参考:Quora
ウイルス学を専攻
まず、COVID-19は新型コロナウイルスによって起きる肺炎の呼称で、ウイルスはSARS-CoV-2というのが現在の正式名称になっています。現時点では学名、ではありませんが。
一般的にRNAを遺伝子に持つウイルスは変異が激しいという傾向はありますが、コロナウイルスはRNAウイルスの中では比較的安定した(変異が少ない)ウイルスです。
それでもDNAウイルスや他の生物に比べれば非常に変異が激しいですが。
で、PCRですが、標的の遺伝子の特定の部位に相補的に結合するプライマーというものを使います。
例えば、コロナウイルスのある部分の塩基配列が以下のようになっていたと仮定します。
ACATAACGCGGTGACGATGTGACACTGTCGATGC
この配列の1塩基目から5塩基目までに相補結合するDNA鎖の配列は、TGTAT です。
…ここまで分かります?高校生物の範囲なのですが…
で、このTGTATという配列のDNA鎖がプライマーです。
このプライマーとDNA合成酵素を混ぜて適切な温度をかけてやると、標的のコロナウイルスの1塩基目から5塩基目までの部位にプライマーが相補結合して2本鎖になります。(これをアニールと言う)
次いでDNA合成酵素が、プライマーの端からTGCGCC…という具合にDNA鎖を合成していくので、長い2本鎖のDNAができます。
これを再び1本ずつにバラしてやると、またプライマーがアニールしてDNA合成が始まり…という具合に延々と標的のDNAを複製し続けるのがPCRです。
で、変異に関する話ですが、プライマーは実際には20塩基ほどの長さで設計されますが、この部位が変異しなければ、それ以外の部分が変異していてもちゃんとアニールして増幅されます。実際には数塩基変異していてもアニールしますし。
なので、このプライマー部位はあまり変異しない部位に設定するのがセオリーです。変異はせず、かつ新型コロナウイルスにしかない配列部位をプライマー領域として設計するわけです。
生物の遺伝子は、どこでも一様に変異するわけではありません。
変異しやすい領域と変異しにくい領域があります。
変異しやすい領域というのはGC含量が多い領域とかTATATATA..というような単純反復配列領域とか、いろいろあります。PCRでもこういった領域は増幅ミスが起きやすいです。
単純反復配列の方は、ヒトや哺乳類のゲノムではマーカーに使われたりもしますね。多型性がある、という言い方をしますが、要するに変異しやすいのでバリエーションが多いわけです。
で、逆に変異しにくい領域とはどんなものか?
例えばヒストンという蛋白があります。DNAが折り畳まれて染色体を形成するのに重要な働きをする蛋白ですが、このヒストンをコードする遺伝子は、あらゆる真核生物、つまり人間からカエルやノミやシラミ、植物や顕微鏡でないと見えない原虫に至るまで、1~2塩基の違いしかなく、ほぼ同じです。
つまりこのヒストンは、遺伝子が少しでも変わるとヒストンとしての機能を果たせず、それは致命的なわけです。
というわけでヒストン遺伝子は、40億年くらいほとんど変異していない、というわけです。
ウイルスも同じで、ここが変異しちゃったらもうこのウイルスはウイルスとして成立しない、という部位があるわけです。
どこがそういう部位であるかはよく分からないのですが、多くの株の塩基配列を調べれば、変異が多い領域と少ない領域は分かるので、その部位にプライマーを設計する、というわけです。
また、感染研のマニュアルでは、そのプライマーは異なる領域に2カ所設定されています。
検査の手間は倍になるので、1日あたりに処理可能な検体数は半分になってしまうのですが、これで1カ所変異して検出できなくなってしまっても、もう1カ所で検出可能なようになっています。
これを各検査機関でマジメにやっているかどうかまでは知りませんが(^-^*)
- 新型コロナウィルス の変異はそれほど激しくないと聞きました。ウィルスは、人間の細胞を使った自身のコピーを作らせるわけですが、全然違うものを作るとウィルスとして成立しない可能性があるので一応、コピーをチェックする機能があります。
- PCR検査は遺伝子の一部を増殖させるのでその部分が変わってなければ検出できます。
- 例のごとくメディアは、煽りまくってますが、変異によって感染力が増して弱毒化するのが基本的なセオリーです。今のインフルエンザ等は、感染者が、1000万人と言われるほど感染力が強く、死亡率はコロナの10分の1以下ですので実際にそうなってます。
- 一部メーカーのワクチンはその辺考えられていて、遺伝子の人間の細胞に侵入する部分の遺伝子を免疫が攻撃するようになっています。その部分が変異すると免疫がウィルスを攻撃しなくなりますが、同時に細胞への侵入もできなくなる可能性が高いです。
お役立ち情報 PCR法の原理について|ファルコバイオシステムズ ライフサイエンス部
企画、プロダクトデザイン (1987年〜現在)
人間の遺伝子はDNAという2本のヒモをねじったような形をしており、かなり変異しにくいのですが、新型コロナやインフルエンザウイルスの遺伝子はRNAという1本のヒモのため、複製の際にエラーが起きやすいので、比較的変異しやすいと言われています。
ウイルスは他の生物の細胞に遺伝子を送りこみ、その細胞の機能を借りて自分の遺伝子を複製しますが、この際にエラーが起きることがあります。
このため、新型コロナでも多くの変異種が報告されていますが、病原性が大きく変わるような変異を起こす可能性は少ないと言われています。しかし、新型コロナは、元来人間を宿主とするウイルスではないため、変異の内容によっては感染力や毒性が高くなるのではないかと懸念されています。
さて、遺伝子には、共通の部分と特徴的な部分があります。人間の遺伝子も進化の過程で経てきたいろんな生き物の遺伝情報が残っており、ほかの生物と同じ配列部分も多くあり、使われていない部分もまた多いそうです。
新型コロナの遺伝情報にも特徴的な部分がありますので、これを、再現したものをプライマーと呼びます。プライマーが遺伝子にくっつくと、残りの部分が遺伝子に沿って作られます。
これを切り離して、またプライマーをくっつけて再現する、を繰り返します。これを数十回繰り返すと遺伝子1個が数百万に増幅されます。これがPCRの原理です。
原理的には、元の遺伝子が正しく増幅されれば精度は100%なのですが、まれに関係ない遺伝子を増幅してしまったり、元の検体の遺伝子が少なく、増幅回数が少ないと検出されないこともあります。
遺伝子が含まれているかどうかの判定も試薬による反応を人間が判断するため、相対評価になる場合もあります。また、器具などに付着した遺伝子で検体が汚染されて遺伝子が混じってしまうこともあり得ます。
このように、PCR機器と使用する試薬、検体の適切な採取と運搬や管理、操作する技師の技量などにより、PCR検査の個別の精度は大きく変わります。
さらに、精度を特定するためには対象の病気の罹患率が必要です。新型コロナでは現実の罹患率は不明のため、PCR検査の精度は推定値となりますが、陽性と陰性を含めた的中率は30〜70%ではないかとも言われています。
正しく運用されれば、陽性判定の信頼性は90〜95%ですが、陰性の見逃しと陰性で安心した人からの再感染が懸念されるため、国内では無差別の大規模検査は意味がないとされてきたのでしょう。
現在のように感染爆発前くらいの状況では、全体的な傾向の把握と早期の陽性確認という意味からは、大規模検査にも一定の効果があるかもしれません。しかし、陰性が非感染の証明のように扱われるならば、さらなる感染拡大のリスクもあるでしょう。