参考:Quora
アルミホイールはスチールホイール(テッチン)と比較して本当に燃費が良くなるのですか?
小林 雅史, 元シンクタンク研究員(2007~2011年)
回答日時:2020年7月17日
アルミホイールには大きく分けて2種類あります。
・鋳造アルミホイール ・鍛造アルミホイール
鉄ホイール(テッチン)にも2種類あります。
・普通のテッチン ・軽量(高張力鋼板)テッチン
これらを思い順に並べると以下のようになります。
鋳造アルミ≧普通のテッチン>軽量テッチン>鍛造アルミ
普通のテッチンは、鉄板をプレス加工で成形・溶接して作りますので、加工硬化によってそこそこ丈夫で軽量にできるのです。コレに対して、鋳造アルミは、鋳型に流し込んだ後、切削加工だけですので、材料となったアルミ合金の強度に依存します。高くて軽いマグネシウムを添加すれば、鋳造でも結構な強度が得られますが、ほとんどの市販アルミホイールは、アルミにシリコンを加えた「シルミン」という美味しそうな名前の鋳造アルミに少しだけマグネシウムなどを添加した材料が性能とコストのバランスが良いので良く使われます。安物では、マグネシウムを減らし、銅を加えたもの(含銅シルミン)も使われますが、耐食性が良くありません。塗装で耐食性不足をカバーします。こうした材料を使うのは鋳造アルミホイールの商品意義は、軽さにあるのではなく、「見た目・ファッション」にあるからです。見た目優先のアルミに軽量化というコストアップ要因を持ち込む必要はありませんので、テッチンより重くなったとしても、文句を言う人は居ないのですね。
じゃあ、見た目・ファッション要素は不要だけど、軽いホイールが欲しいという、例えばプロドライバーさんたちの業界では何を使えばいいのかと言うことになります。トラックなんかはホイール自体もでかくて車輪の数も多いので、少し軽いだけでも結構違う可能性があります。また、整備サイドから見ても、1本当たり5kgとか10kg違うと作業負担が軽くなって助かるわけです。そうした現場向けに、高張力鋼板を使った軽量テッチンが開発されています。ただ、やはり少し高くなることと、認知が十分ではないことから、普及度は低いようですね。
最後に、鍛造アルミホイールです。こいつは軽いです。めちゃくちゃ軽いです。材料もシルミンではなくジュラルミンを使います。鍛造した後に熱処理して時効硬化させて丈夫にしますから、同じアルミでも雲泥の強度向上となります。タイヤ交換してみたらその有り難味がよーくわかります。ホイールだけで見ると、鋳造アルミの6割くらいの重量のものが多くあります。17インチ7.5Jくらいだと、1本当たり4kgくらい違う(重いもの:10kg軽いもの:6kg)わけです。17インチホイール重量ランキング|ホイール重量まとめ|実測軽量ホイールズ
軽量で有名なレイズの鍛造アルミはこんなにスポークが細くても頑丈です。
さて、燃費ですが、テッチンを鋳造アルミに替えても重さが同じくらいですから、変化しないでしょう。鍛造アルミに替えると、乗用車で1台当たり15kg程度軽量になることがありますので、加減速の多い街中を走る場合には少しだけ良くなる可能性はあります。その差はわずかでしょうけれどね。なお、バネ下重量がそれなりに軽くなりますから、路面追従性が良くなったという感触はあるかもしれません。でも、コスト的には、鍛造アルミは鋳造アルミの3~5倍もしますので、ほとんど自己満足の世界であるということを付け加えて終わりにしたいと思います。
あ、一応、鋳造アルミの絵も貼っておきますね。コレじゃあ、軽くならないですよねぇ。