。
クラスター発生後、陽性が判明した職員の健康管理表を確認し直したところ、「わずかにのどに痛みがある」という記載があったといいます。感染との関連は分かりませんが、担当者は「発熱以外にも体にわずかな変化があれば休ませた方が、結果的には良かった。対応の見直しが必要だ」と反省を口にします。
県によると、韮崎市の介護施設でも20~27日、職員と利用者計7人の感染が確認されました。県内では19日時点で65歳以上の高齢者の87・2%が2回接種を完了。ただ、感染力が強いとされるデルタ株が広がる中で、高齢者施設は警戒を強めています。
ショートステイなどの利用者約80人と職員約50人の大半が2回の接種を完了した、アルファケア南甲府介護施設=甲府市南口町=の清水めぐみ施設長は「接種してもクラスターが出てしまう怖さを感じた」と危機感を強めます。大半の入所者と職員の接種を終えたという、サービス付き高齢者住宅「志庵」を運営するケアワークス(同市下石田2丁目、渡部淳子代表)の施設担当者は「接種前より安心はするが、感染力の強さを見せつけられた。これ以上どのような対策をしていけばいいのか分からない」と困惑します。
県内の介護老人保健施設でつくる県老人保健施設協議会は、ワクチンは感染を100%防ぐものではないとして、接種後もマスク着用や人との距離を取るなどの基本的な対策が必要としています。福田六花会長は「ワクチンだけでは感染を完全に防げないことを改めて周知し、対策を検討していきたい」と話しました。