卵アレルギー予防に新説 生後半年から摂取、発症8割減

参考:朝日新聞  2017年1月11日

 離乳初期から少量の卵を食べることで、卵アレルギーを予防できるという研究結果を国立成育医療研究センターが発表しました。子どもが卵アレルギーになるのを防ぎたい親にとって朗報だ。家庭で実践する際は自己流ではなく、専門医に相談することが重要といいます。

■アトピー治療と並行

研究はアトピー性皮膚炎がある赤ちゃんが対象で、記者の娘(4)も参加しました。

娘は生後3カ月ごろから、アトピーの症状が出始めました。それが一気に悪化したのは1カ月後。錦糸(きんし)卵入りのちらしずしでひな祭りを祝った翌日でした。近くの病院に行くと「母乳に含まれる卵が原因かもしれない」と、卵入りの食事を一切避けるよう言われました。だが改善せず、同センターでの研究を知り、参加しました。

診察室で黄色い粉末入りのパックを渡されました。卵が入っているのか、プラセボ(偽物)のカボチャなのか、主治医にも親にもわかりません。毎晩、離乳食のおかゆに混ぜて食べさせた。同時に全身にステロイドを塗るアトピーの治療も始め、すぐに皮膚はつるつるになりました。

1歳の誕生日を迎えた直後、入院してゆで卵2分の1個にあたる粉末を食べる負荷試験を受けました。症状は出ず、試験は終了しました。

それから約2年後、センターから手紙が届き、娘が毎日食べていたのはカボチャの粉末だと知りました。狐につままれたような思いがしたが、幸い娘の肌は安定し、卵も好きです。

食物アレルギーの予防は長らく、原因食品をできるだけ食べないという考え方が主流でした。だがそれでは効果が出ず、「早くから食べ始めた方がいいのでは」という説が出てきました。

そのきっかけの一つが2008年の研究だ。ピーナツを乳児期から食べ始めるイスラエルの子どもは、食べさせない英国に比べ、ピーナツアレルギーの発症率が10分の1でした。

食物アレルギー発症のメカニズムにも、新たな説が出てきた。食品を食べるのがきっかけで起こるのではなく、異物の侵入を防ぐバリアー機能が落ちた皮膚から食品が入ることで、過剰な免疫反応が起こるという考え方です。国立成育医療研究センターの研究では、生後1、2カ月でアトピーがあると、3歳で食物アレルギーを発症する率が約7倍高いという結果でした。

 

 ■試すなら医師と相談

研究チームは「早くから食べる」「皮膚をきれいにする」の二つの戦略で予防できるのではと考えました。

同時期に海外でも、早くから食べさせる予防研究が始まりました。だがほとんどがゆで卵ではなく、生卵を使ったため、強いアレルギー反応が起きてしまいました。

そこで研究チームは、ゆで卵をごく少量から食べ始め、皮膚も徹底して治療しました。その結果、ゆで卵を食べ続けた子どもは、1歳の時点での卵アレルギー発症率が、カボチャだけの子どもより約8割少なく、強いアレルギー反応を起こした子はいませんでした。娘の場合、アトピーの治療が卵アレルギーの予防に効いた可能性があります。

この方法を、アトピーの有無にかかわらず、自分の子どもにも試したい場合はどうすればいいのでしょうか。ゆで卵は20分以上ゆでるなど、完全に火を通すことが必要です。また量も生後6~8カ月は耳かき2~3杯程度(0・2グラム)、それ以降は1立方センチ程度(1・1グラム)など、少量から始めます。

研究を率いた大矢幸弘・アレルギー科医長によると、アトピー性皮膚炎がある場合は、適切な治療をしないと皮膚から卵成分が入るリスクが高いため、「独自に実施せず、必ず専門医と相談しながら進めてほしいです」。また、すでに食物アレルギーを発症している子どもにはしないよう注意が必要です。

日本アレルギー学会の西間三馨(にしまさんけい)顧問は「すばらしい研究だが、実際の臨床現場はもっと雑。研究に参加する人を増やし、それでも効果があるかどうかを確認する必要があります」と話しました。

今回の研究結果をもとに、来年度から全国の医療機関と共同で大規模な臨床研究が始まります。大矢さんは「より早くから皮膚の治療を始めることで、卵アレルギーの発症率を0%に近づけられるかどうかも確認したい」といいました。

(岡崎明子)

 

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